さて、いよいよです。
どんどん増えてきました。
夏バテの患者さまです。
いつもはもう少し後なのですが、
今年は早い。バテ始めている方が、急に増えてきました。
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暑いところに行くとすぐだるくなる。
食欲がない。果物などの水っぽいものは食べられるけれど、肉などは匂いをかぐのは気持ち悪い。
体の芯が熱っぽく、だるい。
頭痛やめまい、不眠や不安感など、もともとの症状が悪化し始めている方もいらっしゃいます。
夏の養生。
ここで、もう一度おさらいしていきましょう。
何度もコラムで取り上げている題材ですが、
今まさに渦中の時。
本格的な夏を前にして、もう一度確認していきましょう。
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夏の病の多くは、胃腸から始まります。
胃腸の疲れ。
夏バテの基本は、内臓(胃腸)を疲れさせないことです。
胃腸は筋肉。したがって筋肉を疲れさせないこと。
ちゃんと食べること。ただし良く噛んで、お腹が苦しくなるような大食を避けること。
また寝る前の食事は避けること。これら食養生の基本の上に、さらに夏は、特に気をつけなけばならないことがあります。
夜の寝かた
胃腸は筋肉。そして筋肉は寝ている間にしか回復することが出来ません。
故に食べてすぐ寝るのは良くない。寝ている間に胃腸が休めないからです。
だからこそ、夕食と睡眠とに十分に時間を空けること。
ただし夏は、もう一つ気を付けることがあります。
寝室が暑くて寝られない。途中で暑くて起きてしまう。
この時期特有の寝にくさがあります。そして寝不足の方がどんどん増えていきます。
そのため胃腸の疲れが取れない。これが、夏バテの原因になります。
夏バテを起こす方の大多数に、この傾向が見て取れます。
夏は夜の寝かたがとても大切です。ポイントは寝苦しくない室温で寝ることなのですが、ここにまた落とし穴があります。
寝ている際中に寝室を冷やし続けること。これが、もっと強い悪影響を体に与える可能性があります。
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人は起きている時であれば、冷気で体の外を冷やしても内臓までは冷えにくいものです。
筋肉を動かしているからです。腕や足などの骨格筋。筋肉は熱産生器官です。即ち体を動かしている日中は、おのずと冷えにくい状態が形成されています。
しかし、寝ている間は違います。骨格筋の活動は基本的に停止します。
そのため寝ている間に部屋が冷えていくと、体は簡単に、芯まで冷えていきます。
朝起きたときに体がだるい、寝て起きると胃が詰まって動かない感じがする、
寝起きに咽が乾いて痛みがある、寝た気がせず疲れが取れない。
夜間に窓を開けっぱなしにしたり、クーラーで冷やし続けたりして、体を冷やし続けると、このような症状が誰でも出てきます。
何らかの体調不良を抱えておられる方であれば猶更です。夏は、この夜間の冷えが原因となり、体調を悪化させる方が増えてきます。
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ポイントは、夜間、寝室の室温が下がり続ける状態にはしないこと。
一定ならば問題ありません。また朝に向かって室温が、寝苦しくない程度に緩やかに上がっていくのであれば問題ありません。
1つの解決策としては、寝る前に室温をクーラーなどで十分に冷やし、朝の室温と同じくらいにしてしまう、という方法があります。
そしてクーラーを切って寝る。窓も占めてドアも占めて断熱する。そして寝る時の室温と朝の室温とが変わらないようにします。
それが難しいのであれば、ちょうど暑くて起きてしまう時間に、弱冷房のクーラーが付くようにタイマーを付けておくという手もあります。
もしくは室温が下がっていかない程度に弱冷房を付け続けるか。どちらにしても、クーラーの風が決して体に当たらないようにしてください。
それぞれの寝室の状況によって、解決策は違うと思います。
ポイントは寝室の室温が朝に向かって下がり続けないようにすること。
難しい場合もあると思います。ただこれを気を付けるだけで、夏場のだるさや胃腸負担はかなり軽減されるはずです。
水分の取り方
夏バテ養生の基本は胃腸。であるならば、夏こそ飲食物に気を付けなければなりません。
夏になるとどうしても冷たいものが増えてきます。冷たい水やアイスやかき氷、果物や夏野菜や冷やし中華など。
夏の旬の食事を摂り入れて頂くことに問題ないのですが、水分摂取過多により水でお腹いっぱいにしてしまうことと、胃腸を冷やすことは、絶対に避けて頂きたいと思います。
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夏になると熱中症予防のアナウンスが必ず流れます。
その予防として、水分の摂取は必ず言われることです。
水を多めに飲みなさいと。咽がわいてからでは遅いと。そういう場合も確かにあります。しかし、もともと胃腸が強くない方では、この養生を無理に頑張ってしまうと「胃腸の水疲れ」という現象が起こってしまいます。
もちろん水分を摂って頂いても構わないのですが、絶対に大量には流し込まないこと。必ずちびちびと、少しずつ飲むようにしてください。
胃腸に大量の水分が一気に流れ込んでくる。これは胃腸がとても疲れます。
体格の良いスポーツマンでかつ胃腸が強い方ならまだしも、そうでない方であれば、胃腸に洪水を起こすと必ず消化管は疲れてくるものです。
また水は常温、もしくは暖かいくらいの方が良いと思います。氷水や冷蔵庫から出したばかりの水分は、胃腸への刺激が強すぎます。
胃腸は急激に冷やされると、血流が悪くなることで、動きが一気に悪くなります。
なるべくならば、お腹にピタッと当てた時に冷たいと感じない程度の温度。特に、暑くて汗をかいて喫茶店に入り、クーラーのかかった部屋で冷たい水を飲んでお腹を冷やす。これが、とてもありがちな胃腸への負担です。
胃が張る、胃が痛い、お腹が痛い、下痢をする。そうなってしまってからでは遅いと思います。夏こそ、涼しい部屋では湯を飲む、くらいの養生を心がけてください。
〇白湯の利用
そもそも、夏は冬よりも胃腸が冷えやすい季節です。
自然と冷たい飲食物が増えるという理由だけではありません。夏になると体は勝手に、内臓が冷えやすい状態を形成していきます。
冬は冷えに晒されます。この時体は冷えに対して自然と防御反応を起こします。
最も冷やしたくないのは体幹です。そのため、体に熱を閉じ込めるように反応する、つまりあえて体の外側に血液を行かせにくくすることで、体幹の熱を守るように働きます。
この反応が、夏になると逆転します。夏は体に熱がこもりやすくなります。そのため冬とは逆に、外側に熱を発散させるように自然と血流を変化させていきます。
汗をかきやすくなるのはそのためです。体表から熱を逃がすようになることで、内臓の熱も外へとどんどん放散していきます。
すなわち、夏は冬よりも、自然と体幹の熱が失われやすくなるのです。
この状態において、冷たい飲食物は内臓に冷えを直撃させます。
熱を逃がしやすい上に冷たいものが流れ込んでくる。すると、体の中が強く冷えます。そして同時に体の外側は熱いという内外の逆転現象が起きてきます。
そのため口は冷たいものを欲します、しかし胃は冷たいものを嫌います。そういう寒温の違いが出てきます。その場合は、必ず胃に合わせるべきです。
外の猛暑の中で湯を飲めとは言いませんが、少なくともクーラーの効いた涼しい部屋では止めてください。
胃を温めるくらいの熱めの白湯を一杯飲むことで、定期的に胃を温めてあげることをお勧めします。
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夏バテは胃腸から始まります。
睡眠不足によって胃の疲れが取れず、クーラーや冷たい飲食物によって胃が冷えます。
そうやって胃腸の活動が鈍くなることで、夏バテは起こります。
急激に暑くなるこの時期、胃腸の活動を乱し始めている方が、どんどん増えてきています。
寝室の温度管理に注意して、寝ている間に体を冷やさないようにすること。
そして冷たい飲食物をなるべく避け、白湯で胃を温める工夫をすること。
くどいようですが、胃腸が大切です。
胃腸が元気であることが、夏を乗り切る最大のポイントです。
「胃気なくば死す」
名医・李東垣が提唱した大原則です。
夏にこそ、肝に銘じたい名言だと言えるでしょう。
何度も言います。
とにかく胃腸です。
胃腸が大切です。「胃気なくば、死す」です。
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