漢方治療の心得 21

2021年02月05日

漢方坂本コラム

浮腫みがあるなら浮腫みを取る。

痛みがあるなら痛みを取る。

人が病み、ある病態へと陥った時、

多くの治療者はどうやってその病態や症状を取り除くのか、ということを考えます。

浮腫みがあるならその浮腫みを取るために、

蒼朮や沢瀉といった水を調節・消失へと導く生薬を用います。

痛みがあるならその原因となっている冷えや血行障害を取るために、

温めたり血行を促したりといった手法を用います。

これが普通です。そして間違えてもいません。

しかしこの手法、この考え方だけでは、

ある程度の所までしか、腕は上がりません。

治療の考え方には二通りあります。

一つは「現状に対して逆行する形を導く」という考え方。

冷えているなら温める、熱があるなら冷ます。

これが基本です。

しかし考え方はそれだけではありません。

「現状に対して同調する」という考え方があります。

そしてこれが大切です。

人を理解し病を把握し、そこから具体的な処方を導く際に、

この考え方を持てるかどうかで、治療の幅は大きく変わります。

例えば、

風邪の初期。寒気がして熱が出る。その時に漢方では発表剤(はっぴょうざい)を使います。

発表剤とは麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)に代表される、体を温めて汗をかかせる方剤です。

平熱を飛び越えて発熱している時に「体を温める」という同一方向性の薬を使う。

その理由は、体が発熱を求めているからです。

風邪の初期に体温が上昇するのは、体が身体に侵入したウイルスや菌を死滅させ、さらに発汗によって体温を平熱へと戻そうとしているためです。

だからそれをスムーズ行わせるべく、「体に同調する形」で発表剤を使います。

漢方治療の常識です。

しかしこの考え方が、

「すべての治療の基礎になっている」ということを理解している人は少ないのかも知れません。

なぜならば、ひとたび風邪の初期という特異的な状況下から外れてしまうと、

熱は冷ますもの、冷えは温めるものと、急に考え方を変えてしまうからです。

なぜこの「同調」という手法が急に無視されるようになってしまうのでしょうか。

その方が疑問だと、私は思います。

「同調する」という手法。

これは風邪の初期だけではありません。

すべての病態に対してこの考え方は通じます。

通じるというよりも、そう考える方向性が存在します。そしてその理解が、病態の把握を、薬方への理解を、次の段階へと押し上げるきっかけになるはずです。

人は病に陥った時、

必ず自分自身の力でそこに対応し、それを改善しようと努めます。

薬がなくても、治療を行わなくても、必ずそう反応します。

それが何なのかを見極めなければなりません。

体が欲していることは何か。

それを知ろうとする行為こそが、病を観るということではないかと思うのです。

三陰・三陽、上下・内外。

寒と熱と、表と裏と。

すべて私の浅はかな考えです。

漢方を必死に勉強されている方のために、僭越ながら自身が大切だと思っていることを記します。

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