漢方治療の心得 4 〜臨床の現実〜

2019年11月09日

漢方坂本コラム

座学を行っていた時と、臨床の場に立った時とでは、色々なものの見かた・考え方がかなり違ってきます。

師匠の言葉をかりれば「いくらイチローの言葉を読んで学習しても、バッターボックスに立たなければ分からない」。

まさにそれが現実だと痛感します。

腰痛には八味地黄丸(はちみじおうがん)を使います、こう書かれている本があります。

もっと詳しい本では「腎虚(じんきょ)」による腰痛では八味地黄丸を使います。こう書かれています。

さらに詳しい本では、高齢者の腰痛で骨の変形があり小便の出が悪く足腰に力が入らない場合は「腎虚」である、八味地黄丸を使う。と書かれています。

徐々に八味地黄丸の使い方が分かってきます。分かった気になります。

そして八味地黄丸を腰痛に使う。しかし、全く効かない。

これが臨床です。

八味地黄丸は良い薬です。ただしほとんどの腰痛には効果を発揮しにくいという臨床の現実がある。

例として八味地黄丸を上げましたが、こういう現実がそこら中に転がっているのが東洋医学です。

そこから目を背けず、何故だ、どうしてだと必死に解答を探し続ける作業、

それが臨床家の腕を磨き、臨床家の個性を作ります。



漢方治療の心得

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