数年前から始めたこのコラム、
本日で501回目を迎えました。
私自身も気が付かなかったのですが、
先のコラムで、静かに500回を迎えていました。
ごひゃく。
よく続いているなと、
自分を褒めてあげたい。
今まで日記とかブログとか、全くの無縁の自分が、
こうして文章を書き続けられている。
ちょっとした奇跡だなぁと。
それもこれも、見ていただいている皆さまのおかげでして、
兎にも角にも、感謝しかありません。
いつも見ていただき、本当にありがとうございます。
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記念すべき501回目。
ということで、何を書こうか考えたのですが、
節目というのは、なぜか過去のことを振り返りたくなるもので。
現在との差を見つけたりして、一人であーだこーだと考えたりするもので。
その多くは反省の類ですが、
中には気付きのようなものが、少なからずあって、
今回はそのことについて、書こうかなと。
結論からいうと、私の心配は杞憂に過ぎなかった、というお話です。
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私が漢方の道を志した時、
本当に漢方というものが世の中に必要とされているのか、
私はなかば、半信半疑でした。
医療において、漢方はほんの小さな慰み事にしか過ぎないのでは、と思っていたのです。
日本の医療は完全に西洋医学を中心としていて、
その広がりも功績も、漢方とは比べるまでもなく。
しかも漢方は科学的な根拠が乏しく、
さらに医療者全体にも、それほど認知されてはいません。
そういう状況において、漢方にできることなど、
本当にあるのかと、少々不安を抱えていました。
身近に漢方に接しながら育った私でさえ、
医療においての漢方は、大変にニッチな存在であることは明白でした。
しかし、こうやって臨床を何年か経て、
その考えは杞憂だとわかりました。
漢方に助けを求められる方が、
実際には、とても多いのです。
不思議に思っていたのですが、ある時ふと、自分なりの結論にたどり着きます。
それは、漢方は素晴らしいものだ!西洋医学にも負けないぞ!という、
そんなおおげさなものでは全くなく、
医療の構造が分かったのです。
医療の全体構造が、少しだけ理解できたということです。
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江戸後期から、日本に広がっていった西洋医学。
この合理的かつ、再現性の高い医学は、
燎原の火の如く、急速に広まりました。
そして、今でも素晴らしい功績を残し続けています。
私達の人生を一変させ得る「病」という存在。
今でも多くの不治の病が存在します。
しかし西洋医学がなければ、その数は今よりもずっと多いはず。
一つ一つ、さまざまな努力と知識とによって、不治を可治へと変えていったのです。
そして何よりも素晴らしい功績は、
この医療が可能な限り、全国に広がったということです。
広く、大きく、沢山の人々が普通に医療を受けられる社会。
この実現こそが、本当に素晴らしい功績だと私は感じています。
ただ、そうであってもなお、西洋医学は完璧ではありません。
大きな広がりを持った西洋医学、
沢山の人々を救い、支えてきたこの器でさえ、
ときに、その編みの目から溢れてしまう人たちがいる。
そういう現実があるのだなと、ひしひしと感じるのです。
もし日本で西洋医学しか選択できなければ、
この大きな器から溢れてしまった人たちは、いったいどうすれば良いのでしょう。
そういう方たちを支える器が必要で、
それこそが、医療の広さとは違う、もう一つの側面。
医療の「深さ」だと、私は思うのです。
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医療は広く大きく、そして深く、あらねばなりません。
広さと同時に懐の深さを持つ、
そうやって、さまざまな医学が協力して、より多くの人々を救い得る「構造」を持つべきです。
西洋医学という大きな器、そこから漏れてしまう人たちを支えられるように、
それがたとえ取るに足らない小さな器であったとしても、
そこに支えられる人達がいる以上は、無くてならない医学であることに変わりはない。
そういう思いで、私はこのコラムを書いています。
漢方だけではありません。鍼灸や整体、ヨガやホメオパシーもある。
さまざまな医学がある。それが、とても大切なことなのです。
西洋医学からみたら小さな器かもしれない。それでも、無くてはならない医学です。
だから私は漢方を続けているし、また続けなければいけないのだと。
今後も医療の懐を深くするために、
漢方は生き残っていかなければならないのだと、私は思っています。
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そんなことをぼんやりと考える501回目。
単なるひとり言のようなものですが、本当にそう思っています。
それがモチベーションとなり、このコラムを書いているわけで、
このコラムを通して、病にお悩みの方にとって、漢方が一つの選択肢になればと願っております。
ここ山梨は、漢方専門の医療機関が比較的少ないようです。
そういう意味では、漢方という土壌があまり育っていない地域だと言えると思います。
その中で、私にできることを一歩ずつ、一歩ずつ。
1000回目に向けて、皆さまのためになる情報をこれからも発信していきたく、邁進してまいります。
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