ニキビ・尋常性ざ瘡について

面部にできる皮膚疾患の中でも、多くの人に身近で、かつ不快感の強い病がニキビ(尋常性ざ瘡)です。当薬局でも、思春期にニキビが多発してお困りの方が多くご来局されます。また思春期のみならず、20代30代を中心とした大人の方でも来局されることの多い疾患です。

ニキビと現行治療

以前は思春期などの若いころは当たり前のようにニキビができるという時代でしたが、近年ではいわゆるニキビ面の方が減ってきました。しかしだからこそニキビが発生した時の不快感は以前よりも強く、来局される方はむしろ増えているように思います。

●ニキビ治療の問題点
ニキビ(尋常性ざ瘡)は酷くなればなるほど、西洋医学的治療が難しくなる印象があります。ビタミン剤や抗菌剤の内服や外用が行われますが、思春期に起こるような中等症以上のざ瘡では、これらでは効果が認められない場合が多いと思います。またピーリングなどの肌に刺激を及ぼす治療を行っても、結局はニキビの発生が止まらないという方を散見します。当薬局に来られる方は一度これらの治療を受けても改善しなかったという方が多く、適切な漢方薬を併用すると今まで効果を感じなかった西洋薬が効きやすくなると感じられるようです。

ニキビと漢方

ニキビは大きく言えば化膿性炎症による疾患です。したがって漢方ではおでき(「癰(よう)」や「癤(せつ)」)の治療方法を基本とします。ただしニキビには単なるおできとは異なる特殊な状態があり、漢方では「粉刺(ふんし)」と称してその適応方剤も「癰」とは区別されてきました。漢方薬はその点を踏まえて選択していく必要があります。

ニキビはそれを発生してしまう体の状態を是正しなければ、なかなかおさまりません。漢方治療によって狙うところはまさにそこです。またニキビは痕(あと)が残る前に、炎症の勢いを早めに沈静化させることが大切です。以下のような漢方薬を適宜選択していくことで、ニキビの早期終息を促します。

使用されやすい漢方処方

①荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)
②治頭瘡一方(ちずそういっぽう)
③黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
 三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)
④清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
 清肺散(せいはいさん)
⑤大柴胡湯(だいさいことう)
 小柴胡湯(しょうさいことう)
 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
⑥加味逍遥散(かみしょうようさん)
 逍遥散(しょうようさん)
⑦荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
⑧半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
⑨当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
⑩桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
⑪帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)
※薬局製剤以外の処方も含む

①荊防敗毒散(万病回春)

 おでき治療の代表方剤であると同時に、ニキビ(尋常性ざ瘡)にも用いる。化膿の勢いが強い場合には黄連解毒湯などを合わせることが必須。おできにおいては初期の化膿を消散させる目的にて用いるが、ニキビにおいては内出血の跡や瘢痕を残してこじれていく前に病巣を消散させる目的で用いる。
荊防敗毒散:「構成」
柴胡(さいこ):前胡(ぜんこ):川芎(せんきゅう):防風(ぼうふう):荊芥(けいがい):桜皮(おうひ):羌活(きょうかつ):独活(どくかつ):茯苓(ぶくりょう):桔梗(ききょう):甘草(かんぞう):薄荷(はっか):枳殻(きこく):金銀花(きんぎんか):

②治頭瘡一方(勿誤薬室方函)

 別名「大芎黄湯」。頭部に生じた瘡(化膿)を治すという薬方であるが、面部などの人体上部に生じる瘡にも用いる。衛生環境が今よりも悪い江戸時代では、頭面にひどい化膿性炎症を生じる方が多かった。そのために作られた強力な化膿止めである。浅田宗伯は「清上防風湯は清熱を主とし、この方は解毒と主とするなり。」と説明する。強い炎症・化膿・充血を伴うニキビに用いる。赤味が強い場合は黄連・黄芩を加え、内出血が強い場合には牡丹皮・桃仁を加える。
治頭瘡一方:「構成」
忍冬(にんどう):連翹(れんぎょう):荊芥(けいがい):防風(ぼうふう):川芎(せんきゅう):紅花(こうか):蒼朮(そうじゅつ):大黄(だいおう):甘草(かんぞう):

③黄連解毒湯(肘後備急方)三黄瀉心湯(金匱要略)大黄牡丹皮湯(金匱要略)

 清熱薬として有名な黄連解毒湯はその名の通り、毒(膿)を解する薬能を持つ。病巣の炎症拡大を抑制する「清法」の基本方剤。三黄瀉心湯は「下法」を行うことでより沈瀝した炎症を抑制する。大黄牡丹皮湯は内出血の痕や瘢痕を消す効能が強い。炎症状態に従って使い分ける。ただし清熱薬の過剰投与は血液循環を妨げ病巣治癒の沈滞化を招く。薬容量が重要である。
黄連解毒湯:「構成」
黄連(おうれん):黄芩(おうごん):黄柏(おうばく):山梔子(さんしし):

三黄瀉心湯:「構成」
黄連(おうれん):黄芩(おうごん):大黄(だいおう):

大黄牡丹皮湯:「構成」
冬瓜子(とうがし):牡丹皮(ぼたんぴ):桃仁(とうにん):大黄(だいおう):芒硝(ぼうしょう):

④清上防風湯(万病回春)清肺散(万病回春)

 面に瘡を生ずる者は上焦の火なり。万病回春という明代の書物に掲載されている処方にて、面部の火を鎮める強力な炎症止め。発赤・化膿・痒みの甚だしいニキビに用いられる。清上防風湯は排膿消腫の薬能がつよく、ぼこぼこと吹き出す大きめの膿疱・嚢腫に適応する。清肺散は穀嘴瘡(こくすいそう)と呼ばれる細かく吹き出すニキビに良い。
清上防風湯:「構成」
黄連(おうれん):黄芩(おうごん):山梔子(さんしし):連翹(れんぎょう):薄荷(はっか):荊芥(けいがい):防風(ぼうふう):川芎(せんきゅう):白芷(びゃくし):桔梗(ききょう):枳殻(きこく):甘草(かんぞう):

清肺散:「構成」
黄連(おうれん):黄芩(おうごん):山梔子(さんしし):連翹(れんぎょう):荊芥(けいがい):桑白皮(そうはくひ):苦参(くじん):川芎(せんきゅう):白芷(びゃくし):貝母(ばいも):甘草(かんぞう)

⑤大柴胡湯(傷寒論)小柴胡湯(傷寒論)柴胡桂枝湯(傷寒論)

 尋常性ざ瘡のような再発を繰りかえす慢性的な化膿性皮膚炎に対しては柴胡剤が良く用いられる。これらの薬は胃薬でもあり、胃腸の機能を是正することでニキビを生じにくい体質へと向かわせる。炎症の程度に従って清熱薬や排膿薬を加える。総じて大柴胡湯は化膿の勢い強く膿が硬い者、小柴胡湯は膿が比較的柔らかく拡大傾向があまり強くない者、柴胡桂枝湯はさらに胃腸機能の弱りが主となる者に対して用いられる傾向がある。
大柴胡湯:「構成」
柴胡(さいこ):半夏(はんげ):黄芩(おうごん):芍薬(しゃくやく):枳実(きじつ):大棗(たいそう):生姜(しょうきょう):大黄(だいおう):

小柴胡湯:「構成」
柴胡(さいこ):黄芩(おうごん):半夏(はんげ):人参(にんじん):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):生姜(しょうきょう):

柴胡桂枝湯:「構成」
柴胡(さいこ):黄芩(おうごん):半夏(はんげ):人参(にんじん):桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):生姜(しょうきょう):

⑥加味逍遥散(薛氏医案)逍遥散(和剤局方)

 ぽつぽつと吹き出る針頭大から小豆大の比較的小さいニキビに用いられる場が多い。婦人科系疾患に適応を多くもつこの処方は、内分泌機能を是正するとともに消化管の緊張を緩和させる薬能を持つ。ニキビを生じにくい体質へと向かわせる。炎症の強い状態には加味逍遥散、さらに化膿傾向が強ければ黄連解毒湯を合わせ、炎症・化膿ともに弱ければ逍遥散を用いる。
加味逍遥散:「構成」
柴胡(さいこ):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):生姜(しょうきょう):茯苓(ぶくりょう):白朮(びゃくじゅつ):当帰(とうき):薄荷(はっか):牡丹皮(ぼたんぴ):山梔子(さんしし):

逍遥散:「構成」
柴胡(さいこ):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):生姜(しょうきょう):茯苓(ぶくりょう):白朮(びゃくじゅつ):当帰(とうき):薄荷(はっか):

⑦荊芥連翹湯(漢方一貫堂医学)

 一貫堂医学とは明治・大正時代に森道伯先生が編み出された病治方法。病的体質を大きく3つに分類して把握する手法にて、この処方は解毒証体質と呼ばれる化膿性疾患を生じやすい者に適応する。血行循環を調えながら炎症を抑制することを本旨とする。尋常性ざ瘡においても再発予防を含めた総合的な治療を本剤にて行う。
荊芥連翹湯:「構成」
黄連(おうれん):黄芩(おうごん):黄柏(おうばく):山梔子(さんしし):当帰(とうき):川芎(せんきゅう):芍薬(しゃくやく):地黄(じおう):柴胡(さいこ):荊芥(けいがい):連翹(れんぎょう):薄荷(はっか):防風(ぼうふう):白芷(びゃくし):枳殻(きこく):桔梗(ききょう):甘草(かんぞう):

⑧半夏瀉心湯(傷寒論)

 心下痞硬とよばる胃腸活動の失調に用いられる消化器系の薬であるが、同時に食事の不摂生によって発生するニキビに用いられる場がある。花輪壽彦先生は「黄色いにきび(胃腸障害を伴う化膿性のもの)は半夏瀉心湯」と口訣を示されている。べとべととした印象の濃い膿を発生させる尋常性ざ瘡に用いる。口回りに発生するニキビに用いられることが多い。
半夏瀉心湯:「構成」
半夏(はんげ):乾姜(かんきょう):黄芩(おうごん): 竹節人参(にんじん):大棗(たいそう):甘草(かんぞう):黄連(おおれん):

⑨当帰芍薬散(金匱要略)

 炎症傾向弱くただ白い膿疱をぽつぽつと発生させるニキビや、いつまでも残存して消えにくい面皰に用いる。婦人科系に用いる代表方剤であるが、その薬味から考えれば血行循環を促すことで病巣の自己治癒力を促進させる薬でもある。排膿消腫を促す薏苡仁や桔梗を加えることが多い。非炎症性のざ瘡においても、のぼせて顔が赤くなるタイプに用いると悪化させることがある。芍薬を増量するか、桂枝剤の適応を考慮する。
当帰芍薬散:「構成」
当帰(とうき):川芎(せんきゅう):芍薬(しゃくやく):茯苓(ぶくりょう):蒼朮(そうじゅつ):沢瀉(たくしゃ):

⑩桂枝茯苓丸(金匱要略)

 「瘀血」と呼ばれる血行障害に適応する代表方剤。ニキビの瘢痕や内出血によるニキビ痕を「瘀血」と捉え、長期服用することでこれらを消す。また軽度の面皰に対して薏苡仁を加えて用いられることが多い。ただし単独で用いるなら炎症傾向の強いニキビには無効。炎症が強いと悪化させることもあるため注意が必要である。比較的ニキビに頻用されている傾向があるが、第一選択薬として一律的に使用するべきものではない。
桂枝茯苓丸:「構成」
桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):牡丹皮(ぼたんぴ):桃仁(とうにん):茯苓(ぶくりょう):

⑪帰耆建中湯(瘍科方筌)

 当帰や桂枝などの温薬は炎症を悪化させることがある。ただし「虚労(きょろう)」と呼ばれる疲労状態を伴うニキビでは、この処方にて血行を促進することで吹き出物が消散する場合がある。切り傷などが治りにくいという者に良い。使用頻度は少ないが、尋常性ざ瘡の適応方剤として知っておくべき処方である。
帰耆建中湯:「構成」
黄耆(おうぎ):当帰(とうき):桂枝(けいし):生姜(しょうきょう):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):

臨床の実際

ニキビ(尋常性ざ瘡)に対する処方としては、十味敗毒湯や桂枝茯苓丸(加薏苡仁)が有名です。しかしこれらの薬では上手くいかないケースが多いと思います。少なくとも単独でこれらの薬を使って消えるニキビは、極々軽症のものです。

ニキビ(尋常性ざ瘡)は膿疱を生じる化膿性皮膚炎に属しますので、「癰」の治療を基本とします。

〇化膿が強まる過渡期では荊防敗毒散合黄連解毒湯などで病巣を消散させる。
〇化膿して炎症の勢いが減弱したら千金内托散などで排膿を促す。
〇自潰して潰瘍を形成したら活血剤や駆瘀血剤の併用を検討して治癒を促し瘢痕化を予防する。

以上が「癰」治療の概要です。病巣が単独もしくは局在化している皮膚膿瘍ではこの方法で問題ありません。しかし尋常性ざ瘡は面部や胸部・背部に病巣が散在しており、自潰する前のものも、既に自潰しているものも、同時に存在しています。つまり単純に「癰」の治療に照らし合わせても病態を捉えることができません。したがってニキビにはニキビの治療方法が必要になってきます。

<ニキビ治療の実際>

ニキビはその状態にしたがって治療方法を大きく3つに分けます。
〇ひとつは炎症が強く化膿の勢いが強いざ瘡
〇もう一つは炎症の拡大傾向が弱く病巣の進行が遅いざ瘡
〇さらに炎症がほとんどなく、面皰(めんぽう:毛包内に皮脂の栓がつまっただけの状態)が継続する非炎症性のざ瘡です

1.炎症が強く、化膿の勢いが強い尋常性ざ瘡

思春期のニキビに良くみられるような化膿の勢いが強いケースです。病巣が浅ければ兵疹(きゅうしん:炎症によって皮膚が隆起する)から化膿・膿疱の拡大から排膿・自潰から再発までのサイクルが早く、病巣が深ければ結節(けっせつ:充実したしこり)から嚢腫(のうしゅ:結節が化膿したもの)となり赤味を伴いながら拡大していきます。どちらにしても、まるで面部が煮えたぎって沸騰しているようなニキビです。患部に痒みを伴うことが多く、膿も粘性でやや黄色味を帯びます。病巣の充血が強く自潰後の皮膚に赤紫色の痣を残しやすく、膿が大きく拡大する場合では皮膚に大きな瘢痕を残します。
この場合は「清熱解毒法」を主体とし、まずは病巣の炎症傾向を沈静化させます。総じてデコボコのニキビ痕を作りやすいケースです。そうならないためにも早期に炎症の抑制を図ります。
最も基本的な処方は黄連解毒湯です。清熱解毒剤といえばこの処方ですが、この薬だけでは止まらない炎症性ざ瘡はたくさんあります。

●熱毒が強い場合
化膿傾向が強く膿疱や嚢腫が大きく、顔全体に広がり赤味が強い。そして頬や額に赤紫色~暗紫色の充血を伴う。このような炎症・化膿・充血の強いざ瘡には「下法(大黄などの下剤を用いることで清熱する手法)」を行う必要があります。治頭瘡一方などの解毒剤を用います。三黄瀉心湯や大黄牡丹皮湯などを他剤に合方する手段もあります。炎症性の血管拡張が強く充血が深い場合は「下法」を行う必要があり、「清法」だけでは炎症を抑制することができません。

●炎症・化膿傾向が強く、膿疱・嚢腫が大きい場合
膿疱・嚢腫が大きく炎症が甚だしくて赤味も強い。しかし赤紫色~暗紫色の充血はさほど強くないという場合には黄連を中心とした「清法」を十分に行います。清上防風湯はこの状態に頻用される処方です。黄連解毒湯もこの状態に用いますが、荊防敗毒散に合わせるというやり方が一般的です。清上防風湯は比較的大きな膿をもったぼこぼことした面部の状態に適応し、荊防敗毒散合黄連解毒湯は大きな膿から小さな膿まで幅広く対応します。強い赤味とともに膿が硬く軟化しない場合には石膏を加えなければならいないこともあります。

●炎症・化膿傾向が強いが、膿疱・嚢腫がそこまで大きくならない場合
炎症傾向が強く病巣の赤味も強い、しかし針頭大から小豆大の比較的小さな膿疱・嚢腫が散在する場合。尋常性ざ瘡において最も多い状態だと思います。このような時には柴胡剤に清熱解毒薬を加えたものが頻用されます。
荊防敗毒散は柴胡剤として膿の大小に関わらず用いられます。炎症が強ければ「清法」は必須です。炎症の程度に合わせて黄連解毒湯の方意を足します。大柴胡湯や小柴胡湯も頻用される処方です。やはり黄連解毒湯を合方するのが一般的です。
またこのような状態では患部の血行状態の是正が必要な場合があります。特に繰り返す膿瘍の自潰によって患部に内出血の跡が残りやすい場合はこの対応が必要です。四物湯類や駆瘀血剤が必要になります。
これらを総合的に配合した処方が荊芥連翹湯(一貫堂)です。多くの場合、この処方がニキビ治療薬のベースとして用いられています。荊芥連翹湯に駆瘀血剤を合わせるというのは、最も頻用されていると思います。ただし黄連解毒湯は過剰に用いると血行を止め、四物湯は過剰に用いると炎症を悪化させます。これらのバランスにより成り立っているこの処方は、常に両者の配分を調整する必要があります。また一貫堂でいわれる解毒証体質者ど真ん中という方は、近年ではあまり見かけなくなりました。固定した荊芥連翹湯を一律的に用いるというやり方はあまり賛同できません。
加味逍遥散はこの状態の尋常性ざ瘡に非常に有効です。ただしやはり「清熱」を主とする必要があるため、黄連剤を合方します。また血虚と言われる血行障害を内在させる方に用いるこの方剤は、自破後の内出血を残存させやすい傾向があります。駆瘀血剤を適宜加減する必要があります。

※自律神経の過緊張状態によって血管の緊張度が高い場合や、陰分(東洋医学独特の概念で体液という意味に近い)の不足傾向がある場合は、膿を形づくる材料が病巣に到達しにくくなり、強く炎症が起こるものの大きな膿を形成しにくい傾向がります。またこれらの状態は病巣を完治させず、炎症をいつまでも継続させる原因となります。したがってこのケースでは身体の緊張状態を「肝鬱」と捉えて柴胡剤を使用したり、陰を補い血を促す方剤として四物湯類を用いたりします。また清熱剤は過剰に用いると血行を止めます。その予防も含めて、当帰や川芎・芍薬といった活血・補血薬を配合します。

2.炎症の拡大傾向が弱く病巣の進行が比較的遅い尋常性ざ瘡

丘疹や膿疱、結節および嚢腫が散在するものの、針頭大から小豆大と小さく、その数も比較的少ない。赤味を帯びても炎症の拡大傾向にそこまでの勢いがなく、病巣の進行が遅いという場合のニキビです。思春期よりも20代から30代の方で起こりやすい傾向があり、食事の不摂生や睡眠不足などによって、酷くなったり落ち着いたりを繰り返します。
このケースでは既に起こっている炎症を抑えるという治療だけをいくら行っても継続する炎症を止めることができません。むしろ炎症を起こりにくい状態へと向かわせるという治療を行う必要があります。
化膿性炎症が面部に生じ続ける理由は自律神経や内分泌の働きの乱れと言われています。自律神経が乱れると緊張・興奮状態が継続し、面部の血管に充血やうっ血が起こりやすくなります。そして血液にのって全身を巡る内分泌物質(ホルモン)は、それが乱れると全身に及ぼす血液の力が弱くなります。つまり面部に化膿性炎症が生じ続ける理由は、一口で言えば面部の血行障害であると言えます。
さらに面部の血行障害が起きるそもそもの理由は、東洋医学的には消化管の不調に帰結します。これは内視鏡などで胃腸の壁を見ることでわかるものではなく、胃腸の動きの弱りを指しています。病院では問題ないと言われるものの、自覚的に胃部の不快感を生じやすいといった方は、これがニキビの原因となっている可能性が高いのです。

●血行障害が主となる場合
血行障害が主であり、胃腸機能にはさほど問題がないという場合には、四物湯を内包する荊芥連翹湯(一貫堂)が使われます。「陰虚」と呼ばれる体質の方にこの処方の適応者が多く、陰虚がさらに進んでいる方には百合固金湯や養陰清肺湯などの滋陰薬が使われます。これらの処方中に入っている地黄や当帰は胃を障害させることがあります。したがってこれらの薬はあくまで血行障害が主であり、胃調の弱りを呈する者には不向きです。

●胃腸機能を是正する必要がある場合
胃薬でもある大柴胡湯や柴胡桂枝湯は、ニキビ体質の根本治療に用いられます。大柴胡湯は比較的大きな膿を形成するニキビにも用いられます。血行障害を是正するために川芎や桂枝などを含む処方と良く合方されます。
半夏瀉心湯は心下痞硬と言われる胃部の不快感を目標として用いられる方剤です。さらに黄連・黄芩の清熱を配合していることにより、ニキビの治療にも応用されます。
逍遥散は婦人科疾患でよく用いられる加味逍遥散の原型です。山梔子・牡丹皮という清熱薬を除いた処方ですが、胃腸の薬でもあります。イライラして興奮しやすく緊張して胃腸を壊しやすい、そんな方から弱く吹き出るニキビを薄荷でサラッと散らすという処方です。

3.炎症がほとんどないか、面皰が継続する非炎症性の尋常性ざ瘡

赤味がなく、あっても薄く、病巣も小さくぽつぽつと発生するニキビです。顔中に散在する場合もありますが、顎まわりや頬部・口の周りなどの限られた場所にできる傾向があります。また面皰(めんぽう)といって毛包内に皮脂の栓がつまった状態で維持し、そこから炎症・化膿をおこさないニキビもあります。ごく軽症ではありますが慢性化しやすいため、お困りの方が多いニキビでもあります。
原因は面部の血行障害、そして帰結する原因は消化機能の弱りです。以下の処方に排膿消腫の薬能を持つ桔梗(ききょう)や薏苡仁(よくいにん)を配合することが一般的です。

●血行障害が主となる場合
胃腸機能に問題がなければ、とにかく血行を促します。身体の血液循環が改善されると、面部の病巣は自然と消失していきます。
当帰芍薬散はこの時に用いられる代表方剤です。もともと婦人科系の病に使われる薬にて、月経痛や浮腫み、冷え性などの傾向がある方に用いられます。ただしそれに関わらず、炎症のほとんどない白いニキビであれば、用いて効果を発揮する場合が多くあります。五積散も同じような場で用いられることの多い方剤です。
非炎症性のニキビにおいて、血行が悪いためにうっ血を起こして患部が青紫色を帯びていることがあります。瘀血に属する血行障害ですので桂枝茯苓丸などの駆瘀血剤を用います。温経湯に桃仁を加えて用いる場合もあります。この状態のニキビは少数派です。ニキビ治療に桂枝茯苓丸が良く用いられますが、実は適応するケースはそう多くありません。

●胃腸機能を是正する必要がある場合
炎症傾向がほとんどないか、あっても僅かであり、食が細く胃もたれを生じやすいという方には六君子湯を用います。胃腸の薬として有名で、皮膚病にはなじみの薄い処方ですが、六君子湯で改善するニキビというものが実際にあり、少なくないと思います。ただし方中の人参は炎症が強く膿瘍が大きいという場合にはニキビを悪化させます。一方でこのような人参を配合しないと消えないニキビもあり、的確な弁別が求められます。
また黄耆建中湯や帰耆建中湯によって消失するニキビもあります。お腹を冷やして下痢しやすく疲労感が強い、冷え性だが夜間に手足がほてり寝汗をかきやすい。このようなタイプの方は面部に充血を起こしやすく、弱々しい炎症とともに顔にぷつぷつと赤紫色や暗青色のニキビを生じている場合があります。本質的には虚労と呼ばれる身体の疲労状態に適応する方剤ですが、疲労感の改善とともにこのようなニキビに著効することがあります。

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