以前、漢方を志すなどと言えば、白い目で見られる時代がありました。
薬草を使った治療が、何かまやかしのように感じられてしまう。
昭和中期ころまで、漢方にはそんなインチキくさい印象が少なからずあって、漢方を勉強していると言えば、馬鹿者扱いされてしまうような、そんな時代が確かにあったのだそうです。
そんなに昔の話ではありません。丁度私が生まれたくらいの頃でしょうか。
その頃から数十年経ちました。今では約8割の医者が漢方薬を処方するようになっています。
漢方の認知度が急速に高まった時代、私はそんな時代に漢方を勉強し始めました。
ある意味、時代の恩恵を受けていたのかも知れません。おかげで、沢山の漢方家に合い、さまざまな意見を聞くことが出来ました。
医療関係者に関わらず、人々に広く認知されたという意味で、今は漢方の隆盛期と言えるのかも知れません。
しかし、どこかにそれを頷けない自分がいます。本当に漢方は認知されているのでしょうか。
日本の医者・薬剤師の国家試験には、未だに漢方の問題が数問しか出ません。
医者の8割が使っている、にも関わらず保険適用の漢方薬は一向に増えません。
確かに漢方薬は広く使われるようになりました。でも本当に、今後必要とされる医療として、認識されているのでしょうか。
漢方の認知と実状に、正直ちょっと違和感があります。
私は漢方は流行る必要はないと思っています。
医療の中心は西洋医学であるべきで、その恩恵から漏れてしまった方への受け皿という位置が、漢方の正しい居場所だと思っています。
ちゃんと残ること。時代に生き残ることこそが、大切だと思っています。
だから広く認知されることの前に、生き残れる漢方を研鑽することの方が大切だと思っています。
馬鹿者だとののしられ、白い目で見られる中、
歯を食いしばって勉強されてきた昭和の先生方。
今も現役で臨床に当たられています。そういった先生方のほうが、生き残りをかけた漢方を習得されてきたのではないでしょうか。
認知が広がった、多くの方が手に取れるようになった。
だからこそ今我々は、漢方に対してどう向き合えばよいのか。
もしかしたら難しい時代に、私は漢方を始めたのかも知れません。