完全に俄ファンの一人である私は井上尚弥選手の活躍に心を踊らせています。
数年前から井上選手の活躍を通じてボクシングにも興味が湧きました。
ユーチューブって便利ですね。ボクシングのマニアックな解説がたくさんあって、どれも面白いです。
結構調べる質なので、色々と詳しくもなってきました。
ボクシングそのものの見方というか捉え方も、ここ数年で大きく変わりました。
ボクシングのことを、私は昔まで格闘技だと思っていました。
いや、格闘技ではあると思うのですが、それ以前にボクシングは競技でした。
ただKOが多ければいいとか、スピードが早いとかパワーが凄いとか、そういうことでは選手の強さが測れないことが分かってきたのです。
「ボクシングを知っているのかどうか。」
どうやら選手の強さ・凄さはそこに集約されるようです。
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いかに相手のことを早い段階で理解し、相手の攻撃を受けずに自分の有効打を積み上げていけるのか。
相手に何もさせない状態で的確にラウンドを進めること。
そして自分のポイントだけを積み重ねる。そうやって試合をコントロールする術を見せつけることが、ボクシングでは何よりも大切だと分かってきたのです。
この能力を「ボクシングIQ」と言うらしいです。欧米では、ボクシングを観覧する人たちの間ですでに一般常識として認識されているようです。
それを知ってから、私は派手なKOにはあまり興味が湧かなくなりました。そして今まで以上に試合から目を離せなくなった。大袈裟ではなく、まばたきさえも出来なくなりました。
完全に俄ではありますが、見方が変わるというのはとても楽しいことです。井上選手の試合は終わるのが早すぎるんですよね。彼が試合中に直面する問題にどう対応していくのか、そんな所を見てみたいなと。ドネア戦は、そういう意味で見応えがあったと感じています。
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そして案の定、この話は漢方の話につながります。
というのも、漢方の世界も全く同じだと、私には映るからです。
本をたくさん読んでいるとか、古今東西の知識が豊富とか、そういうことでは本質的な凄さは語れません。
一番重要なのは、「漢方」を知っているのかどうか。
臨床を通じて私はそう感じます。実際に融通無碍の運用ができる漢方家の凄さは、ここに集約されるのです。
江戸の名医・尾台榕堂は、漢方治療において重要な尺度である「寒」と「熱」とを全く論じませんでした。
「寒・熱」はいらないと。そういう尺度では、漢方の本質を論じることが出来ないことを知っていたからです。
昭和の名医・中島随証は、西洋医学的手法の一つである血圧測定器を使って病態を決定していました。
当時の漢方界ではタブーに近いやり方です。でも敢行した。それは血圧測定というやり方からでも、漢方の本質にたどり着けることを知っていたからです。
名医たちは皆、「漢方」を知っていました。
そう考えないと、つじつまが合わないのです。全然違う考え方、全く違うやり方であるにも関わらず、最終的には皆、名医の発言が近しいものになっていくからです。
そして手法は違えど、名医は皆認め合います。
あいつのこの発言には理がある、含蓄があると、流派を越えて認め合うことがあるのです。
そういう世界で、言葉を交わしてみたくはありませんか。
私はしてみたい。
派手なやり方とか、有名だからとか、そういうことではなく、
「漢方」を理解し、「漢方」を知った上で、
「漢方」をちゃんと感覚的に捉えている者どうして会話がしてみたいなと。
そういう世界に、行ってみたいです。
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