水をたくさん飲みなさい神話というものがある。
漢方を生業とする人なら誰でもこの神話が嘘をはらんでいることを知っている。
曰く「血液やリンパ液の循環を良くするため」
曰く「便通を良くするため」
確かにある特定の疾患を患う方や便秘の方では水分摂取の不足に気を付けなければいけない時がある。
だからこの神話はすべてが嘘ではない。
しかし飲んだ水はすべてが吸収され循環中に移行するわけではない。
もともと循環の良い人なら問題はない。
しかし循環があまり良くない方、特に水を吸収するための中枢である胃腸に弱りのある方では飲んだ水が循環中に移行することができない。
そういう方が水をたくさん飲むと、かならず浮腫(むく)む。
時に下痢をする。頭痛を誘発させる。めまいを起こさせる。下肢を冷やす。
逆に循環を悪くさせるのである。
つまり、この神話は嘘ではないが、嘘をはらんでいる。
どんな人でも水をたくさん飲めば健康に良いというわけではない。
実際に水を飲み過ぎて体調を崩す方が大勢いる。
それなのになぜ未だに水をたくさん飲めと一律的に宣伝するのか、
まことに不思議で仕方がない。