消えていく治療

2020年10月08日

漢方坂本コラム

雨になるとやってくるヤモリ1号。今年の梅雨あたりから家に住み着くようになりました。

「家守」と称されるこの縁起の良いトカゲは、何をするでもなくただ窓に張り付いています。見たらいて、見たら消えているという感じ。本人的には何かしているんだろうけどいったい何をしているのかは全くの不明。ただじっとしていて、突然消える。意図を感じさせないからこそ神秘的で美しいなと思い失敬してパシャリ。思いのほかアニエスベー感が強く出てしまいました。

当たり前にいて、当たり前に消えていくという感覚。私は結構大切だと思っています。漢方治療の話です。

毎日作るのに手間のかかる煎じ薬。はじめは大変だし億劫だと思うのですが、自然と当たり前になっている方が多い。慣れてくれば問題ありませんと言って下さいます。そして症状が改善する時もそう。知らない間に自然に消えていく。「そういえば、ない」という感覚で、無くなったことさえ気が付かなかったという方もいらっしゃいます。

当たり前に治療でき、当たり前に改善するという時、このような治り方をするものです。治療にある程度の覚悟は必要です。しかし気合はそれほど必要ないのではないかと私は思います。

もっと自然に、もっと当たり前に。薬が無くても大丈夫、先生がいなくても大丈夫となるように。色々説明したがる私には、まだまだたどり着けない領域です。自然と消えていけるような、そんな治療が望ましい。

ヤモリ1号はきっと分かっています。

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