意地悪な先生

2020年10月28日

漢方坂本コラム

思い出話です。

漢方の修業時代、私がお会いしてきた漢方の先生方は、ことごとく意地悪でした。

質問をしても、いつも何となくズレた答えしかくれない。

あしらわれるような、それでいて何か大切なことを言っているような。

そんなフワッとした解答しか返ってこないのです。

さらに、「これはどうしてだと思う?」なんて問題を出してくるくせに、

その答えを、教えてくれないのです。

考えさせるだけ考えさせておいて、

「考えることが大切だから」なんて言って、答えをくれない。

悔しかったなぁ・・・。ぜんぜん腑に落ちません。

その質問や問題を頭に残したまま、私はずっと悶々としていました。

そしてそういう意地悪な先生方に、

私は今、深く感謝しています。

漢方の臨床を始めてから気が付いたこと。

それは、解答はそれほど重要ではないという事実です。

患者さまに合った処方をお出しすることが解答だとするならば、

極論を言えば解答など何でも良い。

その解答へと至る道筋にこそ、症状を改善させるための薬能が宿っています。

患者さまのお体にとって最も核となる問題点は何なのか。

それさえ正しく掴めていれば、その後の手法は枝葉のようなもの。

つまり解答を見つける能力よりもずっと、

問題を見つけ、作り出す能力の方が臨床では求められています。

質問に答えてくれないのは、私の質問の質が低いからでした。

問題の答えを教えてくれないのは、なぜそのような問題を出しているのかということこそが、本当の問題だったらです。

どうやって辿り着くのか。それこそが重要。

エレガントな解答は、結論がエレガントなのではない。

そこへと至る思考こそが、エレガントなのです。

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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

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