あまり良いニュースではありませんので、
本当はそう頻繁に言いたくはないのです。
しかし、今回は特にひどい。だから言わざるを得ません。
北は北海道から、南は九州まで、
体調不良を訴えられている方が、ここ数日で急増しています。
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明らかに天候です。
台風はいつのまにかいなくなりましたが、
未だに続く低気圧の波と湿気。
普通10月では考えられないような、ややムシムシとした大気が体にのしかかっています。
そして自律神経が強力に乱れる。
その結果、ここ数日は電話でのお問い合わせが急増しています。
強いめまいで起きることができない。
耳鳴りが酷い。頭痛が悪化している。
とにかくだるい。車に酔ったようで体が辛く起きることが出来ない。
メンタルも辛い。居ても立っても居られない。
不安感が強い。少しのことでも心配で気になってしまう。
我慢ができない。体がしんど過ぎて、辛くてイライラする。
お腹が硬くなって動いてくれない。同時に息苦しくなり、少しのことで動悸する。
眠れない、起きられない。ほてりや皮膚の病が悪化している方もいます。
今まで調子よかった方でも、ここ数日悪化していますので、
治療が上手くいっていない方や、治療を始めて間もない方であれば、
当然の如く悪化してしまう。そういう強い波が、現在日本を襲っています。
本当は、あまり言いたくないのです。
体調の悪い方が増えているなんて。自分の不甲斐なさを痛感しています。
ただ、今回の波は本当にひどい。
本来10月は、もっと穏やかで平和な月でした。
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問題は「湿気」です。
10月では通常、ありえない湿度。
まるで梅雨時期のような濃い空気が、お彼岸を過ぎた頃から断続的に襲ってきている。
低気圧や気温の急激な変化もそうですが、今回の体調不良は「湿気」によるところが大きいと感じます。
東洋医学では古くから、湿気による体への影響を指摘し続けてきました。
適応する方剤も多く用意されています。防己黄耆湯や五積散、桂枝加苓朮附湯や藿香正気散。
これら湿病に対する処方は、挙げていけば有名処方だけでもかなりの数にのぼります。
ただ、ここ近年起こっている気象病においては、これらの処方だけでは対応できません。
今まで私も散々使ってきましたが、昔からあるやり方だけでは効きません。
おそらく、湿病の意味合いが変わってきている。昔のように単純な乱れではなくなってきているのだと思います。
体にべたっとへばりつくような、重く、だるい湿気。
それが断続的かつ急激に起こります。
おそらく昔は、ここまで急激ではなかってのではないかと。
そして彼岸を過ぎても起こるということは、あまりなかったのではないかと思うのです。
そして、人の変化。
人間の生活環境の変化です。
昔に比べてはるかに快適かつ便利になった環境。
それはつまり、自然に脅かされないよう、適度に距離を取れる環境になったということです。
しかし、逆に言えば自然に対応する力が無くなってきているとも言えます。
そういう環境が長く続けば、天候の変化に適応しにくい体になってしまいます。
便利で快適だからこそ失った力があるとするならば、
昔に比べて現代の人間は、自然に対して脆くなっているのかも知れません。
自然環境が乱れ、人間が弱くなる。そういう変化が起こっているのだとしたら、
今まで通用していた漢方治療のやり方では対応しきれなくなって当然です。
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医学は進歩します。
新しい考え方や方法論がどんどん生み出されていきます。
東洋医学も当然、そういう道を歩んできました。
そして湿気に対する治療法も、時代とともに生まれ変わってきました。
中国清代、名医・呉鞠通によって書かれた『温病条弁』。
日本ではあまり馴染みのない書物ではありますが、
この温病理論は「湿病」の治療に大きなイノベーションを起こしました。
この書物を深く解析できている人は、日本ではそれほど多くないかもしれません。
しかし、眠らせておくにはもったいない。そう感じるほどに、深く具体的な手法が提示されている書物です。
今後、環境をより乱していくであろう地球。
そしてその中で生きていく運命にある私たち。
本腰を入れて考えていかなければならない時期が、もうすでに来ているのではないかと。
東洋医学とか、漢方とか、もうそんなこと言っている場合ではなく。
医学全体として、考えていかなければならない。
どうやってこの地球で生きていくのか。
大げさではなくそういうレベルになっているのだと、
今回のような異常な天候を目の当たりにするたびに感じるのです。
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