難しい時代

2020年09月02日

漢方坂本コラム

以前、漢方を志すなどと言えば、白い目で見られる時代がありました。

薬草を使った治療が、何かまやかしのように感じられてしまう。

昭和中期ころまで、漢方にはそんなインチキくさい印象が少なからずあって、漢方を勉強していると言えば、馬鹿者扱いされてしまうような、そんな時代が確かにあったのだそうです。

そんなに昔の話ではありません。丁度私が生まれたくらいの頃でしょうか。

その頃から数十年経ちました。今では約8割の医者が漢方薬を処方するようになっています。

漢方の認知度が急速に高まった時代、私はそんな時代に漢方を勉強し始めました。

ある意味、時代の恩恵を受けていたのかも知れません。おかげで、沢山の漢方家に合い、さまざまな意見を聞くことが出来ました。

医療関係者に関わらず、人々に広く認知されたという意味で、今は漢方の隆盛期と言えるのかも知れません。

しかし、どこかにそれを頷けない自分がいます。本当に漢方は認知されているのでしょうか。

日本の医者・薬剤師の国家試験には、未だに漢方の問題が数問しか出ません。

医者の8割が使っている、にも関わらず保険適用の漢方薬は一向に増えません。

確かに漢方薬は広く使われるようになりました。でも本当に、今後必要とされる医療として、認識されているのでしょうか。

漢方の認知と実状に、正直ちょっと違和感があります。

私は漢方は流行る必要はないと思っています。

医療の中心は西洋医学であるべきで、その恩恵から漏れてしまった方への受け皿という位置が、漢方の正しい居場所だと思っています。

ちゃんと残ること。時代に生き残ることこそが、大切だと思っています。

だから広く認知されることの前に、生き残れる漢方を研鑽することの方が大切だと思っています。

馬鹿者だとののしられ、白い目で見られる中、

歯を食いしばって勉強されてきた昭和の先生方。

今も現役で臨床に当たられています。そういった先生方のほうが、生き残りをかけた漢方を習得されてきたのではないでしょうか。

認知が広がった、多くの方が手に取れるようになった。

だからこそ今我々は、漢方に対してどう向き合えばよいのか。

もしかしたら難しい時代に、私は漢方を始めたのかも知れません。

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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

※当店は漢方相談・漢方薬販売を行う薬局であり、病院・診療所ではございません。コラムにおいて「治療・漢方治療・改善」といった言葉を使用しておりますが、漢方医学を説明するための便宜上の使用であることを補足させていただきます。