◇養生の実際・夏 ~夏の健康維持・知っておくべき養生2選~

2024年07月10日

漢方坂本コラム

◇養生の実際・夏
~夏の体調不良・知っておくべき養生2選~

<目次>

1.水分のとり方

・水を飲み過ぎない
・水でお腹いっぱいにしない
・冷たい水はなるべく避ける

2.睡眠のとり方

・寝ている間に体を冷やさない
・睡眠時間の確保
・寝る前の飲食を避ける

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いよいよ暑くなってきました。

夏至を過ぎた頃から、体感的にも夏に入りました。

そしてこの時期から、私はいつも気合が入ります。

この季節特有の体調不良が急増する。

それを予防するべく、皆さんへのアナウンスに気合が入ります。

今年は梅雨前から、たくさんの方が体調を崩しました。

重い空気をまとった低気圧が断続的に来る、

急激な気圧と湿度の波に、胃腸や自律神経を乱す方がたくさんいらっしゃいました。

そして、不安定な天候は今でも続いています。

事実、ここ数日の間にも多くの方が体調を崩しています。

そしてこのまま本格的な夏がやってきます。おそらく今年の夏は、多くの人にとって辛いものになるでしょう。

しかし、そのいくつかは予防することが可能です。

そこで梅雨から夏にかけて、生活の中で気をつけていただきたいことを、

今回ダイジェストでお届けいたします。

梅雨から夏の間、とにかく気を付けて頂きたいことは、胃腸を疲れさせないことです。

そのために重要なのが二つ。

水のとり方と、睡眠のとり方

ざっと確認していきましょう!

1.水分のとり方

 

■水を飲み過ぎない

水をたくさん飲みなさい。

夏になると至る所で必ずアナウンスされます。

充分な水分補給。間違えではないのですが、

このアナウンスは、少々危険をはらんでいます。

水をたくさん飲み過ぎることで、逆に体調を悪くさせてしまう人がいます。

そういう人はかなり多いと、私は考えています。

ポイントは胃腸の強さです。

胃腸が強く元気な人であれば、飲んだ水はちゃんと吸収されます。

しかし胃腸が弱いか、疲れている人は、飲んだ水が吸収できずに腹に溜まってしまい、逆に胃腸を壊して夏バテを起こしてしまいます。

水はたくさん飲む、ではなく、適切に飲むことが大切です。

基本的にはご自身の「咽の渇き」を信じてください

人間には咽が渇くという優秀なセンサーがあります。

水が必要な時は咽の渇きで教えてくれます。その際、渇きが潤せる程度の水を補給することが大切です。

例えば口の中が乾燥するくらいであれば、おちょこ一杯の水か、またはうがいで足ります。

しかし大量に汗をかいた後は、強く咽が渇きますので十分に水をとってください。

その咽の渇きの強さに応じて、適切な量を飲むこと。

また飲む時はなるべくちびちびと。キンキンに冷えた水も避けた方が良いでしょう。

人間の咽の渇きというセンサー、まずはこれを信じて飲む。

特に咽が乾いていなければ飲む必要はありません。それが基本だと、考えてください。

ただしこれから汗を大量にかくことが分かっている状況、例えばスポーツをするとか、炎天下で草むしりをするとか、そういう状況であれば、ある程度咽の渇きを無視して前もって飲んでおくことも必要です。

またすでに咽の渇きというセンサーがあまりうまく働かなくなっているご老人は、周りの方がちゃんと気を付けて、水分を補給してあげることが大切です。

そういう特殊な状況でなければ、水をあえてたくさん飲もうとしなくて結構です。

むしろ涼しい部屋で汗もかいていないのに、水ばかりたくさん飲んでいると体調は悪化していきます。

■水でお腹いっぱいにしない

水をたくさん飲みすぎると、夏バテの原因に繋がっていきます。

夏バテの多くは、食欲がなくなり、満足に食べられなくなることから始まります。

例えば、水分や果物、さっぱりしたものは食べられるけれども、お肉や油ものはもう匂いさえ受け付けない、という状態です。

これが夏バテの典型例ですので、とにかく胃腸を守ることが夏バテ予防の核心です。

しかしこの時期に咽が乾くことで水ばかり飲んでいると、胃腸の弱い方では水だけでお腹いっぱいになってしまいます

果物の食べ過ぎでもそうです。日中に水分でお腹いっぱいになってしまい、夕方になっても食欲が湧かなくなります。

これが続くと胃腸は確実に疲れてきます。胃腸は筋肉ですので、毎日ちゃんと食事を摂り、動かしてあげないとすぐに弱ってしまいます。

水分は摂っても、とにかく食事をとる余力は残しておくこと。お腹いっぱいまで水を飲まない。食事の余力を残した水分補給を、必ず意識してください。

■冷たい水はなるべく避ける

そしてもう一つ気を付けて頂きたいのが、飲む水の温度です。

暑い夏はとにかく体を冷ました方が良い。だから冷たい水を飲む、というのはちょっと短絡的に過ぎます。

夏になると体は熱をこもらせないように変化していきます。具体的には発汗を行うことで体温を下げる働きが自然と旺盛になります。

そのため冬とは違い、体の熱が外に放散されやすくなります。つまり冬よりも体内は冷えやすくなる、特に内臓の熱はどんどん放散されていきます。

つまり暑い日に体表面が熱くなり汗をかくと、体の外側は熱いけれども、中は冷えているという状況が起こります。

特に胃腸がもともと弱い方では、これが起こりやすくなります。

この内臓が冷えている状態で、冷たい水を飲むことは胃腸へ直接のダメージになります

暑い中で湯を飲めとは言いませんが、少なくとも冷房の入った部屋では冷たい水を避けた方が良いと思います。

果物も冷たい状態で食べることは避けてください。

お腹の中の温度は約40度です。湯船の温度と同じです。常温の果物も、当然お腹にとっては冷たい物です。

夏だからこそ、湯を飲むという習慣。私はこれが大切だと思っています。

暑い夏、体はあくまで外から冷やす、中は冷やさず温める、というのが夏の養生の基本です。

2.睡眠のとり方

夏の養生のキモは、胃腸をいかに健やかに保つかにあります。

まず、水の飲み方が重要です。そして同じくらい、睡眠をとることも重要です。

なぜならば胃腸は、寝ている間にしか疲労を回復することが出来ないからです。

したがって寝不足や睡眠の質の低下は、それだけで胃腸の疲労を蓄積させていきます。

特に、以下の3つについては意識して気を付けてください。

 

■寝ている間に体を冷やさない

 

熱を産生する最大の器官は筋肉です。

人は日中、手足などの筋肉を動かすことで熱を作り続けています。

そのため日中に外から冷えた風を浴びても、体内までは冷えにくいものです。

しかし寝ている間は違います。筋肉活動が少ないため、寝ている間に体を冷やすとすぐに体の中まで冷えてしまいます

夏場、クーラーをかけっぱなしで寝たり、窓を開けっぱなしで寝る人は多いと思いますが、

これが原因で夏場に体調不良を起こす方がたくさんいらっしゃいます。

朝起きた時の浮腫み倦怠感腹痛下痢食欲不振などは、

夜間に体を冷やしてしまうことで起こる症状の典型例です。

寝ている間に室温がどんどん下がっていく、というのが危険です。室温はなるべく一定を心がける。

もし難しければ、下がっていくよりはむしろ、徐々に上がっていく方がまだましです。

寝ている間に「寒っ」と思って布団をかけ直すという経験をしたことのある人は多いと思いますが、

体はあの時点で内臓まで冷え切っています。

人は寝ている間に体を冷やされても簡単には気が付きません。内臓まで冷えて、初めて目を覚まします。

それくらい寝ている間は冷えに対して無防備なのです。いくらその後に布団をかけ直しても、寒いと思って起きた時点でその日の体調は悪くなります。

年々夏の暑さが強まる中、寝苦しい夜が当たり前になってきました。

本格的な夏が始まる前の今時期から、寝室の温度管理をぜひ検討・工夫してみてください。

 

■睡眠時間の確保

 

ビアガーデンや花火大会、夏休みやお盆休み。

夏の夜はたのしい行事が目白押しです。

夏を目いっぱい楽しんでください。ただしそのためには、健康でいることが前提です。

そしてそのためには睡眠時間を十分にとること。楽しい行事で寝不足が続いてしまうと、いっきに夏バテへと向かっていきます。

胃腸は夜間、寝ている間しかその疲労を回復することができません

胃腸を健やかに保つためには、夜12時から2時の間に熟睡していなければなりません

したがって仕方ない時は除いて、早めの睡眠をぜひ心がけてください。

睡眠不足は確実に胃腸の弱りを招きます。そして当然胃腸だけではなく、全身が疲労し、さらには自律神経を如実に悪化させます。

 

■寝る前の飲食を避ける

 

そして同じ理由で、寝る前の飲食は避けてください。

食べてすぐ寝ると、胃腸は寝ている間に動き続けてしまうので休むことができません

寝る前3.4時間は固形物を食べない方が良いでしょう。

液体であっても当然飲み過ぎは禁物です。水分をがぶ飲みしたり、お酒をたくさん飲むことも避けましょう。

夏に体調を崩す方の多くは胃腸から崩れます。

最近食欲が落ちてきた。水っぽいものの方が食べやすくなってきた

んな兆候があれば、その時は「やばい」と思ってください

上記の養生を思い出していただき、夏でもちゃんと元気な胃腸を維持していきましょう。

逆に胃腸さえ元気な状態を保つことが出来れば、夏の体調不良を予防できます。

今年の夏はかなりキツくなると思います。転ばぬ先の杖。できる限り、規則正しい生活を心がけましょう。



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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

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