◇養生の実際・夏バテ対策編2 ~なぜ夏にバテるのか?胃腸の温存と水分摂取~

2020年06月26日

漢方坂本コラム

◇養生の実際・夏バテ対策編2
~なぜ夏にバテるのか?胃腸の温存と水分摂取~

<目次>

・どうして夏にバテるのか?
・充分な水分補給で逆に壊れる胃腸

どうして夏にバテるのか?

そもそも「夏バテ」って何で起こるのでしょうか?
夏に体力を失い、体がバテてだるくなり、
満足にご飯が食べられなくなるのは何故でしょうか?

結論から申し上げると、
「夏バテ」は体が疲れる前に、ある臓器が疲労することで発生します。

それ何となくわかるよ、という方も多いのではないでしょうか。
そうです。「夏バテ」は「胃腸の疲労」によって起こります。

夏バテが起こった時、それを最も迅速に回復させる方法は「点滴」です。

血管内に直接水分と栄養とを入れ込む。
一時的ではありますが、どうしようもない脱力感はこれで回復します。

逆に言えば、血液中の水分や栄養が失われている状態が「夏バテ」ということです。

夏に汗をかいたり、暑い中体を使ったりする。
それによって血液中の栄養が失われて、栄養不足の状態に陥る現象が「夏バテ」の本態だということです。

では、血液中の栄養は日々どうやって補給されているのでしょうか?

食事です。
食べた物が「血」になる、ということに尽きるのです。

つまり食べたものを消化吸収する力こそが、
夏バテを予防するための本質的な力になるのです。

したがって、もともと胃腸の弱い方は夏バテが起こりやすくなりますし、
反対にたとえ胃腸の強い方であっても、食事の不摂生を続ければ夏バテを起こします。

自分の胃腸を如何に疲労させないようにするか
それこそが夏バテ予防の最重要ポイントになります。

胃腸を疲労させないようにする。
胃腸が極端に疲れる状態にならなければ、猛暑であっても慢性疲労は起こりません。

少なくとも一時的な疲労で済むはずです。
食事から栄養を補給して、自力で回復へと向かうことが可能です。

つまり夏バテの養生は、すべて「如何に胃腸を疲労させないか」ということに帰結します。

ここからはその具体的な養生を説明していきましょう。
皆さんが陥りやすいものから、順に挙げていきます。

充分な水分補給で逆に壊れる胃腸

水分補給をしっかりと行いましょうというスローガン。
夏になると必ず聞きますよね。これ、間違いではありませんが、危険をはらんでいます。

水分は胃腸の消化吸収機能によって体に入っていきます。
したがって、胃腸機能が充実しているという前提がないと、入っていかないし、体を巡ってくれません。

もし胃腸の弱い方が水を沢山飲むとどうなるのか。

まず胃に水が溜まって滞ります。
胃という袋に重たい水を入れ込んでいるような状態です。

そうなると胃が非常に疲れやすくなります。
食欲がどんどんなくなっていくのです。

そして水を吸収することが出来なくなります。
ただ胃腸に滞留するだけになり、胃もたれや下痢を起こします。

すなわち夏場に先ず気を付けて頂きたい養生は、

〇水分の過剰摂取は控える

ということです。

水は、ちびちび飲んでください。
ガブガブ飲んではダメです。必ず少しずつ飲むようにしてください。

口が渇いたと思った時はすでにかなり水分が失われている、
なんてことが言われていますが、だとしても、ちびちび飲んでください。

水分(果物やジュース・ビールなど)ばっかり取り、お腹いっぱいになって食事を取らない。
夏場に起こりやすいこの状況こそ、夏バテを誘発させます。

タンパク質や炭水化物を中心にちゃんと食べること。
特にたんぱく質が重要です(過剰な脂質は胃に負担をかけます)。

水分でお腹いっぱいにすることはダメです。
いくら水分摂取が重要だといっても、絶対に避けてください。

人間には元来、
水分をどの程度取り入れるかを把握するためのセンサーがあります。

「ノドのかわき」です。
ノドがかわくというセンサーを信用して水を飲んでください。

汗をかいた後に飲みたくなる水の量と、
ずっと話し続けた後に口を潤したくなる水の量とは異なります。

人間には適量を欲するという優秀なセンサーがすでに備わっています。
そのセンサーに見合った量を飲むように心がけてください。

そのセンサーを無視し、ある程度意識的に水を飲むべき時も確かにあります。
炎天下の中で作業をするような、明らかにこれから大量の汗をかきますよという状況の前。
またご高齢の方など、ノドのかわきというセンサーがそもそも弱くなっている方。

そのような場合には、意識的に水を飲むことが必要です。

しかしクーラーの効いた室内で氷水をガブガブ飲む、というのは明らかに間違いです。

水の豊富な国・日本。

水に囲まれ、水の中で生きる我々だからこそ、
水との上手な付き合い方を模索するべきです。

水をたくさん飲んだ方が良いと聞いた、
だから毎日たくさん水を飲むようにしている。

そうやって体を水浸しにして体調を壊してしまう患者さまの、何と多いことか。

そう思うのは私だけではないはず。
患者さまの病と向き合う先生方ならば、みなさんそう感じられているはずです。

水を飲むことがダメなのではなく、
あくまで個人個人に合った水の飲み方を考えるべきなのです。



◇養生の実際・夏バテ対策編1 ~はじめに~
◇養生の実際・夏バテ対策編3 ~夏バテは胃腸に始まり胃腸に帰結する~
◇養生の実際・夏バテ対策編4 ~寝ることの意味・睡眠と夏バテ~

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