□潰瘍性大腸炎 ~青黛の運用と落とし穴~

2022年04月28日

漢方坂本コラム

潰瘍性大腸炎治療にいおて有名な青黛せいたい

もともと衣類の染料(藍)として使われていた生薬です。

近年、潰瘍性大腸炎に特効があるとして、比較的頻繁に使われていた傾向があります。

ただし私の経験上、この青黛を一律的に使う・・・・・・ということについては、絶対に反対です

確かに即効性をもって効いている患者さまもいらっしゃいます。しかし同じくらい、この青黛によって体調を崩されている方もいらっしゃいます。

使うのであれば、東洋医学的な見立ての上で、十分に配慮された形で使うべきす。

また、そもそも青黛を使ってはいけない状況をちゃんと理解するべきで、それが漢方治療においては当たり前のことであり、かつ治療上の常識だと言っても過言ではありません。

漢方治療はその方にあった治療方針を立てることが大前提です。

青黛は治療方針の一つにしか過ぎません。すべての潰瘍性大腸炎が青黛で解決できるわけでは決してありません。

漢方治療にはそういう事実があります。如何なる病であっても、一つの薬で解決できるわけではないという、基本中の基本があるのです。

一例を紹介しましょう。

当薬局にて潰瘍性大腸炎のご相談に来られたある患者さまの場合です。

その見立て状、明らかに青黛を使って強引に炎症を抑えて良い状態ではありませんでした。

身体にはもともと炎症を抑え込もうとする力があり、患者さまからはその力が弱く、十分に発動できていない状態を想起することができました。

具体的には消化管平滑筋の活動状態が非常に弱々しく、そのために胃腸が冷えやすく、かつ食欲が非常に細い方でした。

東洋医学でいう所の明らかな「虚」の状態に属し、漢方ではこれを「陰証いんしょう」と呼んだりもします。

そこで私は胃腸を温め、消化管の血流を促し、平滑筋の活動を是正する薬を出しました。

そして一か月経つころには下痢・下血がなくなり、疲労感や冷えが取れ、さらに食欲が徐々に沸いてくるようになりました。

ただし潰瘍性大腸炎という病には、寛解と再燃とを繰り返すという特徴があります。

数ヵ月経ち、急激に気候が冷え込む季節になった時、治まっていた下痢がまた少しずつ始まってきました。

理由は胃腸の冷えによるものです。もともと細く筋肉量の少ない方でしたので、急激な冷え込みによって、一時的に体の芯が冷えてしまったのでしょう。

通常であれば漢方薬を調節すれば事なきを得ます。しかし、良くなってきたところでの症状悪化に、患者さまにも焦りの気持ちが芽生え始めました。

患者さまはご自身で調べて、潰瘍性大腸炎治療の特効薬として青黛が有名であることを見つけ出します。

そして自分もぜひこの薬を飲んでみたいと、青黛を取り寄せて、ご自身の判断で服用を始めました。

自己判断での治療は避けるべきす。しかし、この時の患者さまの心情は仕方ないことでもあります。

何とか治したいというお気持ちがあったればこそのこと。あわよくば改善するのではないかと、一縷の望みをかけるお気持ちは当然だとも言えます。

ただ患者さまの場合は、この決断が裏目に出てしまいました。

服用を始めてすぐに胃痛が始まり、同時に下痢が増えて食欲がなくなり、血便が出るようになってしまいました。

私はすぐに青黛を止めてもらうよう説明しました。そして、お出ししている漢方薬に相応の改良を加えました。

明らかに陰証が強まっていたため、回復まで時間がかかりそうだと危惧していました。しかし幸いにも比較的早くもとの状態へと戻り、その後続けること数ヵ月、波も落ち着き、今でも再燃せず服用を続けられています。

当薬局にて潰瘍性大腸炎治療をお求めになる方のほとんどが、すでに西洋医学的治療を行われている方や、他の医療機関で漢方治療を受けられていた方たちです。

その中で、青黛を服用したら良くなったという方もいらっしゃることから、すべてのケースにおいて青黛がダメだというわけではないのでしょう。

しかし、あくまで青黛は潰瘍性大腸炎治療の手法の一つであり、決して一律的に服用して良いものではありません。

青黛に何かを混ぜ、薄めた形で使うというやり方もされているようですが、それでも安全が保障されるわけではありません。青黛は、合わない方であれば少量であっても体に合いません。

要は、病態の弁別が出来るかどうかが重要なのです。

ついに、この青黛が重篤な副作用を起こすことが明らかになってしまいました。

息切れや動悸、全身のむくみなどを生じる肺動脈性高血圧症。強力な消化器症状を起こす腸重積や虚血性大腸炎。

当然のこの結果が、私は残念で仕方がありません。本当は青黛に罪はないのです。青黛自体は良い薬であるのにも関わらず、漢方治療の基本を無視して使ってことによる弊害なのです。

実は、こういう事例は今まで何度もありました。処方運用の誤解、間違えた漢方治療によって、同じ歴史を何度も繰り返してきました。

小柴胡湯とC型肝炎、麻黄湯とインフルエンザ、枚挙にいとまがありません。

これらはすべて、漢方治療の特徴を無視した一律的な使い方が、副作用を招いてきた事例です。

処方に罪はないのに、結果的に処方に罪を着せた・・・・・・・・・・・・

そうやって悪名高い処方を、使えないというレッテルが貼られた薬を、今までいくつも作り上げてきました。

患者さまのためにも、漢方のためにも、全くなっていません。だから決して繰り返して欲しくないのです。一律的な生薬・処方の使用方法によって副作用が出たと聞くと心から落胆します。またやったのか、また繰り返したのか、と。

どのような生薬であれ、それ自体を使うことに問題はありません。ただし、その使い方を間違えていなければ・・・・・・・・・・・・・・・の話です。

治療が常に一律的で、個人差や病態の差異を確認する漢方治療の基本を無視して使うことは絶対に避けなければいけません。

如何なる病であれ、漢方の立場では「特効薬」は存在しないのです。

そのことを是非理解して欲しいと思います。これは東洋医学を生業とする者ならば当然のことであり、かつ東洋医学の基本中の基本なのです。



■病名別解説:「潰瘍性大腸炎

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