「体質」という便利な言葉

2020年02月07日

漢方坂本コラム

漢方治療は「体質改善」ですよ、と良く言うけれど、

「体質を改善する」って、何とも曖昧な表現です。

とても便利な言葉なので、私自身も使うのですが、

一体なにを改善しているというのでしょうか。

はっきり言ってしまいますと、医学的にちゃんとした定義はありません。

ただ「もともと発生しやすかった不快な症状が起こりにくくなる」という現象をもって体質改善と表現していることがほとんどです。

しかし、この仕事を生業にしていると、

確かに人それぞれ「体質」というものを感じる時があります。

病には「流れ」というものがあるのですが、

えとですね、「流れ」とは年齢とともに流れていく病の傾向というか、

この年齢になるとこういう状態に陥りやすいとか、この病にかかりやすいとか、

そういう人それぞれ持っている変化のベクトルのことを「流れ」と言っているのですが、

患者さまを観ていると、「あ、この方は前に見たあの方に近い流れを持っているぞ」という発見がかなりあって、

それを見極めることが出来るようになると、的確な治療が行いやすくなるという現実があるのです。

この感覚を説明する時に、

「体質を改善していきましょう」と言うとなんとなく近しい感じがします。なので便利です。

本当は「流れ」を変化させています。

時に濁流の勢いを削ぎ、時に枯渇した流れを益し、

ある病理という方向性に向かわんとするその勢いを、ただ調節しているだけなのです。

【この記事の著者】店主:坂本壮一郎のプロフィールはこちら

※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

※当店は漢方相談・漢方薬販売を行う薬局であり、病院・診療所ではございません。コラムにおいて「治療・漢方治療・改善」といった言葉を使用しておりますが、漢方医学を説明するための便宜上の使用であることを補足させていただきます。