今年は例年に比べて、
春の訪れが格段に速いようです。
花粉が最初に飛び始めたのは一月。
そしてここ最近、急激に暖かくなりました。昨日はズボン下にタイツを履いて出かけたら汗だくでした。
にもかかわらず今週、また寒波が来るんですって。気温差が急激に過ぎます。
寒さを感じる間もなく陽気が顔を出し、
さらに暑いと思ったら急激に寒くなる。
私たちの体は少なからず戸惑いを覚えるし、
実際に体調を崩されている方が続々と増えています。
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急激に気温が上昇する時に起こる症状は、少し独特です。
ホットフラッシュやほてり、不眠などが強くなると同時に、
肉体よりもまずメンタルにその兆候が表れやすいという印象があります。
まずはイライラ。無性にイライラしやすくなります。
そして不安感。心に落ち着きがなくなって焦り、感情が強く波打ちます。
春の陽気自体は喜ばしいはずなのに、
心に不調が表れやすくなるのは、まさにこの時期特有の現象と言えるでしょう。
東洋医学では昔から良く言われていることです。
春は「昇発」の季節。肝気が盛んになり、自律神経が乱れやすくなると。
そこで肝気を疎通する柴胡剤をよく使う。
加味逍遙散や抑肝散、加味帰脾湯などはこの時期に良く処方される漢方薬です。
ただし私の経験上、必ずしも柴胡剤だけで良くなる問題ではありません。
春だから肝、肝気だから柴胡という発想は短絡的に過ぎると思います。
患者さん向けの説明としてはそれでも良いのかもしれませんが、
実際に治せている先生方は、そんなことは考えていないというのが現実だと思います。
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同じ患者さんであっても、使う薬は先生が代われば必ず変化します。
正解は同じではない、というのが漢方ですので、ここでは春のメンタル不調に飲むべき薬を挙げることはしません。
ただし、メンタルを整えるために必ずやらなければならないことはあります。
当然のことですが「養生」です。生活の中で気を付けなければならないこと。
これはどんな先生であれ、共通して指導されることだと思います。
まずは食事です。
食事の「内容」と「食べ方」です。
急に暖かくなる季節だからといって、冷たい飲み物・食べ物をたくさん摂取しないように。
胃腸を温めるよう心がけましょう。またゆっくり良く噛んで食べることと、夜遅くの食事は控えること。これらの「食べ方」が本当に馬鹿にできません。
胃腸が疲れると体は深くリラックスできなくなります。そして春に起こる興奮状態が一段と高まってしまいます。
こちらにおかかりの患者さまは、食生活に十分気を使っていただけていると思います。
それを乱さないようにしていただきたいのです。春はちょっとした油断が乱れへと繋がってしまいます。
そしてもう一つ。睡眠です。
夜は早めに寝てください。夜更かしした次の日は、人は食欲が過剰に出ると同時にイライラしやすくなります。
そして朝もちゃんと起きましょう。春眠暁を覚えず、春は寝心地が良いのでついつい寝過ごしてしまうこともあるかと思います。
眠りの基本は太陽とともに活動すること。春の不安定な気候に負けないように、規則正しい生活を心がけましょう。
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早すぎる春と、急激な気温変化。
心と体を守るために、自分を大切にする養生の時間を、意識的に作ってください。
松任谷由実が『春よ、来い』をリリースしたのは1994年。
そして時は流れて2025年。
昔のように、待ち遠しいと思えるような春を、また感じてみたいです。
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