この前、ご来局された患者さまから、ある質問を頂きました。
その内容が、あまりにも「確かにそうですよね」と共感できる内容でしたのでご紹介いたします。
まずは頂いたご質問ですが、内容は以下の通りです。
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先生に言われた通り、食生活の改善に取り組んでいます。
ただ食べたいものを食べられないというのは、ストレスが溜まります。
そのストレスはどう発散したら良いのでしょうか。
先生はストレスにどう向き合っていますか?
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はい。ごめんなさい、そうですよね。
確かに、ごもっともです。
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患者さまは以前当薬局に通われていた方です。
体調が良くなったため一時治療を終了していました。
ただ昨年の後半にやや体調を崩してしまったため、
そこから再度治療を始められている患者さまです。
以前かかって頂いていたこともあり、
その治療方針も気を付けるべき養生も、よくよくお分かりになっておられます。
現在、すでに症状は回復の傾向にありますが、
それは患者さまご本人が、生活の養生、特に食事の養生をしっかりと守っておられるからです。
ただし、おっしゃる通りです。
食事を気を付けることは、大変なストレスを伴います。
患者さまの場合、間食、特に甘いものやお菓子は極力避けていただく必要があります。
おそらく、もともと好きなものであるはずです。
毎日、大変な我慢を強いられていると思います。
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後で述べますが、私なりの理由もあり、この患者さまのお気持ちは非常に良く分かります。
その上で、私はどうストレスに向き合っているのか、というご質問を頂きましたので、
はじめにそこからお答えしました。
私のストレスとの向き合い方は、ちょっと変わっているかも知れません。
そもそも私は生きていること自体が、ストレスなのではないかと思っています。
人生が嫌だとか、生きることはつまらない・辛いとか、そういうことを言っているのではありません。
生命を持ってこの地球上で生きている、その時点でストレスは絶対に避けられないとうことです。
もっと言えば、生きるということは、イコール、ストレスを受けること、だと考えています。
何らかのストレス(刺激)を受けて「変化」を続けていく。それが生きるということだと考えているからです。
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生きるとは、変化する、ということです。
つまり生きていくためには、変化を続けていかなければなりません。
その変化を促してくれるのが刺激、つまり「ストレス」です。
私たちはこの刺激・ストレスがあるからこそ、生きていくことが出来ています。
例えば光や熱、風や湿度、
気温や気圧、食事内容や食事の食べ方、
さらに他者からの言葉や、目や耳にする情報、
そして体内で化学反応を促すあらゆる生体物質に至るまで、
すべてが体に変化を起こし得る刺激・ストレスです。
私たちはこれらの刺激のおかげで、変化を起こすことが出来る、生きることが出来ています。
もちろんその中には心地よい刺激もあれば、不快な刺激もあります。
ただしどちらも人には必要です。変化を促すという意味ではどちらも等価です。
すなわち生きている以上は、良い悪いは別にして、刺激に晒され続けなければなりません。
であるならば、刺激によるストレスを「我慢し続けること」が生きるということでもあります。
だから私は思うのです。
人生は、我慢を飼いならした者の勝ちだと。
いかに「我慢しないか」ではなく、
いかに「我慢が当たり前になるか」。
それが、現実的に心地よく生きていくために、必要なことだと思うのです。
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我慢が当たり前になる、と聞くと、
一生我慢し続ける、という感覚を受けてしまいがちです。
それは私も嫌です。
そういうわけではないのです。
我慢が当たり前になるということは、「我慢を我慢だと思わなくなる」ということです。
だから我慢が当たり前になってしまえば、むしろストレスから解放されます。
私の話をしますが、
私は自分でも、生活に気を使っている方だと思っています。
しかし自分にはウィークポイントがあります。
甘いものが大好きなのです。
昔から甘いものにはどうしても手が伸びてしまうという質でした。
そして、私の父は糖尿病でした。
さらに祖母は、最終的に膵臓がんで亡くなっています。
おそらく私は、甘いもので体を壊す体質を持っています。
そして甘いものというのは、本当にやっかいです。
強く依存してしまうのです。
3時におやつを食べると必ず、次の日の3時に甘いものを食べたくなります。
必ずそうなります。そして、その時に甘いものを食べないように我慢する、という自分との勝負が始まります。
これがかなりキツい。甘いものの事がどうしても頭をよぎってしまいます。
何もしていないのにイライラすることもあります。なにより集中できなくなってしまうことが辛いです。
だから私は、そういう自分との勝負をすることの方がストレスだと感じるようになりました。
必ずやってくる強烈な我慢の時間。あれがまた来るならば、はじめから甘いものなど食べない方がまだマシです。
だから甘いものを食べない、そして我慢する日が続いていくうちに、
ある時から、甘いもののことを忘れます。
それほど甘いものを欲しなくなるのです。
脳が求めなくなります。なんであんなに食べたくなっていたんだろうと、不思議に思うくらいです。
そしてなんの我慢もせずに、甘いものを食べないで済むようになります。
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我慢が当たり前になる、ということは、
我慢しないでも済むようになる、ということです。
おそらく、誰でもそういうふうになります。
人間は、そういう体のつくりになっているからです。
強い刺激が入ってくれば、その刺激に慣れていきます。
慣れてくれば、もっと強い刺激が欲しくなります。
依存はそうやって形成されていきます。そして我慢の度合いがどんどん強くなります。
つまり強い刺激が入ってくればくるほど、我慢しなければいけないような体の状態になってしまうということです。
そしてその体の状態さえ解除できれば、我慢を感じなくてすむようになる、ということです。
我慢は自分の体と向き合うことによって、コントロールすることが可能です。
つまり我慢を飼いならす術(すべ)が、人間にはあるのです。
私は多くの患者さまに、その方に必要な生活の養生をお願いしています。
中にはキツいものもあると思います。私も時に、甘いものを食べたくなることがあるし、筋トレも今日はいいやと思ってしまうことも多々あります。
ただし、最初強い我慢が必要なことであっても、人は必ず慣れていきます。
そして慣れてしまえば勝ちです。その時はそれを我慢だとも感じなくなるはずです。
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私の指導は、時にストレスを感じさせてしまうと思います。
大変申し訳なく思います。しかし本当は、ストレスから解放されるための指導を行っているのです。
不快な症状を去るために必要であると同時に、我慢から解放されるための術、
ストレスを不快なものとして感じにくくなるための術を、
「生きること」と「ストレス」とが密接に繋がっているからこそ、
我慢をしないで済む人生のためも、知っていただきたいのです。
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