◇養生の実際・秋から冬 ~自律神経の乱れ・不安・焦り・イライラ~

2020年11月16日

漢方坂本コラム

◇養生の実際・秋から冬
~自律神経の乱れ・不安・焦り・イライラ~

<目次>

・季節の変わり目と体調不良
・寒暖差と自律神経の乱れ
・秋から冬、自律神経に負担をかけないための養生

季節の変わり目と体調不良

秋から冬。

夏の湿気が払われ、心地よいと感じることの多い反面、

夜間に気温がグッとさがるこの時期に、起こりやすい体調不良があります。

最近、当薬局でも現在治療中の患者さまから、

具合が悪いとのお問い合わせが多くなってきました。

来たなこの時期、という感じです。

特に自律神経が乱れやすいという方は、今回の内容を是非知っておいてください。

乱れるべくして乱れる。今の時期にはそんな危険があちらこちらに潜んでいます。

寒暖差と自律神経

今時期に、下記のような症状にお困りの方はいらっしゃいませんか?

●不安感が強い
●ソワソワして落ち着かない
●イライラしたり落ち込んだり気持ちが安定しない

これらの症状は、今時期、つまり季節の変わり目に起こりやすくなるのですが、

結論から言うとその原因は「急激な寒暖差」によるものです。

急激な寒暖差。

季節の変わり目に起こる体調不良の多くがこれよるものです。

日中ぐんぐんと気温が上がる今の季節、とはいっても空気は涼しく爽やかです。

なので外で日光に当たっている分には問題ない。しかし例えば車の中。日中車に乗ると、暑いと思うくらいに車内の温度が高まっています。

外気と車内との温度差はゆうに10℃はあるのではないでしょうか。そんな変化を体が受ければ血行が急激に変わり、自律神経がパニックを起こしてしまいます。

車だけではありません。電車やバス、日光によって温められた室内であればどこでもこれが起こります。

秋から冬にかけて、このような温度差を受けて体調を悪くさせてしまう方が非常に多くなるのです。

ではなぜ寒暖差によって自律神経が乱れてしまうのでしょうか。

身体は気圧や気温の変化に伴い、必ず血流が変化します。

寒い時には寒いなりの血流に、暑い時には暑いなりの血流に必ず変化します。

その調節を実際に行っているのが自律神経です。自分の意志とは関係なく、血流を自律して勝手に調節してくれているのです。

そのため、体が急激な寒暖差を受けて血流が急激に変化すると、それに合わせて自律神経も急激に働かなくてはならなくなります。

この時、自律神経が機敏に働くことのできる人なら問題はありません。

しかしこの働きが緩慢だったり、常に緊張・興奮の方へと傾いている方では、この急激な変化に対して自律神経が過剰に働いてしまいます。

機敏かつ落ち着いて働ける方に比べて、自律神経ががむしゃらに、頑張って働こうとしてしまうイメージです。

そして自律神経が、極端な緊張・興奮状態に陥ってしまいます。

がむしゃらに頑張ろうとしてしまう結果、様々な緊張性・興奮性の症状が発生してしまうのです。

特に起こりやすい症状には以下のようなものがあります。

●不安感・焦り・イライラ・落ち込み
●動悸
●めまい
●息苦しい
●過呼吸
●血の気が引く
●冷や汗が出る
●吐き気
●手足が震える
●耳鳴り
●耳が塞がる(耳閉感)
●胃痛
●胸やけ
●鼻炎・鼻水
●腹痛

などなど

すべて急激な寒暖差によって起こり得る症状です。自律神経が極端に興奮・緊張して頑張ろうとしてしまうために起こります。

秋から冬、自律神経に負担をかけないための養生

それでは、これらの症状が起こってしまった場合はどう対応すればよいのでしょうか。

まずは落ち着いて。このままどうにかなってしまうということは絶対にありません。

時間が経てば必ず落ち着きます。立っていた方は座って、作業を行っていた方はそれを止めて、まずはじっと落ち着いてください。

そして空気の換気です。暑い中にいるのではなく、涼しい風を受けながらゆっくりと息を調えましょう。

衣類を一枚脱ぐのも効果的です。ベルトやボタンを緩めて、腹・胸・首の締め付けを開放してください。

その他、呼吸によって自律神経を整えるという方法もあります。ただしこれは、ヨガや整体といったやや専門的な対応方法になりますので是非専門の先生方に聞いてみてください。

そして最も大切なことは、こうならないようにするためにはどうしたら良いのかということ。

ポイントは「急激」な変化を予防することです。

感じる温度変化を緩やかにすれば、これらはずっと起こりにくくなります。

車なら、乗る前に窓を開けて車内の空気を換気する。車内の温度を一旦外気と同じくらいまで下げることで、こらを予防することが可能です。

衣服も重要で、冷え性・寒がりの方でもなるべく上半身は着こまないように。

タイツはOKですが、何重にも重ね着するのはまだ早い。防寒にはすぐに脱ぎ着できる服が良いでしょう。羽織りやストールなどを上手く活用して下さい。

これらは当たり前のことですが、結構見落とされがちな養生です。

爽やかな季節になってきたのに、なんでこんなに体や気持ちが乱れるのだろう。

その理由がわからないために不安になられている方がたくさんいらっしゃいます。

まずは気持ちや体調が崩れても、それらが「急激な寒暖差により起こる」ということを知ること。

そしてそれを知った上で、日々の生活を気をつけてみてください。

食生活の乱れや寝不足などがある方では、これらが特に起こりやすくなります。

不安になっても落ち着いて。そこには必ず理由があり、その対応方法が必ずあるものです。

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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

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