冷え症(冷え性)

冷え症(冷え性)について

冷え症(冷え性)とは

身体に冷えを感じること自体は誰でも起こることです。しかしその程度が強く、かつ温めようとしてもなかなか温まらいという状態は、一般的に冷えやすい体質という意味で「冷え性」と呼ばれています。このような冷えは膠原病や甲状腺機能低下症、また低血圧症や貧血などの病が原因となって起こることがありますので、その場合では各々の病に対して適切な治療を行う必要があります。しかし冷え性の多くは検査を受けても明らかな異常が見つけれないことが多いのもです。そのようなケースでは西洋医学的治療では対応が難しいという現実があります。

一方、冷えを一つの病として見るという意味で、冷え性は「冷え症」と呼ばれることもあります。東洋医学においては古くから「冷え」を一つの病源として捉えてきました。中国宋代に編纂された書物『太平恵民和剤局方(たいへいけいみんわざいきょくほう)』には「痼冷(これい)」という項目があり、寒冷刺激を受けたことで起こる痛みや胃痛・下痢・疲労衰弱などに対する治療方法がすでに述べられています。また東洋医学では寒冷刺激を百病の源として捉える思想があります。いかに身体の温め、体温を維持し、寒冷刺激による影響を退けて冷えから体を守るか。永い歴史の中でその手法についての試行錯誤が繰り返されてきました。

冷えと漢方

実際に漢方治療を行うと、冷えが明らかに改善されてくるということがしばしば起こります。服用した途端に体が温まり、手足がポカポカになるということも少なくありません。ただし冷え症に良いとされる漢方薬なら何でも良いかというと、決してそうではありません。冷え症の原因は人それぞれの体質的傾向に根差している部分が大きいため、個々の状態を見極める必要があります。冷える部位やその冷え方、冷えの程度や付随する症状、さらにおからだ全体の状態などを詳しく伺い、その上で個々に合った漢方薬を服用しなければ体は温まりません。

冷えに伴う症状と適応方剤
漢方薬を選択する上では様々な要素を勘案する必要がありますが、特にどこが冷えるのかによって大きく使うべき処方が変化してきます。また冷え症は単に冷えるというだけでなく、その他の不快な症状を多くの場合で伴います。そしてこれらの随伴症状によっても漢方処方の選択が変化してきます。以下にその大まかな分類と適応しやすい処方とをご説明します。

〇手足が冷える
冷え症において基本となる症状です。ただし手足の冷えといっても手だけが冷える方、足だけが冷えて上半身はほてる方、指先が冷える方、指先だけでなく手首・足首や腕・足全体が冷える方など、その冷え方や程度は人によって様々です。また手足が冷える方では、手足のみならずその他の部位にも寒冷刺激を受けやすい傾向があります。そのため多くの随伴症状が伴いやすく、それらの状況によって適応処方が異なってきます。ここでは手足が冷えるという場合に伴いやすい症状と、総じて使われやすい処方とを以下にあげておきます。各々の詳しい解説は下記の「使用されやすい漢方処方」をご参照ください。

【随伴症状】
頭痛・月経痛・しびれ・麻痺・凍瘡(しもやけ)・足のつり(こむらがえり)・のぼせ など

【適応処方:例】
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
・温経湯(うんけいとう)
・五積散(ごしゃくさん)
・桂枝加苓朮附子(けいしかりょうじゅつぶとう)

〇首回り・胸が冷える
あまり聞いたことがないかも知れませんが、首回りや胸元が冷えるという方もかなりおられます。夏でも冷えた風が首に当たるのが嫌でスカーフが手放せない、夜寝るときは首回りまで布団をかけないと寒くて眠れない、このような方ではそれが日常になっておられるため、ご自身の口からはあまり訴えられません。しかしこれらの症状は適切な漢方薬を選択する上での重要な鑑別点になります。特に喘息持ちの方や、女性・ご高齢者の方で多い印象です。漢方でいう所の「肺中冷(はいちゅうれい)」という症状に属し、肺を温めることで上半身全体をポカポカと温め、随伴症状を緩和させていきます。

【随伴症状】
喘息・咳・息苦しさ・鼻水・鼻づまり・後鼻漏・花粉症・多尿・頻尿・夜間尿 など

【適応処方:例】
・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
・苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)
・甘草乾姜湯(かんぞうかんきょうとう)

〇お腹が冷える
冷たいものを食べると下痢をする、夏場にクーラーで体を冷やすと胃痛や腹痛を起こす、このような症状にお困りの方は多いと思います。お腹が冷えやすいという方は、そのような体質を持たれている方がほとんどです。つまり以前からずっとそのような傾向を抱えながら生活されているという方が散見されます。こういったお腹が冷えやすいという症状は、漢方治療によって比較的早期に改善できる可能性があります。漢方薬をもって腹中をあたためることで、冷えやすい体質を包括して治療していきます。

お腹は体の中心に位置していますので、腹中が冷えれば同時に手足の冷えを伴いそうなものですが、必ずしもそうではありません。お腹は冷えるが手足は温かいという現象は良くあることで、手のひらをお腹に中てると温かくて気持ち良いと感じられる方もいます。腹中の冷えと伴に手足が冷えるかどうかというのは、実は適切な漢方処方を選択する上で非常に重要な鑑別点になります。お腹と手足が同時に冷えるという方は、次項「全身が冷える」もご参照ください。

【随伴症状】
胃痛・吐き気・腹痛・下痢・お腹の張り・便秘・喘息・多尿・頻尿・夜間尿 など

【適応処方:例】
・人参湯(にんじんとう)理中湯(りちゅうとう)
・小建中湯(しょうけんちゅうとう)
・大建中湯(だいけんちゅうとう)
・中建中湯(ちゅうけんちゅうとう)
・建理湯(けんりとう)

〇全身が冷える
手足だけでなく、背中や首・胸・お腹といった体幹までしんしんと冷えるているという状態です。一般的には冷え症の中でも程度の重いものに分類されます。夏でも重ね着をしないと生活できない、冷たいものは一切口にできない、こういった寒さに対する強い拒絶感を感じるケースさえあります。東洋医学ではこのような冷えを「忌寒(いかん:寒さを忌む症状)」と呼び、通常の冷え症とはっきりと区別して治療を行う必要があります。

身体の新陳代謝が低下している状態に属していますので、冷えのみならず多くの症状が伴います。身体に力か入らずすぐに横になりたくなるような疲労倦怠感や、食欲がなく沢山たべることができず、食べるとすぐ胃もたれや下痢が起こるといった胃腸症状などが頻発します。また体だけでなく精神的にも不安定になり、不眠や不安感、やる気が起きないなどの症状を伴いやすい傾向があります。身体の根本的な活力を高める治療が必要ですので、漢方治療を行う際も専門の医療機関におかかりになるべきです。一般的に使用されている漢方処方だけでは対応しきれないケースが多いからです。

【随伴症状】
疲労感・体を動かすことが辛い・気力がわかない・食欲不振・下痢・便秘・不眠・不安感 など

【適応処方:例】
・真武湯(しんぶとう)
・附子湯(ぶしとう)
・四逆湯(しぎゃくとう)

参考症例

まずは「冷え症(冷え性)」に対する漢方治療の実例をご紹介いたします。以下の症例は当薬局にて実際に経験させて頂いたものです。本項の解説と合わせてお読み頂くと、漢方治療がさらにイメージしやすくなると思います。

症例|体の冷えのため、妊娠のしにくさを感じられていた38歳女性

ご友人の紹介にてご来局頂いた患者さま。一年前にご結婚され、それを機に手足の冷えが気になるようになられました。そろそろお子さまが欲しいと思われていた折、冷え性のために妊娠しにくい体質なのではないかと危惧されていました。問診の結果明らかになった改善するべきポイント、妊娠しやすい体作りのために取り除ければいけない冷えの部位。体質改善を目的とした冷え症治療の実際を、具体的な症例よりご紹介いたします。

■症例:冷え症(冷え性)・不妊症

症例|夏場に体を冷やし下痢が続いていた46歳女性

夏場にクーラーにて体を冷やし、浮腫みと下痢が続いていた患者さま。良く受けるご相談であり、分かりやすい病態だと感じました。しかし、その分かりやすさにこそ落とし穴がありました。治療者が見極めなければならない重要症候とは何なのか。漢方治療の難しさとその現実を、具体例をもってご紹介いたします。

■症例:冷え性・下痢

症例|頭痛とめまいのため朝起きられない冷え性の女の子

起立性調節障害と診断され、朝の頭痛とめまいに悩まされていた中学2年生の女の子。明らかな「寒証」であるにも関わらず、夜間にかけて口の中が熱くなるという「熱証」を併発させていました。寒・熱では論じられない冷え性。解決へと導くその考え方。冷え=寒証を否定する一つの現実として、具体例をもって紹介いたします。

■症例:頭痛・めまい・冷え性

参考コラム

次に「冷え性」に対する漢方治療を解説するにあたって、参考にしていただきたいコラムをご紹介いたします。参考症例同様に、本項の解説と合わせてお読み頂くと、漢方治療がさらにイメージしやすくなると思います。

コラム|◆漢方治療概略:「冷え性」

冷え性に使われる漢方薬にはたくさんの種類があります。ドラッグストアなどで選ぼうを思っても、「どれを試したら良いのか分からない」という声をしばしば拝聴します。そこで、そのような方々に参考にしていただけるよう、漢方治療の概略がいりゃく(細部をはぶいたおおよそのあらまし)を解説していきたいと思います。

◆漢方治療概略:「冷え性」・前編
◆漢方治療概略:「冷え性」・後編

コラム|【漢方処方解説】当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当芍美人(とうしゃくびじん)という言葉を知っていますか。当帰芍薬散が適応となる方は、ある種の美人であることが多いと言われています。しかし、か細い日本美人という要素を追いかけてこの薬を使うと、大失敗することがあります。漢方では嘘ではありませんが、正しくもないという情報がたくさんあるのです。今回は有名処方・当帰芍薬散について、少々深く掘り下げて解説していきたいと思います。

【漢方処方解説】当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

使用されやすい漢方処方

①当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)
②桂枝加朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
③五積散(ごしゃくさん)
④当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
⑤温経湯(うんけいとう)
⑥芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
⑦当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
⑧苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
⑨呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
⑩人参湯(にんじんとう)
⑪大建中湯(だいけんちゅうとう)
⑫真武湯(しんぶとう)
※薬局製剤以外の処方も含む

①当帰四逆加呉茱萸生姜湯・当帰四逆湯(傷寒論)

冷え症治療の代表方剤。末端冷え性に用いられる機会が多い。その実は桂枝湯を内包し、血を復して血流を促し、冷えに対する身体の過緊張状態を緩和させる薬方である。出典の『傷寒論』ではその適応を「手足厥寒(てあしけつかん)」と示している。血が逆流するような手足の寒(こご)えのみならず、月経痛・腹痛・腰痛・坐骨神経痛などの痛み治療にも応用される。すなわち下半身を伝って寒気が体幹に内攻する者に適応する。呉茱萸・生姜を除いたものを当帰四逆湯というが、これも冷え症治療剤として有効である。ただし内攻する気配のある者は呉茱萸・生姜が必要。両者には明確な使い分けがある。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯:「構成」
当帰(とうき):桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):細辛(さいしん):木通(もくつう):生姜(しょうきょう):呉茱萸(ごしゅゆ):

当帰四逆湯:「構成」
当帰(とうき):桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):細辛(さいしん):木通(もくつう):

②桂枝加苓朮附湯(方機)

江戸時代の名医・吉益東洞によって作られた処方。傷寒論中の桂枝加附子湯に茯苓・白朮の利水燥湿薬を加えたもの。血行を促し寒気を去る薬能を持つ。坐骨神経痛やリウマチなどの疼痛性疾患に運用されることが多い本方は、手足を温める方剤としても有名である。ただし類方に桂枝附子湯や甘草附子湯などがあるため、これらの処方との鑑別を必要とする。気圧や湿気など気候の影響をうける場合は桂枝附子湯や甘草附子湯が主として対応しやすい。一方で本方は身体羸痩(るいそう)の状あり、虚を呈して筋脈に弱りあるものを主とする。これらの方剤の違いは生薬一味二味ではあるが、効果を発揮するためには決し無視はできない。
桂枝加苓朮附湯:「構成」
桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):生姜(しょうきょう):茯苓(ぶくりょう):蒼朮(そうじゅつ):附子(ぶし):

③五積散(太平恵民和剤局方)

もと風邪薬として運用された本方は、「寒湿(かんしつ)」を去る薬方として広く応用される。「寒湿」とは冷えて水分代謝を停滞させることで出現する病態を指す。外に寒湿があれば手足の痛みやしびれを生じ、内(胃腸)に寒湿があれば胃痛・腹痛・吐き気・下痢などを引き起こす。本方は内外の寒湿を同治するというところに主眼がある。全方位に対して薬能を発揮するため使い勝手の良い処方だといえる。ただし運用にあたっては加減が必要。手足の冷えに対しては桂枝加苓朮附湯や苓姜朮甘湯などを合方する。腹の冷えに対しては人参湯を合方する。本処方はあくまでベースとなる故に、加減をもって様々な配慮を行うことが必須。加減に関しては曲直瀬道三の『衆方規矩』に詳しい。
五積散:「構成」
蒼朮(そうじゅつ):陳皮(ちんぴ):茯苓(ぶくりょう):白朮(びゃくじゅつ):半夏(はんげ):当帰(とうき):厚朴(こうぼく):芍薬(しゃくやく):川芎(せんきゅう):白芷(びゃくし):枳殻(きこく):桔梗(ききょう):乾姜(かんきょう):桂枝(けいし):麻黄(まおう):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):

④当帰芍薬散(金匱要略)

本来は妊娠中の腹痛に用いる処方。今日では婦人科領域全般に用いられる名方である。冷え性で浮腫みやすく、色白で貧血傾向のある者に広く用いられるようになった。これは本方の適応者を示す有名な解説であるが、実際には付け加えなければいけない点が多い。
まず本方の特徴は当帰・川芎という薬対で血行を促すという点にあるが、色白の人で当帰・川芎を使うと顔がのぼせて頭痛などを起こす者がいる。芍薬を増量するか、苓桂朮甘湯などの桂枝・甘草剤を合方する必要がある。またここでいう貧血とは一種の仮性貧血のような状態である。血色素が減少していたり食欲無く栄養状態が悪いために起こっている真の貧血ではない。本方でいうところの貧血傾向とは、血管の緊張度が強く、末端に血液が行き届いていないような状態を指している。真に貧血の傾向があり、消化吸収の力も弱いというような者に本方を用いると、胃もたれを起こしたり、返って具合を悪くさせることもある。本方には体形が細く色白で貧血という比較的体の弱い人に使うイメージがあるが、適応の本質はそこではなく、虚が明らかな者に使用するべきではない。華岡青洲は呉茱萸を加えて用いていた。
当帰芍薬散:「構成」
当帰(とうき)・川芎(せんきゅう):芍薬(しゃくやく):茯苓(ぶくりょう):蒼朮(そうじゅつ):沢瀉(たくしゃ):

⑤温経湯(金匱要略)

当帰芍薬散と同じく、婦人科領域に広く応用される名方。身体の血行を促す薬能を持つことから、冷え症に応用される機会も多い。本来はその名の通り、下腹部の経脈を温める方剤。浅田宗伯はその運用の目標を「胞門(ほうもん:子宮部)虚寒」と提示している。下腹部を温めるという点では当帰芍薬散に近い。ただし彼方は茯苓・蒼朮・沢瀉などの利水薬をもって浮腫みを取る薬能を持ち、本方は人参・甘草・麦門冬・阿膠などの滋潤薬を内包し「血燥」ともいえる乾燥状態に潤いを持たせる薬能を持つ。口唇乾燥し、夜間に手足煩熱し、皮膚乾燥して荒れやすく、上半身のぼせるも腰から下は冷え、月経前に下腹部が張ってガス腹になる者。冷えのぼせの体質を持つ方の無月経や月経前緊張症、不妊症などに広く応用される。月経血に血塊が混ざるようなら桂枝茯苓丸を合方し、それでも血が快く下らない者は桃核承気湯を合方する。その他下痢傾向が強い者は茯苓・白朮を、月経前のイライラが強いものには柴胡をといった加減が行われる。
温経湯:「構成」
当帰(とうき):川芎(せんきゅう):桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):人参(にんじん):麦門冬(ばくもんどう):阿膠(あきょう):半夏(はんげ):生姜(しょうきょう):呉茱萸(ごしゅゆ):牡丹皮(ぼたんぴ):

⑥芎帰調血飲第一加減(漢方一貫堂医学)

産後におこる骨盤内の充血を去る芎帰調血飲に、血行循環を改善する駆瘀血薬を配合したのが本方である。骨盤内臓器の充血を去る目的で冷え性や月経痛・腰痛など、産後に関わらず広く応用される。平素より下半身が冷え、膀胱炎や痔を患いやすく、時として気持ちを病み不安定になりやすい者。多種類の生薬にて構成される処方ではあるが、その基本骨格を理解すれば様々な疾患に応用することができる。
芎帰調血飲第一加減:「構成」
当帰(とうき):芍薬(しゃくやく):地黄(じおう):川芎(せんきゅう):白朮(びゃくじゅつ):茯苓(ぶくりょう):陳皮(ちんぴ):烏薬(うやく):香附子(こうぶし):益母草(やくもそう):延胡索(えんごさく):牡丹皮(ぼたんぴ):桃仁(とうにん):紅花(こうか):桂枝(けいし):牛膝(ごしつ):枳殻(きこく):木香(もっこう):大棗(たいそう):乾姜(かんきょう):甘草(かんぞう):

⑦当帰建中湯(金匱要略)

腹中の緊張を去り疲労を回復する小建中湯に当帰を加えたもの。本来は産後の疲労状態に伴う腹痛に用いられる処方である。ただし本方の主眼は、血を充実させ血行を促すという点にある。したがって冷え性にて虚を呈する方に用いる機会が多い。ちなみに本方は手足のひらが火照るという者にも用いる機会がある。冷えとほてりは血行障害という点では同一であり、寒冷刺激をうけると手足がしんしんと冷えるが、夜間床につくとかえって足が火照ってくるということは臨床的によくあることである。身体の血行状態がある流れをもって悪化している病態であり、古人はこれを「血痺虚労(けっぴきょろう)」と呼んだ。
当帰建中湯:「構成」
桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):生姜(しょうきょう):大棗(たいそう):当帰(とうき):

⑧苓姜朮甘湯(金匱要略)

本方は腰回りや下半身の冷えを温める処方。出典の『金匱要略』には、まるで水の中に漬かっているようだと感じられる者に適応するとある。腰回りに付着した寒湿を去ることで血行を促す薬方。そのため排尿異常などを改善する際にも応用されることが多い。腰から足にかけて重だるく、冷えを感じ、冷えると如実に尿が近くなるという者。本方の骨格は「甘草乾姜湯(かんぞうかんきょうとう:甘草と乾姜との二味からなる方剤)」であり、この薬対を持つ処方は総じて体内の冷えを去り、水の巡りを正す薬能を持つ。
苓姜朮甘湯:「構成」
茯苓(ぶくりょう):乾姜(かんきょう):蒼朮(そうじゅつ):甘草(かんぞう):

⑨呉茱萸湯(寿世保元)

片頭痛治療薬として有名な本方は、頭痛の他にも胃痛や月経痛に運用され、迅速な鎮痛効果を発揮する名方である。その薬能の本質は加速的に身体を温める効能にあり、急激に発生した血行障害に対して、身体が過剰な緊張・興奮状態を発動する病態に著効する。平素から身体の強い冷えを訴える傾向があり、特に足首が日常的に冷えるという者が多い。激烈な痛みと同時に吐き気をもよおす者。痛みとともに下痢をする者もいる。冷えの根本は消化管にあることが多い。急激に発動する痛みの波を早期に終息させるような鎮痛効果を持つため、痛みが発生する前から服用していた方が効きが良い。
呉茱萸湯:「構成」
呉茱萸(ごしゅゆ):大棗(たいそう):人参(にんじん):ひね生姜:

⑩人参湯(傷寒論)

腹中の冷えを温める主方。冷たいものの過食や冷たい外気に当たることによって、腹が冷えて痛み、あるいは下痢する者に用いる。平素から体力無く胃腸を冷やし易い方に用いることで、冷えやすい体質自体を改善していく方剤である。その一方で、体力のある丈夫な方でも、一時的に腹を冷やして腹痛・下痢することはある。本方はその場合の頓服薬としても用いる。虚実両者に使用できる二面性を持つ。
人参湯:「構成」
人参(にんじん):甘草(かんぞう):乾姜(かんきょう):白朮(びゃくじゅつ):

⑪大建中湯(金匱要略)

腸管を温め、その活動を是正する薬として有名。浅田宗伯の口訣に「寒気の腹痛を治するに此方にしくはなし」とあるように、腹中に固執した冷えが有りそのために腸が過敏となって便秘を起こすという者によい。目標は腹満。ガスが溜まって腹が張り、ガスが出ると一時的に腹が楽になるという者。小建中湯と合わせた「中建中湯」は昭和の大家、大塚敬節先生の創方。用いやすい処方である。同じく腹中を温める人参湯とは明確な使い分けがある。人参湯は下痢に適応し、消化管の水分代謝を促して胃気を鼓舞する薬能を持つ。一方で大建中湯は腹満・便秘に適応し、消化管の血行を迅速に促すことで胃気を下方に導く薬能を持つ。
大建中湯:「構成」
人参(にんじん):山椒(さんしょう):乾姜(かんきょう):膠飴(こうい):

⑫真武湯(傷寒論)

身体の新陳代謝が衰え、熱を産生しにくい状態に陥った病態を「陰証(いんしょう)」と呼ぶ。本方は「陰証」に用いられる代表方剤。代謝の衰えを回復すると伴に、気力を鼓舞し身体の熱産生を高める効能を持つ。「陰証」では巡るべきものを巡らすための根本的な力が弱まる。本方は特に水分の滞りを是正する薬能に優れ、胃腸であれば下痢、肺であれば喘息、四肢であれば浮腫みといった水の滞留を解除する際に用いられやすい。平素から強力な冷えを呈し、食欲が細く下痢する傾向があり、四肢が浮腫み、体が重く疲れやすいという者に良い。ただし「陰証」には程度がある。本方をもって改善できない「陰証」も当然あり、その場合にはさらに代謝の落ちた方に適応する方剤をもって対応する必要がある。
真武湯:「構成」
茯苓(ぶくりょう):芍薬(しゃくやく):蒼朮(そうじゅつ):生姜(しょうきょう):附子(ぶし):

臨床の実際

なぜ冷えに漢方治療が有効なのか

冷え症に漢方薬が良いという文言は、ネットや本などのいたる所で散見するところです。確かに漢方薬を服用していると、身体が温まって冷えを感じにくくなるということが良く起こります。ではなぜ漢方薬は冷えを改善することが出来るのでしょうか。「血」を補うとか、「気」の巡りを良くする、また「陽気」を回復するなどと解説がされているものが多いと思います。しかし、実際に「気」とは何か、「陽」とは何かということについてはあまり述べられていません。これらは漢方治療においてとても重要な概念ですが、いざ解説となるとややぼやけた印象になってしまいます。そこで、ここではこれらの言葉はなるべく使わず、実際の臨床経験から得た解釈をもって説明していきたいと思います。

東洋医学から見た冷えの原因 ~冷えと血行障害~

なぜ漢方薬が冷え症に有効なのか、それを説明するためには先ず冷えの原因についてお話する必要があります。通常、東洋医学ではその原因を大きく「外因(がいいん:体を冷えさせる外からの刺激)」と「内因(ないいん:冷えやすい体の状態)」とに分けて説明することが一般的です。これらに関しては多く解説されている所ですので、ここではより臨床的な側面から説明していきます。

一般的に言われる冷え性という現象は、総じて言えば「血行障害」によるものです。血液は栄養と熱とを身体の隅々にまで運ぶ働きがあります。そのため何らかの原因により血液が行き届かなくなると、その部位は熱が運ばれなくなることで冷えてきます。

では血行障害はなぜ起こってしまうのでしょうか。それには実に様々な原因があります。ただし方剤選択にとって重要という視点で見ると、これらの原因は2つに絞ることができます。「筋肉」の問題によって起こる血行障害と、「緊張」によって起こる血行障害です。この2つの意味を理解しておくと、漢方薬を服用するべきか、もしくは漢方薬を服用しなくても養生だけで解決できる冷えなのかを区別することができます。以下に詳しく解説していきましょう。

1.冷えと「筋肉」

人体における最大の熱産生器官は「筋肉」です。筋肉が充分に活動すると、そこに大量の熱が発生し、さらに筋肉は血行を促すポンプの役割を果たしますので、産生した熱を体の隅々にまで行き渡らせることができます。つまり充実した筋肉活動こそが、身体・手足を温めるための原動力となっているのです。

このような熱産生の根本である筋肉に問題があるタイプの冷え性は、臨床的には2つのケースに分かれます。一つは「筋肉活動の不足」が原因となっているケース、もう一つは「筋肉量の不足」が原因となっているケースです。

ⅰ)「筋肉活動の不足」による冷え
一般的に最も散見される冷え性のパターンです。筋肉は日常の中で必ず使用される器官ですが、その活動が不足していると熱産生が弱り、冷え性を発生させます。筋肉がしっかりついている若い方であっても、座りっぱなしの仕事をされていたり、移動がすべて車であったりして、日々の筋肉活動が不足していれば冷え性は容易に起こります。

このケースでは、十分な運動を行うだけで冷え性が改善するものです。つまり冷え性だと感じている方の中には、単純に運動不足に起因している方がかなりいらっしゃいます。そういう方では薬よりも、運動という生活養生によって改善するウェイトが非常に大きくなります。疲労感もあまりなく、食欲もある、そしてご飯もしっかり食べられる、そういう方で手足に冷えを感じる場合は、まずは運動不足を解消してみることが先決です。

最も効率の良い運動は下半身の筋肉を動かすことです。ウォーキングやランニング、スクワットなどを適度に行なってみましょう。やや小汗をかく程度に行うことがポイントです。通勤で歩くようにする、友人と一緒に行うなど、日常の中に組み込んだり、人を絡めて行うようにすると、三日坊主にならなくて済むのではないでしょうか。

ただし運動をすると足腰に痛みが起こるという方や、運動後に筋肉痛が何日も続いてしまうような方では、あまり無理をしてはいけません。その場合は単に筋肉活動が不足しているだけではなく、筋肉自体に弱りがあるために熱産生が滞っているケースが考えられます。

ⅱ)「筋肉量の不足」による冷え1
筋肉中には血液が豊富に流れています。そして筋肉はその中を流れている血液から栄養を受け取ることで自らの容積を維持しています。さらに筋肉がその容積を保つためには日常的に充分に使われている必要があります。そのため日々使われなくなった筋肉は急速にその血流を弱め、同時にその容積を減少させていきます。例えば足を骨折しギブスを1.2か月すると、足は見るからに細くなります。筋肉は使用されない状況に陥ると、このような急速な萎縮を起こします。

筋肉が充分にあり、その活動が不足しているというだけであれば、運動によってその冷え性は比較的容易に改善します。しかし長期的に筋肉が使用されていなかったり、筋肉中の血流に問題があることで筋肉量が不足しているケースでは、いくら運動を行ってもその効果がなかなか表れません。筋肉を鍛えるということは、筋肉に意図的にダメージを与え、損傷分よりも大きく回復するという人間の自己治癒力を利用することによって初めて成し得ます。この時筋肉に充分な血流を確保できる容積がなければ、充分な栄養を送り込むことができず、ダメージに対して自己治癒力を発揮することができません。痩身の方だけでなく、一見肉付きの良くみえる方であっても、この状態に属している方がいらっしゃいます。

このような場合、運動によって筋肉を活動させることが逆効果になります。筋肉に疲労が蓄積し、逆にその活動を弱めることで熱が産生しにくくなるからです。したがって漢方薬による治療が必要になります。筋肉は充実した血液によって栄養を受けることでその量や質を高めます。したがって漢方薬によって筋肉に血流をどんどん送り込んでいくイメージで治療していきます。当帰や川芎・桂枝といった生薬を使うことが一般的です。当帰芍薬散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯・温経湯・五積散といった処方がその代表です。

ⅱ)「筋肉量の不足」による冷え2
ただし、これらの薬物をもって治療しても冷えが改善しない場合があります。筋肉自体の容積が非常に少ない、つまり筋肉量が極端に少ない場合です。このケースでは筋肉の血流量を当帰や川芎などの生薬をもっていくら増やそうとしても、容積自体が少ないため血液が送り込めません。したがって筋肉がどの程度ついているかという判断が、冷え性を改善していくためには非常に重要な要素になってきます。

そもそも漢方薬はあくまで血流を促すという薬能を発揮するのであって、筋肉自体を直接的に増やすわけではありません。したがって筋肉量を増やしていくためには、筋肉が本質的にどのようにして作られているのかを理解しておく必要があります。筋肉を作り出す根本、それは「胃腸」です。筋肉は食べ物によって作られるからです。食事を取り、胃腸がそれを消化吸収し、良質な栄養素が血液にのって筋肉に運ばれることで初めて筋肉はその量を増やしていくことができます。つまり筋肉量が極端に少ないケースでは、まずは胃腸活動を促して、食生活を長期的に改善していかなければなりません。臨床の実際として、どんなことをしても取れないという強度な冷えを抱えていらっしゃる方では、手足の冷えと同時に胃腸の弱りを持つ方を散見します。

つまり冷え性にて胃腸が弱いという方では、当帰や川芎で血行を促す前に、まず胃腸を建てなおす必要があります。しかも消化機能の弱りを持つ方では、当帰や川芎といった血行を促す生薬によって逆に副作用を起こすことさえあります。最も頻繁におこるのは、胃腸機能にダメージを与えてしまうことで起こる胃もたれや食欲不振です。冷え症治療で有名な当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や温経湯(うんけいとう)などを服用して冷えが治らず、むしろ胃が調子悪くなるという方は、漢方治療が合わないのではなく、完全に見立てを間違えているのです。

このタイプの冷え性の方では胃腸機能の弱りと同時に、多くのケースで内臓の冷えを伴っています。つまり手足末端だけでなく、体の中心部も冷えている傾向があります。したがって身体内部を温めて胃腸機能を高める薬方を用いる必要があります。ただし胃腸機能の弱りと内臓の冷えとには程度があります。そしてその程度を見極めた上で治療することが絶対条件になります。良く使われる処方には人参湯や真武湯などがあります。また特殊な例として呉茱萸湯があります。呉茱萸湯は比較的急迫的な冷えによって身体に強力な緊張・興奮状態を伴うケースの冷え性に用います。手足が冷えると同時に胃痛や下腹部痛が起こり、それが激痛で吐き気までもよおす、というような場合に用いられる機会があります。

2.冷えと「緊張」

熱を産生するエンジンである筋肉の問題とは別に、人体は緊張状態を呈した時にも末端の冷えを感じます。緊張した時に手に汗を握るという状態がまさしくそれで、その時手は通常冷えているはずです。この現象は精神的な刺激が自律神経を緊張させて、手指末端に血行が行き届かなくなることで起こります。冷えと緊張とにはこのような密接な関係がありますが、このように明らかに緊張している場面でなくても、この現象によって手足末端が冷えるということが実際に起こります。

寒さと緊張
例えば冬になり気温が下がると手足の冷えを感じます。これは冷えた外気が手足の血行循環を悪くさせるために起こる現象です。当然と言えば当然の現象ですが、実はその原因は外気によるものだけではありません。人体は冷えた外気を浴びた時、わざと四肢末端を緊張させて冷やそうとします。つまり積極的に手足末端を冷やそうとする反応が体に起こるのです。

人体にとって最も熱を維持しなければいけないのは内部、つまり内臓です。内臓の熱は血流にのって手足末端に向かい、その後Uターンして内部に戻っていきます。このとき外気が冷えていると、四肢で冷やされた血液が内臓に戻り、体の内部が冷えてしまいます。そのため冬になり外気が冷えてくると、人体はわざと手足末端に血液を向かいにくくさせ、さらに末端の血液を内部に戻りにくくさせます。そうすることで内部の熱を守ろうとするわけです。すなわち冷たい外気で手足が冷えるという現象は、冷気による血行の阻滞と、人体の自己防御反応とによって生じています。

この自己防御反応は身体の自律神経によって行われています。冷気に対して自律神経が反応し、血管平滑筋をぎゅっと収縮させて血行をせき止めている印象です。つまり緊張した時に手が冷たくなる現象と本質的には同じです。冷気に対して緊張した体が、末端の血管を緊張させることで手を冷やしているという状態です。

つまり手足末端が冷えるという現象にはこの「緊張」という状態が多くのケースで関与します。そしていわゆる末端冷え性と呼ばれる方の中には、寒冷刺激に対して緊張しやすい自律神経の過敏さがその原因になっている方がいらっしゃします。

寒さに対する過敏さを緩和させる治療
すなわち筋肉に問題がない方で、なおかつ運動を日常的に行なったとしても冷えがなかなか改善しないという場合に、緊張しやすい自律神経の乱れを緩和させることで冷えが改善するケースがあります。この場合は特に漢方治療が有効で、寒冷刺激に対して敏感に反応しやすい状態が緩和させることで四肢末端が温まりやすくなり、冷え性が改善していきます。

不安感や動悸・のぼせなどの自律神経失調症状を伴っている方では、これらの症状の改善を目標に治療を行なっていくと、自然と冷えが緩和されていく傾向があります。具体的な治療方法は「病名別解説:自律神経失調症」を参照してください。またこのような明確な症状がなかったとしても、自律神経の過敏さによって冷えを起こしている方もいます。その場合は漢方薬をもって四肢末端の血行を促します。血流が充実する事で末端部の自律神経が安定し、寒冷刺激に対して自律神経が過剰に反応しにくい状態へと向かいます。使用されやすい方剤としては、当帰四逆加呉茱萸生姜湯や当帰芍薬散、温経湯や当帰建中湯などです。上記で示した筋肉量が少ないことで起こる冷え性の治療と結果的には同じです。これらの漢方処方は、単に血流を促すだけの薬ではありません。同時に、身体の緊張状態を緩和させる薬能がすでに付加されています。

そもそも冷え症治療では、当帰や川芎・桂枝といった血流を促す生薬をそのまま使用することはほとんどありません。芍薬や甘草・茯苓といった身体の緊張・興奮を緩和させる生薬と共に用いられることが一般的です。これらの生薬が四肢末端の過敏さを緩和し、その上で当帰や川芎が血流を促すからこそ、手足末端を温めることができるようになります。さらにこれらの生薬は、血流が過剰に促されることで起こる動悸やのぼせなどの興奮症状を予防する薬能もあります。特に筋肉量が少ない方では血行を促す生薬によってこれらの興奮症状が出やすい傾向があります。漢方処方は単に血行を促進するという薬能だけを持つわけではなく、緊張と弛緩、アクセルとブレーキといった対称的な薬能を同時に内包しています。それによって効果を発揮しやすくしつつ、かつ副作用を防止するという極めて高度な連携を持っています。

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