霜月に想う

2022年11月02日

漢方坂本コラム

いよいよ11月。霜月。

早いもので、今年も残すところ、あと二か月になりました。

年末に向かって忙しくなるかたも多いのではないでしょうか。

風邪がちらほらと流行り出しています。うがい・手洗いを含めた風邪の養生を、この時期ぜひとも徹底していきましょう。

季節というものは不思議なもので、

つい3月前までは、夏真っ盛りだったのに、

今となってはその時のことを思い出すことが難しい。

こうやって寒い日が続くようになると、あの時の体感を思い出せなくなります。

例えば、寝室が暑くて寝苦しいあの感じ。

また、羽織を一枚脱ぎたくなるような、ジトっと汗ばむあの感じ。

今、思い出せますか? すでに温かい季節が恋しいと、そんな気分になっているのではないでしょうか。

人は自分の意思によって生きている、と感じています。

頭が体を支配している。

まるで、脳に体を統括するコックピットがあって、

そこから指令を出して生きているように感じています。

しかし、人はもっとからだ全体で生きている。

意思とは関係なく、むしろ意思とは別の所で、

外界からの体の変化が、脳や気持ちをコントロールしています。

脳が体を支配しているというよりは、

体が脳を、感情を、コントロールしているように、私は感じるのです。

夏には夏の気分があり、冬には冬の気分がある。

季節が変わり体の働きが変わると、自然と気持ちも変わってくるものです。

大切なのは、

気のせいではなく、それが当然だと実感することなのではないかと。

その気付きが、東洋医学ではとても大切だと感じます。

東洋医学的に人を知るとは、

当たり前過ぎて誰もが気にしないことを、ちゃんと気づくことだと思います。

雲ひとつ無い空を見上げた時に、胸に感じる軽さ。

温かい湯船に浸かった時に、自然ともれるため息。

たとえ些細なことであってとしても、そういう一つ一つの現象を、

大切にしながら、気が付くこと。

それこそが、東洋医学の醍醐味だと思うのです。

夏には感じられない感情がある。

冬にはそれがある。

だからこそ、私たちは季節を楽しめるのではないでしょうか。

寒くなると自然と変化してくる心の機微。

きっと自分だけではなく、みんなが共通して感じている心の機微です。

私達は、天候や外気、気圧や重力といった、

巨大な虚空に包まれて生きています。

そしてみんなが同じようにそれを感じ、それに支配されて生きている。

立って力を抜いて、重力を感じてみてください。

私たちはみんな、地球とつながっています。

空気を吸って吐き、物を食べて排泄し、地に引きつけられながら立ってる私たち。

ただ生きているだけで、みんなつながっているのだと。

そういう気づきがとても大切なのだと、私は感じます。



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