自分の体を知りたい 漢方治療において、最も治療の難しい人間は「自分」です。漢方家は大抵、自分で漢方薬を服用していますが、人のことは分かっても、自分のことは分かりにくいというのは漢方家のあるあるです。自分への客観的視点を持つことを、かなりシビアにやらなければ、「自分」とはいったいどんな人間なのかを、東洋医学的に把握することが出来ません。 2023年05月18日
何百年も継承され続けた医学である所以 数多ある漢方処方、そのうち3つ以上の生薬で構成されたものの中で、最も基本となる処方を3つ挙げろと言われれば、何か。桂枝湯と四逆湯、そして麻黄湯。桂枝湯と四逆湯が、一本の軸を作る。そして麻黄湯が分岐を作る。漢方処方には例えばこういう繋がりがあって、幹から派生する枝のように、そこから無限の広がりを作り上げていきます。 2023年05月08日
□晩春の風邪 〜用意しておきたい漢方薬とその使い方〜 厳しい寒暖差・気圧差が続いた4月。今年は風邪をひく患者さまが多かった印象です。今回は、麦門冬湯(ばくもんどうとう)、五虎湯(ごことう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)、藿香正気散(かっこうしょうきさん)など、咽風邪を引いてしまった時に試して欲しい薬をいくつか紹介したいと思います。 2023年05月01日
漢方治療の経験談「自律神経失調症治療」を通して 2 自律神経失調と聞くと、あたかも精神や心を乱している病を想像しますが、実際には違います。自律神経失調は、脳や心の病気ではなく、体にある神経の乱れを指しています。脳と体とは、これらの神経を介して繋がっているので当然切り離すことはできませんが、体の乱れが基にあることで、それが心に影響を及ぼしているという状態を指しています。 2023年04月25日
晩春に入る気合い 一日のうちで、寒暖差が極端に大きくなる現在、冬よりも冷える、ということがしばしば起こります。日中の気温がどんどん高まることで、夜間との温度差が大きく開いている現在、胃腸を冷やしてしまう方、血流が悪くなる方、そして自律神経を乱す方が多くなります。毎年桜が散ると、安定する方が多いのですが、今年は逆のような気がしています。 2023年04月14日
処方の先に見えるもの どんな患者さまでも、たとえ本人が病と闘う気持ちを失っていたとしても、治ろうとしていない体などありません。薬は、その治ろうとしている体が、欲しているものを、救わんと欲することを、ただ形にするだけ。漢方家にとっての薬は、患者さまに伝えるべき言葉、そのものです。 2023年04月05日
漢方治療の経験談「不眠症・睡眠障害治療」を通して 眠りは日中の運動、適切な食生活など、からだ全ての活動が順調に関連した結果として起こります。漢方ではこの関連に着目します。従って、例えば不眠治療で有名な酸棗仁湯(さんそうにんとう)や温胆湯(うんたんとう)、抑肝散(よくかんさん)などを無作為に飲んだところで、眠れるようにはならないというのが臨床の現実です。 2023年03月24日
悟りの実験 新しい知識を入れる一方で、本当に大切な知識を見失うことがあります。患者さまから多くの情報を得れば得るほど、情報の波にのまれてしまうことがあります。本当に大切な「当たり前のこと」を、患者さまと共にで見つけていくことが、上手な漢方治療を導く最大のコツだと、私は感じます。 2023年03月17日
漢方治療の経験談「陰部湿疹・陰部掻痒症治療」を通して 私の経験上、「陰部湿疹」や「陰部掻痒症」は漢方治療によって改善可能な病です。薬方選択においては、皮膚病治療の大枠を捉えておく必要があり、さらに陰部に起こるという特殊性を鑑みることが重要です。単に「十味敗毒湯」や「黄連解毒湯」、「竜胆瀉肝湯」や「加味逍遙散』などの処方のみでは効果を表しません。 2023年02月08日
睦月(むつき)の嵐 低気圧が引き金になって起こりやすい症状には、胃のもたれや胃痛、食欲の低下や吐き気のほか、頭痛や耳鳴り、動悸や息苦しさ、不眠や疲労倦怠感・体のだるさなどが挙げられます。『傷寒論』を基本とした病治の原則に加えて、さらに考察の余地がある新たな「傷寒」。近年、そういう難しい状況を今、迎えていることを実感します。 2023年01月31日