漢方治療の経験談「更年期障害治療」を通して

2022年07月15日

漢方坂本コラム

漢方治療にご相談に来られる方の疾患は、

総じて西洋医学では治りにくい病がその大半です。

たとえば自律神経失調症やパニック障害、月経前緊張症(PMS)や起立性調節障害など。

そして、更年期障害もその一つ。当薬局でも多くの患者さまが、漢方治療をお求めに来局されます。

今では西洋医学を主として行っている病院でさえ、更年期障害には第一選択的に漢方薬が処方されるようになりました。

医療全体を見ても、漢方への期待が高まっている。

更年期障害からは、昨今の流れからそんな印象を感じます。

漢方における更年期障害治療のポイントは、

なんといっても「更年期」の意味を、東洋医学的にどう捉えるのかに帰結してきます。

曰く、ホルモンバランスの乱れによって、血のめぐりが生理的に変化してくる時期。

曰く、出産後の育児や家事・仕事など、女性において負担がかかりやすい時期。

さまざまな要素が組み合わさる更年期だからこそ、東洋医学でも広い視野を持った治療が求められます。

しかしその治し方となると、それほど多くの処方を必要としないというのが、最近の私の見解です。

要所を掴むことが肝要。どの病でも言えることですが、

特に更年期障害治療では、身体の掴みどころを明確にすることが大切です。

それは「気」だの「水」だの「瘀血」だのと、そういう基礎概念の切り回しではなく、

もっと根本的に何を改善しなければいけないのか、という視点。

更年期障害を漢方薬にて治療する場合には、シンプルに要所を突かなければ治らない。

経験としてそれをはっきりと感じます。更年期障害は、多くの処方から選べば良いというわけではなさそうです。

更年期では、疲労していきやすい体の箇所があります。

誰しもが経験する更年期。だからこそ、身体には共通して疲労していきやすい部分があるのです。

東洋医学的に更年期を定義すると見えてくる、

必ず変化する、女性としての半生を決定づける変化。

誰しもに起こり得る要所の変化だからこそ、その部に着目して症状を勘案しなければなりません。

この着想を持った時から、私の更年期障害治療は安定した成績を残せるようになりました。

そういう要所はいくつかあります。

さらにそれらが、連動して起こります。

しかも、よくよく古典を見ると、そのことがすでに記載されています。

傷寒論しょうかんろん』と『金匱要略きんきようりゃく』。

これら約2000年前の書物には、漢方の基礎書には載っていない更年期障害治療のポイントが、すでに記されていたのです。

そもそも漢方の聖典と言われるこれらの書物には、

なぜか具体的な臓器の名称が、あまり記されていません。

心肺ではなく胸中きょうちゅう、胃ではなく心下しんか、腸ではなく腹中ふくちゅう、子宮ではなく少腹しょうふく

あえてぼかすかのように、体の部位を指し示している。

そこに、意味があるのです。著者の気持ちを考えれば、至極納得がいく所です。

単に昔は臓器が正確に分かっていなかったからとか、触診や腹診のためにそう言っていたとか、

そういうことではなく、あくまで「関連」という視点。

子宮ではなく少腹しょうふくと言うことが、非常に大切なのです。

私が初めてそのことに気が付いた時、あぁ、古人は既に気が付いていたんだなぁと。

胸に歴史の重みが染み入りました。古人との対話。漢方の醍醐味だと思います。

更年期障害では、身体の血流を順調ならしめる必要があります。

自律神経は血流をコントロールする神経です。また内分泌(ホルモン)は血流にのって運ばれる物質です。

体の隅々にまで流れている血流。それを、どのように調節するのか。

自律神経や内分泌の機能を調節するためにも、血流(血脈)という点に着目し、そこに心血を注いだ医学が漢方だと言っても過言ではありません。

そして血流を促すためには、しかるべき要所を知る必要があります。

また要所に働きかけるためには、各処方の意味を理解しなければいけません。

更年期障害治療は、そういう視点をもって捉えることで見えてくるものがあります。

漢方という医学は、数千年も前からずっと、私たち人間の本質を見つめようとしてきた医学です。

それを紐解き理解するすべが治療に直結するということ。

漢方治療をお試しになることで、それらを是非、利用していただければと思います。



■病名別解説:「更年期障害

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