漢方坂本コラム

漢方治療の心得 33 ~臨床のセンス~

東洋医学を勉強している時に、最初にぶつかる壁は「言葉」だと思います。陰陽や表裏といった、東洋医学独特の言葉は、考え方を構成する大切な要素であると同時に、大変曖昧な概念です。今回は東洋医学の言葉を理解するためにはどうしたら良いのかを、私の考えではありますが、少しお話ししていきたいと思います。

体調悪化の大波

頭痛にめまい、動悸や息苦しさ、ほてりや皮膚症状、身体のだるさに至るまで、天候の不安定さは、さまざまな症状を急激に悪化させます。そこに「気持ちの乱れ」を強く介在させるという今の状況。今回の乱れは、単に五月病と片付けてしまうことができない、もっと強力なものに感じます。

【漢方処方解説】桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

瘀血(おけつ)の名方、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)。以前紹介した当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)と並び、婦人の聖薬として頻用され、「瘀血」と呼ばれる血行障害を改善する目的で使用されています。桂枝茯苓丸が改善する血流があるのだとしたら、それは明らかに骨盤内の組織・臓器です。

自分の体を知りたい

漢方治療において、最も治療の難しい人間は「自分」です。漢方家は大抵、自分で漢方薬を服用していますが、人のことは分かっても、自分のことは分かりにくいというのは漢方家のあるあるです。自分への客観的視点を持つことを、かなりシビアにやらなければ、「自分」とはいったいどんな人間なのかを、東洋医学的に把握することが出来ません。

〇漢方治療の実際 ~治療における漢方家の頭の中身~

漢方には気や血や陰や陽など、独自の尺度があります。しかし実際には、これらの尺度は大切ではありますが、その尺度で患者さまを診ているわけではありません。尺度はあっても全てが曖昧、客観的に表すことの出来るものではないからです。漢方家は、以前経験したことのある生きた知識、現実的な着想を常に思い浮かべながら治療しているのです。

何百年も継承され続けた医学である所以

数多ある漢方処方、そのうち3つ以上の生薬で構成されたものの中で、最も基本となる処方を3つ挙げろと言われれば、何か。桂枝湯と四逆湯、そして麻黄湯。桂枝湯と四逆湯が、一本の軸を作る。そして麻黄湯が分岐を作る。漢方処方には例えばこういう繋がりがあって、幹から派生する枝のように、そこから無限の広がりを作り上げていきます。

□晩春の風邪 〜用意しておきたい漢方薬とその使い方〜

厳しい寒暖差・気圧差が続いた4月。今年は風邪をひく患者さまが多かった印象です。今回は、麦門冬湯(ばくもんどうとう)、五虎湯(ごことう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)、藿香正気散(かっこうしょうきさん)など、咽風邪を引いてしまった時に試して欲しい薬をいくつか紹介したいと思います。

漢方治療の経験談「自律神経失調症治療」を通して 2

自律神経失調と聞くと、あたかも精神や心を乱している病を想像しますが、実際には違います。自律神経失調は、脳や心の病気ではなく、体にある神経の乱れを指しています。脳と体とは、これらの神経を介して繋がっているので当然切り離すことはできませんが、体の乱れが基にあることで、それが心に影響を及ぼしているという状態を指しています。

晩春に入る気合い

一日のうちで、寒暖差が極端に大きくなる現在、冬よりも冷える、ということがしばしば起こります。日中の気温がどんどん高まることで、夜間との温度差が大きく開いている現在、胃腸を冷やしてしまう方、血流が悪くなる方、そして自律神経を乱す方が多くなります。毎年桜が散ると、安定する方が多いのですが、今年は逆のような気がしています。

休日の朝

食事・運動・睡眠の養生を患者さまにお願いし、みなさん実際にこれを変えようと努力してくれています。本当に凄いことだなと尊敬します。簡単なことではありません。一日の限られた時間の中で、努力を積み重ねることの難しさを今自分自身がしみじみと実感しています。