慈雨

2021年06月15日

漢方坂本コラム

14日に梅雨入りした関東甲信。

ここ山梨ではいきなり高気圧に覆われ、真夏のような暑さに見舞われました。

そして雷雨。急激な土砂降りからの雷雨。

梅雨らしからぬ雨の降り方です。真夏じゃないんだから、もう少し穏やかな雨を降らせてほしいものです。

近年の天候には、どこか荒々しさが付きまとっている気がします。

そう感じているのは私だけではないはずです。

少なくとも、マイケル氏は言っていました(ジャクソン)。

「地球は病んでいる」と。自然破壊によって「熱に侵されている」と、確か言っていました。

この発言、私には少し感じる部分があって。

地球も人と同じように病にかかるという表現に、どこか心に残るものがあったのです。

というのも東洋医学には、同じような発想がその根底にあります。

人を知るために、地球(自然)を見た。

地球を見ることによって、人を知ろうとしたからです。

大地には雨が必要です。雨が生命を生む。当然、雨が降らない時間も必要です。

定期的・断続的な雨が地球に必要ならば、人も当然同じだろうと。

そう考えた。そうやって人に必要なもの、人に必要な状況を知ろうとしたのです。

さて。

前置きが長くなりましたが、今日は「食事の養生」を皆さんに一つ。

どういう食事の摂り方が正しいのか。

それを、地球(自然)から人を理解しようとした、東洋医学的解釈をもって説明したいと思います。

まず、人にとっての「大地」とはどこか。

「胃腸」です。

東洋医学では「胃腸」を大地と見立てています。

そして大地には「雨」が必要です。

つまり「飲み物」。「食べ物」もそうです。

口から摂取するものは、胃腸にふります。そして生命を育む。

食べなければ人は生きていけませんから、おおむねこの解釈は自然だという気がします。

では、どういう雨が大地にとって心地よいのでしょう。

生命を育むためには、どのような雨が必要なのでしょうか。

逆に、どういう雨が大地を傷つけてしまうのか。

自然現象から考えれば、ごくごく当たり前の解答に帰結します。

大雨・土砂降り・豪雨・洪水。

いきなりドッと押し寄せてくる大量の雨水。

当然、大地は悲鳴をあげます。今まで培ってきた栄養を含んだ大地も、全部洗い流されてしまいます。

そして、胃腸も同じことが言えます。

大洪水はすなわち、大食・飽食・早食い・飲み込み食いです。

胃腸は悲鳴をあげます。そして、下痢や嘔吐となって、良いものも一緒に、全部洗い流してしまうのです。

さらに、大地が傷つく自然現象はこれだけではありません。

日照り・旱魃かんばつ・渇水。

つまり、まったく雨の降らない状況。

ゴツゴツと乾燥した大地に亀裂が走る。到底、生命を育むことはできません。

近年、一時的な断食・絶食が流行っていますが、

私から見たら非常に荒治療です。専門家が近くにいない状況で行うことは、あまりお勧めできません。

大地にとって必要なのは定期的な雨。

それは胃腸も同じ。定期的に、規則正しく降る雨が、胃腸にとっても必要なのです。

胃腸は二つの状況において強いダメージを受けます。

一つは大雨。もう一つは旱魃かんばつです。

つまり大地と同じなのです。

たとえ豊富な栄養源を含む大地だったとしても、

この二つの状況を受ければ、その栄養ごと、すべて消滅してしまいます。

力強い野菜が育つ大地。そういう大地になるためにはどんな雨が必要なのか。

それを、是非想像してみてください。

慈雨。

しとしとと、定期的に、規則正しく、適量をもって、降り注ぐ雨。

自然破壊の多くは、人の意志と節制とによって、防ぐことができるものです。



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