◇養生の実際・夏バテ対策編3 ~夏バテは胃腸に始まり胃腸に帰結する~

◇養生の実際・夏バテ対策編3
~夏バテは胃腸に始まり胃腸に帰結する~

<目次>

・胃腸を疲労させない食生活
・胃腸の弱点「冷たいもの」
・夏バテ予防は梅雨時が勝負

胃腸を疲労させない食生活

胃腸は平滑筋と呼ばれる「筋肉」で構成されている管(くだ)です。
筋肉が力強く動くことで食事をこねまわし、消化吸収を行うのです。

胃腸が疲労するとは、この筋肉が疲労することを指しています。
したがって、胃壁が荒れているとか、炎症があるとか、そういうことを言っているわけではありません。

つまり、胃カメラなどの検査では、胃腸の疲労を捉えることが出来ません。
胃は特に問題ないよという方でも、誰しもが疲労するものなのです。

例えばゴムボールを持ってグーパーグーパーし続けていれば手が疲れますよね。
15分やり続けていれば、相当疲れます。食事を摂るということ自体は、まさにこれと同じなのです。

だから少なからず、食事を摂ることで胃腸は疲労します。
つまり胃腸を疲れさせないようにするためには、「食事の摂り方」が重要になるのです。

食べる物にいくら気を使っていてもダメです。
前提として「食事の摂り方」に気を付けなければ全く意味がありません。

胃腸に負担の大きい食事の摂り方をしていれば、
せっかく良い物を食べても充分に吸収されません。

いくら食べても、思うように体の中に入っていかないのです。

心がけて頂きたいのは以下のような食生活です。
すべて食事を摂りつつも、胃腸を疲労させないという所に主眼があります。

〇腹八分目・お腹いっぱいまで食べない
〇ゆっくり良く噛んで食べる
〇夜遅くに食べない・夜食べてすぐ寝ない

これらは夏バテ予防に関わらず、
胃腸を回復させる際に必ず行わなければならない食養生でもあります。

食事は摂らなければダメですし、
ちゃんと摂らなければ夏場に消耗する栄養素を補うことが出来ません。

だからこそ摂り方・摂り過ぎにも注意しなければなりません。
胃腸を疲れさせない食事の摂り方こそが、栄養素を充分に補うことを可能にするのです。

胃腸の弱点「冷たいもの」

胃腸は筋肉で構成されています。
そしてその筋肉活動は、筋中を通る豊富な血流によって維持されています。

先ほど胃腸の疲労とは筋肉の疲労を指していると述べましたが、
その実態は「筋肉の血行障害」を指しています。

つまり消化管の血行が滞ると、胃腸は必ずその活動を弱めます。
血液が充分に胃腸に届かず、ガチガチの固い動きになってしまいます。

先ほどのゴムボールの話、
手首を強く握り、血行を滞らせながらやってみてください。

動かしていると、急激に疲れてくるはず。
胃の活動も、これと同じで血行によって維持されているのです。

実は胃の血行を手っ取り早く弱める方法があります。
「冷たいもの」を大量に摂ることです。

冷えた水や果物などの冷たい固形物。
それらが胃に直接落とし込まれるのは、冷たい水の中に手をつっ込むのと同じです。

手はかじかんで動きが悪くなります。
その中で手を動かし続けるのは、手首を掴んで動かした時の比ではありません。

同じことが胃腸にも起こるのです。

すなわち胃腸の活動を維持し、
疲労させないようにするためには、

〇冷たいものは食べない・飲まない

これが非常に重要です。

暑い場所にいれば熱中症に気を付けなければなりません。
そういう時は、冷たい水をチビチビと飲むことも大切です。

しかし、クーラーの効いた涼しい部屋では、冷たいものはなるべく控えてください。
常に胃に冷刺激を与え続けると、胃腸の活動はどんどん弱くなっていきます。

さらに胃腸が冷えると、体は熱を持ちます。

どういう意味が分からないと思いますので、簡単に説明してみましょう。

胃腸が冷えた状態になり、その筋肉活動が弱まると、
体の中心である胃腸に血流を引き込めなくなります。

そうなると、体の外側に血流が停滞するようになります。

夏は外気が熱いので、外側の血流が停滞すると、そこに熱が蓄積していきます。
中は冷たいのに、外は熱い。実はこういう状態が夏バテを加速させていきます。

外が熱いので、汗がどんどん出るようになります。
外側が熱くなりやすいため、汗をかいても熱が冷めません。

そのため汗が出やすく止まりにくくなります。
胃腸が冷えると、汗をかきやすくなってしまうのです。

汗の目的は体温調節です。
したがって目的を果たすまでは、体に必要な水でさえ出し続けます。

栄養がどんどん失われていくわけです。
こうやって夏バテがどんどん加速していきます。

胃腸が疲れると食事から栄養を吸収しにくくなります。
そして胃腸が冷えると、汗が止まりにくくなります。

これが夏バテの作り方です。
夏にバテやすい方は、どこかで胃腸を冷やしている方が多いのです。

夏になれば冷たい飲食物がどうしても増えていきます。
だからこそ、お勧めしたいのが「熱い湯を飲む」ことです。

朝起きた時、外から家に帰ってきた時、
そういう節目節目で、熱い湯を飲む習慣を作ってみてください。

大量に飲む必要はありません。
湯呑み茶碗半分程度。熱い・暖かい刺激をお腹で感じればそれで充分です。

お腹が温まると、不思議と止まりにくかった汗が引きやすくなります。
台湾や中国では、夏場でもこういうお茶の習慣があるそうです。

夏バテ予防は梅雨時が勝負

最後に、重要なポイントをお伝えします。
夏バテ予防は、夏に初めても遅いのです。

〇梅雨の時から食養生を行う

これを是非実践してみてください。

梅雨時の湿気は、容易に胃腸を壊します。

何となく下痢っぽくなる、水分を取るとお腹がぽちゃぽちゃする。
梅雨になるとこのような症状が出てくる方が多くいらっしゃいます。

これは外の湿気が体を覆うことで、身体の水分循環が滞ってしまうからです。
飲んだ水が胃腸に溜まりやすくなる。そして入っても体を巡りにくくなってしまうのです。

実は、夏バテを起こす方の大半は、梅雨の過ごし方に問題があります。

水分代謝の滞った胃腸に多量の水分を入れ込む。
すると容易に胃腸が疲労し、その状態を持ったまま、夏に突入する。

これが夏バテを起こす方の典型的なパターンです。
つまり夏バテは、すでに梅雨時期からその病態を形成し始めています。

夏バテが起こらないようにするために、夏前から出来ることがあるというよりも、

夏前からやらなければダメなのです。夏になったら気を付けようでは、かなり遅いのです。

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夏バテを起こさないようにするために。

まずは夏バテ予防の中枢である「食生活の養生」を解説してみました。

胃腸さえしっかりしていれば夏バテは起こりません。

そういっても過言ではないほど、胃腸の弱りと夏バテとには密接な関係があります。

前回と今回とのコラムにて紹介した養生を最後に列挙してみましょう。

〇水分の過剰摂取は控える
〇腹八分目・お腹いっぱいまで食べない
〇ゆっくり良く噛んで食べる
〇夜遅くに食べない・夜食べてすぐ寝ない
〇冷たいものは食べない
〇梅雨の時から食養生を充分に気をつける

これが基本中の基本です。
そしてこの基本を守るだけでも、夏バテをかなり予防できると思います。



◇養生の実際・夏バテ対策編1 ~はじめに~
◇養生の実際・夏バテ対策編2 ~なぜ夏にバテるのか?胃腸の温存と水分摂取~
◇養生の実際・夏バテ対策編4 ~寝ることの意味・睡眠と夏バテ~