漢方とアート 3

【普遍性(ふへんせい)】・・すべての物事に通じる性質。また、すべての物事に適合する性質。

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ある特定の人物から作り出された作品であるにも関わらず、それが多くの人に理解され感動を与える時、その作品はしばしば「普遍性を帯びている」と称賛されることがあります。物事の本質を捉えているのではないか、そう私たちに感じさせるような作品を評して用いられる「普遍性」という言葉。時代を超え、地域を越えて広がるものほど普遍的であるという解釈がなされます。

仮に芸術を「表現者あるいは表現物と、鑑賞者が相互に作用し合うことで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動。」と定義するならば、私にとって漢方とは芸術そのものです。一つ一つの漢方処方(表現物)は、それを学び理解するたびに、私たち漢方家に感動を与えます。そして、その処方を通して創作者(表現者)の真意を理解するたびに、一つまた一つと新しい想像性を与えてくれるのです。

ただし、すべての漢方処方が等しくそうかというと、決してそういうわけではありません。創作者の意図をあざとく感じてしまう処方もあれば、場渡り的な意図にて構成された処方もあります。その中で、非常に深淵な意味を感じさせる処方にはある種の「美しさ」があります。視点を変えれば様々な解釈を可能にさせつつも、芯には明確な意図がある。まるで数学者が導き出した数式のような、そういうエレガントと称するべき美しさが備わっているのです。

さらに、そう思わせてくれる処方たちにはある共通点があります。
より古い時代から残り続けているということです。

永い時間を経てもなお、その価値を人々に認めさせ続けている処方たち。そういう「普遍性」をもった処方たちには、それ相応の高い芸術性が備わっています。そしてそのような作品たちは、それを使用する我々に対しても高い芸術性を要求します。どこまで深く処方を理解しているか、どこまで作者の意図を掴んでいるのか、そういう作品に対する深い造詣を示すことで初めて、効果的な運用を許してくれるのです。

漢方処方は芸術作品です。そして漢方処方を理解することは、創作者との時を超えた芸術活動です。今よりずっと情報の少ない時代だったからこそ、先人たちが想像し得た何か。すべての人間に通じる真理のようなものを掴んだからこそ、今でもその臨床的な価値を失わないのだと思います。




漢方とアート
漢方とアート 2