夏だからこそ気を付けたい「水の飲み方」

2021年08月04日

漢方坂本コラム

夏場に水を飲むときの注意。

この話、毎年毎年、くどいように書いてしまうのですが。

ただ、とても大切な話なのです。

多分、当薬局におかかりになっている患者さまなら、分かっておられるはず。

ただ今一度、ご確認いただきたく。

復習もかねてお読み下さいませ。

夏場は体内の水が不足しやすくなります。

そのため、当たり前のことですが、水を飲まなければなりません。

ただし大切なのは「水の飲み方」です。

結論から言えば、

〇冷たい水はなるべく避ける
〇水のがぶ飲みはやめる

この二点だけ、とにかく気を付けてください。

夏場は汗を多くかきます。

発汗すると、血中の水分は一時不足気味になります。血が濃くなるわけです。

軽く脱水へと向かっているといっても良いかもしれません。

そうすると、身体は「のどの渇き」という形で水を取り入れるためのサインを出します。

そして、水を飲むことで、水分が血中に戻ってきます。

こうして発汗による一時的な脱水を回復し、濃くなった血液をもとに戻します。

発汗・口渇・水の補充、という当たり前のメカニズムです。

ただ、このメカ二ズム、当たり前に起こるとは、必ずしも限らないのです。

のどが渇いて水を飲む。この時、「胃腸が弱い」と脱水を回復することができなくなります

なぜかというと、胃腸が弱っていると、水を体内に取り入れることができなくなるからです。

人によっては吸収できない水が胃にたまって胃痛・胃もたれを起こしたり、

下痢などの形で排出してしまったりします。

すなわち、のどが渇いて水を飲んだとしても、逆にそれによって胃腸を傷つけてしまい、さらに胃腸を弱らせてしまうことがあるのです。

夏バテを起こす方の多くはこの機序を取る、

つまり、胃腸の弱い方が、水を飲みすぎることによって、夏バテは進行していくのです。

水をたくさん飲むことで、胃腸を傷つけてしまう、

そして消化機能を弱めてしまうと同時に、

水を飲んでいるのにも関わらず吸収が上手くいかず、血液中に不足する水を補えなくなるという機序です。

さらに、水でお腹いっぱいになってしまうと、食べ物が食べられなくなります。

すると栄養も不十分になります。さらに体力を消耗することにつながっていきます。

つまり、脱水予防に対して、一律的に水を飲むという指示だけでは、多くのケースで間違いなのです。

胃腸の弱い方の場合、水の飲み方を注意しないと、逆に胃腸を傷つけて脱水を助長してしまいます。

胃腸を傷つけるような「水の飲み方」をしないこと、そして、水でお腹いっぱいにせず、食事を取る余力を残すことが大切です。

これが夏バテを起こす原因の最たるものです。とにかく大切なのは、「水の飲み方」です。

夏はちゃんと水分を取ることが大切、ただし、水の飲み方を厳重に注意してください。

ポイントは二つ、水の温度と飲む水の量。

冷たい水は避ける。

そして、水を一度に大量に飲まないようにすること、です。

夏は冬と違い、身体は体内の温度を外へ逃がそうとします。

ですので冬よりずっと胃腸が冷えやすくなります。これが胃腸の疲れの原因になります。

特に冷たい水や、果物で冷やし過ぎてしまう方が非常に多くなります。

クーラーなどの冷房機器を夜間に浴びることでも、内臓が容易に冷えてしまいます。

冷房機器の無かった時代では、夏は体を適度に冷ますことが重要でした。

冷たい水を飲んだり、夏野菜などで体温を適度に冷ますことで夏を乗り切っていました。

しかし、現代では空調管理によって体を冷ますことが昔よりも容易になりました。

その分、体温を逃がすという人体が持っている夏の防御反応が裏目に出てしまい、体を冷やす飲食物によって、胃腸を傷つけることが多くなっています。

そして、胃腸にとって優しい水の飲み方は、「少量をちびちびと飲むこと」です。

大量の水が洪水のように流れ落ちてくる状況は、胃腸の弱い方であれば、即座に胃腸を疲れさせます。

胃腸が疲れれば水は体内に吸収されません。そして結局、脱水を回復することができません。

のどが渇いた時ほど、水をちびちびと飲むようにしてください。相当たくさんの汗をかくことが分かっている時は、前もってちびちび飲むことも大切です。

腸の吸収機能を上回る量の水を大量に入れ込まないこと。

そして水でお腹いっぱいにしないこと。それによって食事を摂れなくなることが、夏バテの始まりだということを是非覚えておいてください。

脱水予防に水を飲みなさい・のどが渇く前に水を飲みなさい、

これだけでは、あたかもたくさんの水を飲みなさい言われているようですが、決してそういうことではありません。

確かに水は飲まなければならないのですが、「水の飲み方」が最も大切です。

夏を元気に、夏らしく過ごすために、是非「水の飲み方」にお気をつけください。



〇参考コラム
◇養生の実際・夏バテ対策編1 ~はじめに~

◇養生の実際・夏バテ対策編2 ~なぜ夏にバテるのか?胃腸の温存と水分摂取~

◇養生の実際・夏バテ対策編3 ~夏バテは胃腸に始まり胃腸に帰結する~

◇養生の実際・夏バテ対策編4 ~寝ることの意味・睡眠と夏バテ~

【この記事の著者】店主:坂本壮一郎のプロフィールはこちら