難病に効く生薬

2021年03月15日

漢方坂本コラム

今日はちょっとだけ「生薬」のお話を。

中国に由来を持つ漢方薬は、なんだかんだと沢山の植物を薬として扱います。

しかも葉っぱ・茎・皮・花・根っこ・実・種に至るまで、様々な部位を使う。

部位によって薬効が変わったりもするのですよ。

面白いですよね。でもいったい、誰がどうやってその効き目を突き止めてきたのでしょう。本当に不思議です。

そんな中、何これ?と思うような生薬も沢山あります。

良く使われる「茯苓(ぶくりょう)」ですが、これ何かわかりますか?

いわゆる菌糸体ってやつなんですが、ようするに菌です。つまりキノコ。

しかも松の根っこに付いているやつ。

地中にあって外からは見えないわけで。よくもまあ、見つけましたねと。関心を通り越して唖然とします。松、掘り起こしたわけですから。

ただね、私が思うにです。

漢方の本当の凄さって、そういうことじゃあない気がするのです。

茯苓はそれほどでもないですが、生薬にはもっと見つけにくいもの、希少価値が高いものが沢山あります。

霊芝(れいし)とかカワラタケとか、冬虫夏草(とうちゅうかそう)とか。

しかしそれだから効果が高いというわけでは決してないのです。

希少価値や値段だけでは、全然判断できません。

むしろ、普通にある、ごく身近にある生薬にこそ、

その使い方によっては非常に効果的な薬能が備わっている。そんな所が本当の凄さだと、私は思うのです。

例えば「ショウガ」。

漢方では生姜(しょうきょう)とか乾姜(かんきょう)とか呼ばれたりするのですが、

非常に強力かつ効果的な薬になります。使い方を間違えなければ、です。

温める、という効き目が基本にはあるのですが、

でもそんなことだけじゃあない。ほてりを止めたり動悸を止めたり、時には痛みを止める要薬にもなります。

それに「シソ」。こいつもすごい。

然るべき使い方をすると、西洋薬に負けないくらいの即効性を発揮します。

昔から魚類の毒消しに使われていたのですが、

そんなことだけじゃあない。緊張を緩和させたり、興奮を落ち着けたり、時に向精神薬に負けないくらいの即効性を発揮したりもします。

ただやはり、使い方を間違えなければ、です。

つまりですね、漢方薬の凄さは、

使い方を突き詰めていった。そこにこそ、知恵の真髄があると思うのです。

漢方の聖典『傷寒論(しょうかんろん)』では、

当たり前に転がっているような生薬しか使っていません。

ショウガとかネギとか。ナツメとかシナモンとか。

後人に「貧乏人の医学」と揶揄されてしまうほどです。

でもだからこそ、本当の凄さがあると私は思うのです。

人は病気になると、特に難病におちいると、

普通の薬では無理だ、希少価値の高い薬が必要だと、思うものです。

でも違うのです。薬は希少価値ではないのです。

あくまで「使い方の妙」。

それが、思いもよらぬ効果を発揮するカラクリなのです。

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