漢方とアート 2 〜違う絵〜

2019年11月19日

漢方坂本コラム

ある患者さまがいたとします。

Aという治療者と、Bという治療者が別々にその患者さまを診たとします。

違う治療者が見たとしても患者さまが同じである以上は、

同じ診断、同じ治療が行われなければなりません。

つまり正解は1つに帰結する。これが西洋医学の理想像です。

この理想がちゃんと達成されれば、治療者が誰であっても、つまり地域どこに行っても、同じ質の医療を受けることができます。

そのためには診断方針や治療方針が正確に定まっていなければなりません。

これがすなわち各疾患の「ガイドライン」です。

疾患毎にこれがちゃんと定めされていることで初めて、治療者が誰であっても同じ医療を受けることができるようになるわけです。

一方で、東洋医学の場合。

ある患者さまがいたとします。

そしてAという治療者と、Bという治療者が別々にその患者さまを診たとします。

同じ患者さまであったとしても、Aという治療者は○○湯という薬を出し、Bという治療者は△△湯をという薬を出した。

つまり全然違う解答を出したとします。

ただし、これが必ずしも間違いではありません。

○○湯でも△△湯でも、同じように病が改善していくことがあるのです。

つまり解答が違ったとしても、両者ともに正解になり得る。これが東洋医学です。

言い換えてみます。

あるモデルさんがいたとします。

Aという絵描きと、Bという絵描きが別々にそのモデルの絵を描いたとします。

二人の絵描きは同じモデルを見て絵をかきました。しかし当然違う絵をかきます。

感性が違うからです。

Aは配色が鮮やかで前衛的、Bは淡い色合いで光輝く絵をかきました。

与える印象は全然違いますが、両方ともに素敵です。

そしてモデルさんはどちらの絵も好きになり、二人の絵を額に入れて飾りました。

「漢方は科学(サイエンス)というよりも芸術(アート)に近い」

良いとか悪いとかではありません。

ただ、これが東洋医学の特徴であることは確かです。



漢方とアート

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