波の強い天候が続いています。
今年は梅雨入り以降、多くの方が体調を崩されています。
ただ、治療を長く続けている方ほど、今回の天候にもそれほど乱れていません。
その一方で、治療を始めて間もない方にとっては、とても辛い状況だと思います。
漢方治療に携わって十余年、
私には、天候の乱れによる苦い経験がたくさんあります。
反省としか言いようのない、苦い経験。
天候との、戦いの日々です。
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漢方治療は、初診が肝要です。
初手で大きな失敗をすると、ほとんどの場合、そこで治療は頓挫します。
ただ初診の時点で、ある程度の難易度は感じられるものです。
この人は治りやすいだろう。この人では治療に時間がかかるだろう。
そういうことを、初めの段階で感じることができます。
結果、この予想を良い意味でも悪い意味でも裏切られることはあるものの、
おおよその予想として、ある程度の精度で想定することができます。
この時、この人は良くなるだろう、そう感じた人において、
それを悪い意味で裏切られるケースの多くが、「天候の波」です。
漢方薬を服用し始めた時期と、急に寒くなった時期、
急に暑くなった時期や、急に低気圧が来た時期とが重なる。
そして体調が崩れる。患者さまにとっては、漢方薬によって悪化したと感じます。
そう感じますよね。。。当然のことです。
漢方薬が合わなかった可能性もありますが、もし正しい漢方薬が出せていたとしても、天候の乱れが強ければ一時的に症状が悪化しても不思議ではありません。
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それほど天候は、人体に、病に、強い影響を与えます。
天候によって症状が乱れるという感覚は、治療の始めでは感じにくいものです。
始めは常に調子が悪いからです。いつも調子が悪ければ、症状悪化のきっかけが天候なのかどうかなど、分かるはずがありません。
しかし、調子の良い日が出てくると、今度は何によって体調を崩すのかが分かりやすくなってきます。
そして、天候だと気が付きます。治療によって良くなるごとに、天候の影響が分かりやすくなってくるのです。
先生のおっしゃる通り、天候でこんなに体調が乱れるんですねと、改めて驚かれる方がなんと多いことか。
だから、治療の初期段階、何がきっかけで調子が悪くなるのかを気づきにくい段階において、
漢方薬服用と天候の乱れとが同時に訪れることは、
私にとっては恐怖なのです。
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初診時に「いける」と感じ、
いくら正解に近い漢方薬を出したとしても、
初手で調子を崩せば、患者さまは治療を続けられません。
どこにいっても治らなかった病、そして期待をもって始めた漢方治療であればあるほど、
それは当たり前のことです。やっぱりダメかと、落胆されて当然です。
この時もし、安心させて、続けさせてあげることが出来ればと、
不甲斐なく思う苦い経験が私にはたくさんあります。
治る可能性があったのに、と。
説明が足りなかった私の責任だと思います。
だから私は、「いける」と思った方でも、いや、そういう方であればあるほど、
その時同時に「何が起こるかわかない」と、臍下に力が入るようになりました。
明日から雨ですとか、台風が発生しましたとか、天気予報の情報を聞くたびに臍下にグッと力が入ります。
先日来局されたあの方、大丈夫かな。。。
治療を始めて間もないあの人、大丈夫かな。。。
願うばかりです。早く安定した天候がやってきて欲しい。
そう思う私の気持ちとは裏腹に、
今年の梅雨は特に強力。
そういえば年々、一年を通して、
安定した気候が無くなってきています。。。
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