◇養生の実際・夏バテ対策編4 ~寝ることの意味・睡眠と夏バテ~

2020年07月03日

漢方坂本コラム

◇養生の実際・夏バテ対策編4
~寝ることの意味・睡眠と夏バテ~

<目次>

・胃腸の「疲労」と胃腸の「回復」
・睡眠と夏バテ
・正しい睡眠・いつ取るか・どう取るか
・寝なければ治らないという事実

胃腸の「疲労」と胃腸の「回復」

夏バテ対策の主眼は「胃腸」にあり。

前回まで、くどいくらい繰り返しご説明してきました。

・水を飲み過ぎないこと
・過食を避けること
・冷えた水をなるべく飲まないこと
・梅雨時期から食養生を始めること

これらの養生はすべて
「如何に胃腸を疲労させないか」を基に、ご提案してきた内容です。

食事を摂るという行為、
それによって胃腸はどうしても疲労へと向かいます。

しかし、過度でなければ必ず回復します。
だから「過剰に疲れさせない」ということが大切なのです。

上にあげた養生は、どれも胃腸の過剰活動を控えるためのものです。
ですから夏バテ予防のためには、これらを守る必要があります。

ただし、もう一つ、とても重要なことがあります。

胃腸を如何に回復させるか」という点について。

過剰に疲労させないことと同時に、
充分に回復させることについても考えていかなければなりません。

今回は夏バテ対策の最後の一つとして、「回復」の重要性について解説していきたいと思います。

睡眠と夏バテ

身体の疲労を回復させる。

人間にはもとから、これを行うための壮大なメカニズムが備わっています。

日々の疲れを回復させることが出来なければ、
人は死へと一直線に進みます。

したがって人は、生命力を総動員して
日々、この疲労を回復させるよう努めます。

このメカニズムが「睡眠」です。

人が眠る目的は、疲労を回復させ、体を作り上げるためです。
削られた損傷を、消耗した形を、もとの状態・時にそれ以上に回復させることこそが「睡眠」の目的です。

さらに人体は、寝ている時にしか回復することが出来ません。

回復とは非常に特異的な能力です。
寝ることでしか、この働きへのスイッチが入らないからです。

したがって、いくら栄養ドリンクを飲んでも、体に良い食事を摂っても、
寝なければ絶対に回復はしません。それが人体活動の宿命です。

つまり胃腸を疲労させない食生活をいくら心がけても、
充分な睡眠をとらなければ、必ず疲労は蓄積していきます。

したがって、夏バテを起こさないようにするためには

〇早く寝る・睡眠を充分にとる

ということが大前提になるのです。

正しい睡眠・いつ取るか・どう取るか

睡眠による回復能力。
このメカニズムは、「夜間」において最大に発現します。

人体は元来、太陽循環の元で生きていけるようにプログラミングされています。
したがって、人体活動はどうしても昼夜のリズムに依存しています。

すなわち日中太陽が出ている時は、体は自然と動く方向へと導かれていきます。
逆に夜間は、どうしても静止・回復の方向へと導かれていきます。

そのため睡眠は、この規律に沿って行われた時に初めて高まることが出来ます。
つまり睡眠の本来の目的を果たすためには、「夜間」にとることが必須となるのです。

日中に数十分の仮眠を行うことは、
消耗にブレーキをかけるという意味で有意義です。

しかしいくら日中に寝ても回復はしません。
夜間に寝るからこそ回復を行うことが出来るのです。

さらにもう一つ。

睡眠中に疲労を回復させるためには、
回復する部位の活動が停止していなければなりません。

いくら夜間に充分な睡眠時間をとっても、
寝ている間に動いていれば疲労し続けてしまいます。

つまり胃腸を回復させるためには、
睡眠中に胃腸活動を静止させていなければなりません。

だからこそ、夕食と睡眠とには、充分に時間が空いていなければならないのです。

〇夜12時には熟睡しているようにする
〇夜遅くに食べない・夜食べてすぐ寝ない

睡眠を充分に取るということに加えて、
いつ取るか・どう取るかということについても、気を付ける必要があります。

寝なければ治らないという事実

毎年夏バテを起こしてしまうという方は、
これらの養生が崩れてしまっていないかどうか、是非チェックしてみてください。

日照時間が長い夏、
夜更かしや徹夜をしてしまうことはないでしょうか。

夏休みや盆の休み、友達や親戚同士で集まることもあるかと思います。
楽しみの多い夏ですが、睡眠時間の確保だけは、是非とも心がけて頂きたいと思います。

なぜならば、
先に述べたように、どんなに食事の養生を行っていたとしても、
正しく睡眠が取れていなければ、必ず胃腸に疲労が蓄積していくからです。

冷たい水を飲まないようにしても、過食を避けていたとしても、
正しい睡眠が足りなければ全て水の泡です。胃腸は必ず動かなくなります。

昨今の温暖化で、ただでさえ寝苦しい日が多くなってきています。
夜は早く寝ようという意識を持つこと。きっと意識するだけでも、夏の体調が変わってくるはずです。



◇養生の実際・夏バテ対策編1 ~はじめに~
◇養生の実際・夏バテ対策編2 ~なぜ夏にバテるのか?胃腸の温存と水分摂取~
◇養生の実際・夏バテ対策編3 ~夏バテは胃腸に始まり胃腸に帰結する~

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