情報弱者という言葉を耳にすると

2025年03月05日

漢方坂本コラム

突然ですが、

TBSラジオの「日曜天国」って番組、ご存知ですか?

正式には「安住紳一郎の日曜天国」です。

けっこう昔からある番組だそうです。恥ずかしながら私は最近知りました。

妻が教えてくれたのですが、すごく面白い。とても好きになりました。

リスナーからテーマに沿った話を募ってそれを紹介している番組です。

そられのエピソードが、聞いていてじわりとくるのです。

本当に何でもない話なのですが、だからこそ定期的に効くべきラジオというか。

何かの勉強になるような番組ではありません。しかし勉強より大切な何かを聞いている気がします。

普段あまり料理をしないお父さんが、家族のために「たたききゅうり」を作ろうとした時、

めん棒(麺棒)を綿棒と勘違いして、綿棒でちょんちょんと叩いただけのきゅうりを食卓に出した話とか。

病院で無事出産したあと、赤ちゃんを病院に置き忘れて帰ってしまったお母さんが、

申し訳なさそうに反省しながら「来た時は1人だったから・・」と言い訳したエピソードとか。

なさそうでありそうな、何とも言えない可愛らしくも微笑ましいエピソードです。

有名人の話は一切出てきません。誰かを傷つける話も一切ありません。

あくまで私たちと等身大の優しいエピソードです。だからこそ聞いていてスッと目の前に情景が浮かびます。

そして何より素敵なのが中澤有美子アナの引き笑い。この笑い声を聞くと自分もつられて笑ってしまいます。

私は基本的にテレビを見ないし見たいとも思いません。

たまにドラマとスポーツを見るくらいです。バラエティーに関しては自分にとっては時に騒音です。

そんな私に入ってくる情報は、他の人に比べてとても少ないと思います。

どちらかと言えば情報弱者に近いのかも知れません。

昔から本と映画はけっこうみてきましたので、弱者ではないかも知れませんが、

少なくとも強者ではありません。45歳になった今でも、未だに知っていて当然だったことを知らなかったということがけっこうあります。

ただどうしても、昨今の情報の海から逃れたいという欲求が出てしまう。

出不精でめんどくさがり屋だからです。「追い立ててくる情報」が本能的に嫌いだからだと思います。

テレビでもYouTubeでもInstagramでもXでも、

日々、様々な「警告」が飛び交っています。

このままじゃいけない、あなたは損をしている、このままだと不幸になるかもしれない、

気が付かないとマズいですよ、どうか気が付いてくださいという「警告」です。この溢れる「警告」に私はちょっと辟易しています。

もちろん中には大切なものもあるでしょう。ただそう言われれば言われるほど、気持ちが引いていくのは私が冷めた人間だからでしょうか。

人はそんなに警告されなくても、ちゃんと幸せですよと。大丈夫ですよと。

ただその幸せを、他人が見て幸せかどうかで判断してしまうと、追い立てられる気持ちも確かに分かります。

情報弱者という言葉を耳にすると、

情報が無いことが問題なのではなく、

情報が無いと幸せになれない状況、もしくは幸せではないと思ってしまうことの方が問題なのではないかと、

へそ曲がりで情弱な私は感じてしまうのです。

以前友達に「頭お花畑」と言われたことがあります。現実を見ていない理想主義に過ぎることも自覚しております。

ただですね、

「日曜天国」のような番組、

日々私たちが暮らしている生活の中に、いかに尊い物事が散りばめられているのか、

それを淡々と伝えてくれる番組に出会うと、私は考えてしまうのです。

上昇志向を持ち続けることが本当に幸せなのか。

人は生きているだけでその役割は十分にまっとう出来ているのではないか。

幸せとは「ただ生きること」の中にあって、

例えばきゅうりを綿棒でちょんちょんしているお父さんとか、

失敗をしても周りを笑わせてくれるお母さんとか、

そういう情景の中にこそちゃんと実感を伴う幸せがあって、

それが尊いもの、満たされたものだと感じることの出来ない人こそが、

もしかしたら情報弱者以上に、情報のトラブルに巻き込まれているのではないかと。

人の間違えや失敗エピソードを、優しい引き笑いで締めくくってくれる「日曜天国」を聞いてると、

そんなことを考えてしまうのですが、少し言い過ぎたかな。

実際にはそんなセンチメンタルな番組ではなくて、底抜けに明るく楽しい番組です。

なので、もし知らないという方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ聞いてみてください。



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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。また当店は漢方相談を専門とした薬局であり、病院・診療所とは異なりますことを補足させていただきます。