逆流性食道炎について

逆流性食道炎とは

逆流性食道炎は食道の炎症です。胃の内容物(主に胃酸)が食道に逆流するために起こるとされています。食道は胃と異なり胃酸を防御する働きがないため、胃酸が逆流すると炎症が起きやすくなります。ひどい場合、潰瘍を繰り返して出血をしたり、食道下部が狭くなり食べ物の通過が悪くなることもあります。

症状は主に胸やけで、特に屈んだ時や食べすぎた後、あるいは就寝後に強くなるのが特徴です。またげっぷやのどに酸っぱい水(胃酸)が上がってくることがあります。胃を手術で取っている方は、十二指腸のタンパク分解酵素が多く、アルカリ性の消化液によって食道炎を起こしている場合もあります。欧米では以前から多い病気で日本では少ないと言われていました。しかし高齢化・食事の欧米化・診断の進歩により、日本でも非常に多い病気であることが分かってきました。

逆流性食道炎と漢方

●漢方治療を考慮するべきケース
近年のプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H₂RA)さらにH.phlori除菌治療という非常に効果的な治療方法が出てきたことで、以前より逆流性食道炎に悩まれる方は少なくなってきています。ただしこれらの西洋薬の効果が表れにくい方、ピロリ菌がいないのに症状のある方、ピロリ菌除菌のための抗生剤に副作用がある方、除菌後も胃部の不快感が改善されていない方などが実際におり、そのような方では漢方治療が効果的です。

使用されやすい漢方処方

①茯苓飲(ぶくりょういん)
②清熱解鬱湯(せいねつげうつとう)
③生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)
④黄連湯(おうれんとう)
⑤熊胆(ゆうたん)
※薬局製剤以外の処方も含む
※「胃酸過多症」も参照してください

①茯苓飲(金匱要略)

 胃酸過多症や逆流性食道炎に対して昭和時代に良く用いられた処方で、大塚敬節先生は半夏厚朴湯と黄連を合わせて用い、山本巌先生は半夏を加えて用いた。「心胸間に虚気満ち」というのが最大の目標にて、胃部にガスが充満していて苦しいという状態に適応する。
茯苓飲:「構成」
茯苓(ぶくりょう):白朮(びゃくじゅつ):人参(にんじん):陳皮(ちんぴ):枳実(きじつ):生姜(しょうきょう)

②清熱解鬱湯(万病回春)

 「嘈雑(そうざつ)」つまり「胸やけ」に用いる名方。出典に「心痛(みぞおちの痛み)稍久しき者は胃中に鬱熱あるなり」とあるように、熱感を伴うような激しい胸焼け・胃痛などの症状に著効する。山梔子・黄連を配剤している点が特徴で、四逆散や柴胡疎肝湯にこれらの生薬を加えて胸焼けを治する工夫は古くからなされてきたことである。
清熱解鬱湯:「構成」
山梔子(さんしし):黄連(おうれん):川芎(せんきゅう):香附子(こうぶし):枳殻(きこく):陳皮(ちんぴ):蒼朮(そうじゅつ):乾姜(かんきょう):生姜(しょうきょう):甘草(かんぞう):

③生姜瀉心湯(傷寒論)

 神経を使う事により、胃と腸が障害された状態の逆流性食道炎に守備範囲が広く用いられる。胸焼けはもちろんだが、げっぷ・腸鳴・下痢・口臭・口内炎・みぞおちの痞え・便が軟便にて気持ち良くでない・もやもやするなどに良い。特に食事の匂いがあがってくる・口臭などの症状に効果が高い。食欲があって、痛みよりむしろ重苦しさとむかつきに用いる。
生姜瀉心湯:「構成」
半夏(はんげ):生姜(しょうきょう):乾姜(かんきょう):黄芩(おうごん): 竹節人参(にんじん):大棗(たいそう):甘草(かんぞう):黄連(おおれん):

④黄連湯(傷寒論)

 胃炎・胃酸過多症・逆流性食道炎を治療する上で知っておくべき処方の1つ。これでなければ効かないという方がたまにおられる。消化管に起こる自律神経の乱れを桂枝・甘草の組み合わせにて対応させている点が特徴。その因は腹中の冷えであることが多い。生姜瀉心湯や桂枝人参湯との鑑別が必要。
黄連湯:「構成」
黄連(おうれん):乾姜(かんきょう):人参(にんじん):半夏(はんげ):大棗(たいそう):甘草(かんぞう):桂枝(けいし)

⑤熊胆(民間薬)

 いわゆる「クマノイ」。胃痛や胸やけに極めて即効性の高い効果を発揮する民間薬として有名。その効果は実際に高く、また頓服薬として用いれば誰でも安心して服用することができる点も優れている。民間薬といえども後世に残すべき非常に良い薬である。ただし高価で流通が少ないことが難点。

臨床の実際

逆流性食道炎治療のポイント

逆流性食道炎は長く患っている方ほど「熱証」に偏る傾向があると感じます。そのため漢方では黄連や山梔子といった清熱薬の使い方が非常に重要になります。顔が青白く冷え性、冷えた食事で悪化しやすいといった寒証を内在させている方であっても、清熱薬を用いるべき時があります。この辺の見極めを間違えると効果が現れません。

逆流性食道炎は「胸やけ」を主として、そのほか「げっぷ」や「酸っぱい水が上がってくる」などの症状を伴いますが、漢方は逆流性食道炎という病名よりも、これらの症状から東洋医学的な病態を把握することで薬方が選択されます。

そのため「胸やけ」が主なのか、それとも「げっぷ」や「酸っぱい水があがってくる」という症状が主なのかによって、治療方法が異なってきます。つまり一口に逆流性食道炎といっても、それだけで処方を選択することはできません。西洋医学的な病名ではなく、症状を詳しく見極め、症状から病態を正確に判断することではじめて効果的な処方を選択することができます。

●漢方薬と西洋薬との併用
逆流性食道炎において西洋医学的治療と漢方薬との併用はたいへん有意義です。漢方薬は西洋薬との併用が問題なく、また併用することで今まで効きにくかった西洋薬が効きやすくなり、またその副作用も予防できるようになります。実際の臨床においても西洋薬のみを服用する場合よりも、漢方薬と併用し合うことで多くの方が改善へと向かっていく印象があります。

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