慢性胃炎・萎縮性胃炎について

慢性胃炎・萎縮性胃炎とは

慢性胃炎は胃もたれや胃の膨満感、胃痛や食欲不振などを慢性的に繰り返す病です。特に食事の不摂生や睡眠不足によって起こります。中には症状が全く無いのにも関わらず、胃カメラなどの検査によって指摘される方もいます。そのため放置されやすい病といえるでしょう。

慢性胃炎は放っておくと胃粘膜が薄くなって胃酸や胃粘液を分泌できない状態となります。これを萎縮性胃炎といいます。胃癌などのリスクが高まりますので、早期発見が重要です。

近年慢性胃炎の原因がヘリコバクターピロリ菌であると分かり、ピロリ菌の除菌によって多くの方がこの病を改善・予防できるようになりました。慢性胃炎のみならず胃潰瘍や胃酸過多症・逆流性食道炎などもこの除菌治療が大変有効です。

ただし除菌を行っても症状が改善しない方がおり、その場合は漢方治療の適応となります。また除菌を行うための抗生剤3剤併用によって、胃もたれや吐き気・下痢や便秘などの副作用が起きてしまうために除菌ができない方もおられます。

慢性胃炎・萎縮性胃炎と漢方

胃部疾患の中でも特に慢性胃炎・萎縮性胃炎の方は、ピロリ菌の除菌がうまくいかないケースを散見します。人は年齢とともに胃粘膜が薄くなります。特に平素から胃の働きが悪い方はこれが早く進行していきます。慢性胃炎や萎縮性胃炎はもともとの体質や避けることのできない老化現象によって起こりますので、ピロリ菌を除菌しても本質的な改善がされなければ症状が継続してしまうからだと考えられます。

漢方薬は胃酸や胃粘膜に直接的に働くわけではありませが、胃の血行状態を調節し胃活動を調える働きがあります。そのため西洋薬にて改善できなかった方でも胃炎を根治できる可能性が高く、試す価値のある治療法だと言えます。

使用されやすい漢方処方

①香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)
②半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
③人参湯(にんじんとう)
④桂枝去桂加茯苓白朮湯(けいしきょけいかぶくりょうびゃくじゅつとう)
⑤桂枝湯(けいしとう)
※薬局製剤以外の処方も含む

①香砂六君子湯(薛氏医案)

 胃腸虚弱な体質の者で、胃部が痞えて食欲わかず疲れやすい者に用いる。本方は主として慢性疲労・気の滅入り・胃下垂・胃アトニー・消化不良・食欲不振に用いる。普段健康な人でも一時的に胃腸が弱り体力を失うことがある。本方は広く体力増強剤として、体がしんどくだるいと云う者によい。胃だけでは無く風邪をひきにくくなったり、皮膚に潤いが出たりする。消化管が丈夫になると、肌が変わり免疫が強化する。
香砂六君子湯:「構成」
茯苓(ぶくりょう):人参(にんじん):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):白朮(びゃくじゅつ):生姜(しょうきょう):半夏(はんげ):陳皮(ちんぴ):香附子(こうぶし):砂仁(さじん)

②半夏瀉心湯(傷寒論)

 過食などの食事の不摂生により胃と腸が障害された状態の慢性胃炎に守備範囲が広く用いられる。げっぷ・胸やけ・腸鳴・下痢・口臭・口内炎・みぞおちの痞え・便が軟便にて気持ち良くでないなどに良い。食欲があって、痛みよりむしろ重苦しさとむかつきに用いる。
半夏瀉心湯:「構成」
半夏(はんげ):乾姜(かんきょう):黄芩(おうごん): 竹節人参(にんじん):大棗(たいそう):甘草(かんぞう):黄連(おおれん):

③人参湯(傷寒論)

 胃腸の冷えに対する代表方剤。冷たいものの過食や冷たい外気に当たることによって胃痛や腹痛・下痢しやすい体質の者に用いる。慢性胃炎の中でも寒証に属している者。胃の冷えは長引くと無酸(胃酸分泌減少)を招く。萎縮性胃炎の中にもこのタイプの方がおられる。
人参湯:「構成」
人参(にんじん):甘草(かんぞう):乾姜(かんきょう):白朮(びゃくじゅつ):

④桂枝去桂加茯苓白朮湯(傷寒論)

 「心下満微痛」という胃部の不快感を目標に用いる処方。胃腸機能の是正に用いる。あまり有名とは言えないが、古来より議論されてきた処方で、実は胃腸機能を回復する多くの処方の原型。臨床の上手い先生ほどこのような処方の運用に長けている印象がある。
桂枝去桂加茯苓白朮湯:「構成」
芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):生姜(しょうきょう):大棗(たいそう):茯苓(ぶくりょう):白朮(びゃくじゅつ):

⑤桂枝湯(傷寒論)

 もと感染症の薬として立方された本方は、すべての処方の創始と称されるほどの基本処方。胃気を高め、虚労を去り、身体の気血循環を促す薬能がある。基本処方故に軽視されがちであるが、この処方理解の深さが臨床の腕を左右する。萎縮性胃炎など、加齢に伴う諸疾患に広く応用されるべき処方である。
桂枝湯:「構成」
桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):生姜(しょうきょう):大棗(たいそう):

臨床の実際

慢性胃炎・萎縮性胃炎は、ピロリ菌除菌などの効果的な西洋医学的治療が無効となるケースがあり、胃部疾患の中でもその傾向が強いように思います。特にご高齢の方など胃炎を慢性化させている方にその傾向が強く、当薬局でもご相談の多い疾患です。

胃炎と漢方

漢方において胃部は全身の循環を反映する重要部位です。そのため胃の不調に適応する処方が数多く存在します。一口に胃症状といっても多くの病態が関与していますので、漢方ではそれらの病態を細かく弁別し、正確に把握した上で薬方を選択する必要があります。

●「虚」の段階の見極め
様々な病態が関与しやすい慢性胃炎・萎縮性胃炎ではありますが、最も多くみられる病態は「虚」に属するものです。この場合の虚とは慢性的な胃活動の弱りを表します。そして虚には段階があり、その程度によって適応処方が異なってきます。

たとえば虚を補う有名な処方に六君子湯がありますが、六君子湯にて改善できなければ、より虚の状態に適応する薬方を使う必要があります。すなわち治療においてはこのような「虚」の程度の見極めが肝要で、この程度に合わせて的確に処方を選択しなければ効果は表れません。

関連する記事

胃酸過多症
逆流性食道炎
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
便秘
下痢

当薬局へのお問い合わせ

当薬局ではご来局の上でご相談をお受けしております。下記「ご相談の流れ」をご参照ください。ご予約の際、漢方薬や病に関するご質問などがありましたら、お気兼ねなくお問い合わせください。

ご相談の流れ

また体調のためにお越しになれない方や、遠方にてお越しになれない方のために、電話やメールでのご相談をお受けしております。下記「遠方相談受付」よりお問い合わせください。

遠方相談受付