漢方治療の経験談「酒さ・赤ら顔治療」を通して

2020年12月24日

漢方坂本コラム

大陸から向かってくる巨大な寒波。

「酒さ様皮膚炎」にお悩みの患者さまにとっては、非常に辛い時期になってきました。

あまり聞いたことのない病かも知れません。

鼻や頬を中心として強い赤味を発生させる疾患です。

見た目にキツイというだけではありません。

灼熱感を伴う強い火照りや発疹、時に痛みなどの知覚過敏を伴います。

だから日常的にどうしても意識せざるを得ません。

とにかく不快である、というのがこの病の特徴です。

そして急激に寒くなる今時期に、これらの症状は悪化します。

その理由は、寒暖差に伴う自律神経を介した血流の乱れ、と一言でいえばそうなりますが、

ここに打つ手が西洋医学にはない。だから漢方治療をお求めになる方が多い病でもあります。

では、漢方薬ならばこの極端な悪化を食い止めることが出来るのかと言うと、

必ずしもそうとは言い切れないという現実がある。

日本列島を覆うような強大なエネルギーに対して、

人間は米粒のようなもの。大なり小なりの影響をどうしても受けざるを得ないという現実があります。

私の経験上、酒さ様皮膚炎は確かに漢方治療によって改善へと向かうことの多い疾患です。

ただしやはり波を打ちます。急激な寒暖差はその最たるもので、冬や春では特にこの波が生じやすくなります。

しかし、長く治療を行っている中で分かってきたことがあります。

皆一様に悪化している時期においても、あまり悪化せず、症状が安定されている患者さまたちがおられるのです。

そういう患者さまたちの共通点は、ある程度「長期的」に治療を続けられているということ。

去年の冬頃から漢方薬を服用し始め、かつ的確な養生をしっかりと続けてこられた方たちです。

漢方薬は長く飲まないと効かない、と言いたいわけではありません。

継続することの力を、まざまざと感じさせて頂いている、ということです。

漢方薬は長く飲まないと効かない、というのは嘘だと思います。

嘘というよりも、一概にそうとは言えないと私は思っています。

数ヶ月に及んで服用しているのに少しも効果を感じないのであれば、

その薬はおそらくいくら飲み続けても効果はないでしょう。

少なくとも「お、この薬良いかも」という実感はあって然るべきです。

長く飲むことは大切です。

ただし、何らかの良い体調変化を実感できる薬を、長く飲むことにこそ意味があるのだと思います。

そして、そういう薬を飲み続けると、そういう養生を行い続けると、

とても大きな力を得ることが出来るのだなと。

米粒のような人間であっても、強大なエネルギーに左右されない、

そういう強い力を得ることが出来るのだなと。

人間って強いのだなと、臨床を通して感じるのです。



■病名別解説:酒さ・赤ら顔

□酒さ・赤ら顔 〜なぜ温度差でのぼせるのか?ほてり体質者の特徴〜
□酒さ・赤ら顔 ~ほてり体質者と気をつけるべき生活の養生~

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