漢方のメモ書き

五運六気

健康とは、地球環境・自然との同調により成し得るものだと考えることができます。東洋医学でいう陰陽とは、元をたどればおそらくそういうことです。自らの陰陽を自然界の陰陽に同調させるという考え方。とどのつまり、自らの小さく不安定なバランスを、より雄大で安定した存在が放つバランスに同調させなさいという教えなのです。

想像を続ける理由

漢方において、その創作者の意図を理解せずに薬を使うということは、何か知らないけどこうやって使えって書いてあるから使いました、ということ。歴史を知る人、紐解く努力をしている人とそうでない人とでは、処方の使い方、すなわち治療方法が全く違ってきます。ただし、今回、私が本当に言いたいことはここから先にあります。

補と瀉

私はある時から漢方薬を使う際に、「補瀉」を考えなくなりました。「補法」と「瀉法」は漢方の基本中の基本でして、補瀉を考えてないなんて言えば、それこそ漢方の名医たちに怒られてしまいそうです。でもそうではなくて。虚実は知る必要があります。しかしそれを見極めたとしても、補瀉では治療を考えないということです。

東洋医学の科学化

東洋医学は「正しい想像性」により作られた医学です。科学を知らないからこそ、発揮できたとてつもない発想。情報が増えた私たちだからこそ、想像し得ないアイデア。そういう「想像性」こそが漢方の核心。だから私は、もし漢方の科学化を試みるのであれば、この想像性を理解し、想像力に敬意を払う人たちにこそ、行ってほしいのです。

暮れとピカソとカルテ整理

身になる・腑に落ちる。漢方治療においてはこの感覚が、私はとても大切だと思っています。見て、聞いて、話して、試し、理解する。そういう「経験」を積み重ねる中で、なるほどなと、自身が深く、理解することが「実感」です。実感の無い理解は、ただ知っているだけに過ぎず、その知識は往々として、あまり臨床の役にはたちません。

知識を欲する全ての方へ

医学の中でも正しさを求めることが特に難しい漢方の世界。なるべく率直に、ありのままに。私が知り得た情報や漢方の世界観をそのまま表現した辞書。そうやって作ったのが、このHPです。患者さまや学生さん、医療関係者の方々など、漢方にご興味のある全ての方に、見てもらえる情報源を作るというのが、このHPの本来の目的です。

何百年も継承され続けた医学である所以

数多ある漢方処方、そのうち3つ以上の生薬で構成されたものの中で、最も基本となる処方を3つ挙げろと言われれば、何か。桂枝湯と四逆湯、そして麻黄湯。桂枝湯と四逆湯が、一本の軸を作る。そして麻黄湯が分岐を作る。漢方処方には例えばこういう繋がりがあって、幹から派生する枝のように、そこから無限の広がりを作り上げていきます。

処方の先に見えるもの

どんな患者さまでも、たとえ本人が病と闘う気持ちを失っていたとしても、治ろうとしていない体などありません。薬は、その治ろうとしている体が、欲しているものを、救わんと欲することを、ただ形にするだけ。漢方家にとっての薬は、患者さまに伝えるべき言葉、そのものです。

悟りの実験

新しい知識を入れる一方で、本当に大切な知識を見失うことがあります。患者さまから多くの情報を得れば得るほど、情報の波にのまれてしまうことがあります。本当に大切な「当たり前のこと」を、患者さまと共にで見つけていくことが、上手な漢方治療を導く最大のコツだと、私は感じます。

真冬のひとり言

どんなに優れた漢方家でも、最初の処方だけで改善するとは思っていません。もちろん改善するための最適解たる処方を出すのですが、名医であればあるほど、その薬が効かなかった時のことを、常に考え続けています。そして二診目の時点で、その処方を変えるのか、変えないのか。治療は道のりである、ということです。