頭痛・片頭痛について

頭通は非常に身近な症状です。身近だからこそ、痛み止めで何とかやり過ごしたり、放っておいたりする方がとても多いという印象があります。風邪や二日酔いなどの一時的な頭痛であれば問題ありませんが、日常生活が困難になるほどの頭痛であっても、しかもそれが月に何回も起こるといった場合であっても、放っておかれている方がいらっしゃいます。慢性的に起こる頭痛は多くのケースで完治が可能です。頭痛治療というのは漢方家にとって基本です。的確な処方運用さえ出来れば即効性もあります。頭痛でお悩みの方は、漢方を専門とする医療機関に是非とも足を運んで頂きたいと思います。

●頭痛の分類
頭痛には様々な種類がありますが、大きく分けて2つに分類できます。一次性頭痛(原発性頭痛)と二次性頭痛です。(頭部神経痛・顔面痛を加えれば3つに分類されます。)一次性頭痛(原発性頭痛)とは、背景に他の病気が関与していない頭痛です。片頭痛や緊張型頭痛が代表的で、やや頻度は下がりますが群発性頭痛もこの範疇に入ります。反対に二次性頭痛とは他の病気によって引き起こされる頭痛を指します。

二次性頭痛の場合は、原因となっている他の病気を治療します。しかし一次性頭痛では原因が不明なものも多く、西洋医学的治療がうまくいかないケースが多いようです。当薬局に来局される方のほとんどが、片頭痛や緊張型頭痛、群発性頭痛です。またはっきりと分類することのできない頭痛もあり、その場合も多くの方が漢方治療を求めて来局されます。

●治療差がでやすい病
漢方において頭痛治療は基本です。ただし基本であることと、その基本を実際の臨床でどこまで応用できるのかということは全く異なります。つまり頭痛治療は先生方によってそのやり方が様々で、腕によって治療成績が上下しやすい疾患だとも言えます。腕の良い先生であれば、西洋薬でも感じたことのない即効性を漢方薬で発揮することが可能です。そして根治にまで導く手法を心得ています。一度漢方薬を試した、しかし効かなかった。それでも漢方治療をあきらめる必要はないと思います。

1.片頭痛

片頭痛は脈打つようなドクドクとした痛みが特徴で、ひどいとハンマーで殴られたような激烈な痛みが起こると表現される方もいます。頭の片側に起こるだけでなく、両側もしくは全体に痛みを生じる方もいます。吐き気や嘔吐を伴ったり、光や音に敏感になって、これらの刺激で痛みが悪化する傾向があります。寝不足や天気の変化、また食後などに発症する方が多いという印象です。

鎮痛薬やトリプタン系薬剤によって対症的に痛みを抑える治療が行われますが、これらの薬剤は連用すると逆に片頭痛が日常化してしまう可能性があります。片頭痛と診断されたのであれば、漢方薬を第一選択にしても良い、私の印象ではそれくらい漢方薬で改善される方の多い疾患だと思います。

2.緊張型頭痛

緊張型頭痛は頭をベルトで締め付けたような痛みが発生します。重く痛むと表現される方もいます。痛みの程度は軽度から中等度で、片頭痛のように目のまぶしさや吐き気を起こしたり、作業困難になるような強力な痛みを起こしたりはしません。頭痛全体の中でも頻度が高く、日常的に発生しやすい頭痛であると言えます。しかし反復性(月に15日未満)といって起こったり治ったりを繰り返し、痛むたびに鎮痛薬を飲まなければならず、ひどいと慢性(月に15日以上)となって頻度が増し、時に毎日ずっと痛むという方もいらっしゃいます。

緊張型頭痛は頻度が増えるほど痛みの強度も増していきます。原因は未だ明らかになっていませんが、身体全体のあらゆる乱れが頭痛を引き起こしている可能性があります。これもまた漢方薬にて根治が可能な頭痛に属しますので、お悩みの方はなるべく早めに漢方専門の医療機関におかかりください。

3.群発性頭痛

慢性頭痛の中でも非常に強い痛みを生じる疾患です。左右どちらか一方のこめかみ、および眼の周囲に堪えがたいほどの激烈な痛みを生じます。30分から1時間ほどの比較的短時間で収まりますが、一か月から三か月ほどの間、規則的に痛みが繰り返されます。その後痛みの無い時期が続くことがあっても、またある時から痛みが発生し出すことがあります。痛みに関連して涙や鼻水が出たり、瞼が下がったりといった自律神経症状を痛みと同じ側に伴うことが特徴です。片頭痛と同じように頭痛に伴って吐き気を起こすことがありますが、片頭痛の発作時では暗い部屋でじっと痛みに耐えるといった行動が多い一方で、群発性頭痛では発作時に横になることが出来ず、ひっきりなしに動きわるという傾向があります。

激烈な痛みを伴うため、片頭痛に用いる痛み止め以外にも、再発を予防するためにステロイドの内服治療を行います。それでも頭痛をコントロールしきれない方もいます。漢方薬は痛みを改善するとともに西洋薬の効果を出しやすくし、また西洋薬の副作用を予防していく傾向もあります。西洋薬での治療がうまくいかない場合には、漢方治療を検討してみるべきだと思います。

その他、病院にて原因不明とされ、さらにはっきりと分類することのできない頭痛もあります。漢方治療の場合、他の病気が関与していない原発性の頭痛であれば、こまかく病名が分類されてなくても治療にあまり差し支えません。病態の捉え方が西洋医学とは異なるためです。原因不明とされる頭痛でも、東洋医学的な捉え方を正確に行うことさえできれば、改善へと向かわせていくことが可能です。

使用されやすい漢方処方

①呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
②桂枝加桂湯(けいしかけいとう)
③五苓散(ごれいさん)
④苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
⑤川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)
⑥当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
⑦柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
⑧抑肝散(よくかんさん)
⑨清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)
⑩桂枝去桂加茯苓白朮湯(けいしきょけいかぶくりょうびゃくじゅつとう)
⑪釣藤散(ちょうとうさん)
⑫半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
※薬局製剤以外の処方も含む

①呉茱萸湯(傷寒論)

 漢方における代表的な片頭痛治療薬。昭和の大家・大塚敬節先生の解説が有名。それを要約すると以下のようになる。「発作性にくるはげしい頭痛に用いる。多くは片頭痛の型でくる。発作のはげしい時は、嘔吐がくる。発作の起こるときは、肩かくびにかけてひどくこる。このくびのこり工合いが、この処方を用いる1つの目標になる。発作の時に診察すると、心下部が膨満し、患者も、胃がつまったようだと訴えることが多い。・・・」呉茱萸湯は苦辛く飲みにくい薬としても有名。ただしこの処方に適応する方は不思議と問題なく飲めるということが多い。頭痛が改善され、発作が減るにつれて飲みにくくなる方もいる。一つ一つの薬味が非常に重要な処方で、エキス剤か煎じ薬か、生薬の質や量に効果が左右されやすい。有名ではあるが、実際に効果を上げるためには運用にコツがある。
呉茱萸湯:「構成」
大棗(たいそう):呉茱萸(ごしゅゆ):人参(にんじん):ひね生姜:

②桂枝加桂湯(傷寒論)

 本来下腹部から胸に突き上げてくる動悸様症状に対して用いる方剤。これを「奔豚(ほんとん)」という。転じて頭部の血行障害を是正する薬能を持つことから頭痛に応用される。痛みは拍動性でドクドクと脈打ち、寒い所から急に温かい場所へ行ったり、急にクーラーで冷やされたり、家に帰って急にリラックスしたりといったタイミングで痛みが生じやすく、また平素より顔がのぼせやい。このような体質者に適応することが多い。桂枝は体質を選ぶ薬という印象がある。
桂枝加桂湯:「構成」
桂枝湯の桂枝を増量したもの。桂枝(けいし):芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):大棗(たいそう):生姜(しょうきょう):

③五苓散(傷寒論)

 「水飲内停(すいいんないてい)」と呼ばれる一種の水分代謝異常に用いる方剤。口渇・小便不利という症状を目標とすることが多い。頭痛に多く用いられているが、この処方が適応となる頭痛はやや特殊な状態である。著効する場合には小便の量が増えて、即効性をもって頭痛が改善する。夏場で汗をかいた後や、飲酒、味の濃いものを食べた後などに、この病態が発現しやすい。
五苓散:「構成」
桂枝(けいし):茯苓(ぶくりょう):蒼朮(そうじゅつ):沢瀉(たくしゃ):猪苓(ちょれい):

④苓桂朮甘湯(傷寒論)

 茯苓・桂枝・白朮・甘草という各構成生薬の一文字ずつを取って苓桂朮甘湯という。平素より立ちくらみが多く、頭痛が気圧や気温の変化つまり天候に左右されるというタイプに効果を発揮しやすい。気の巡りを調え、水分代謝を是正するという処方であるが、自律神経の乱れより発する頭部の血行障害に用いられる。立ちくらみとともに、動悸して息苦しく、やや貧血の傾向がある者。浮腫みやすく、朝が弱く、夜になるとむしろ活動的になる者。こういった体質の者に著効しやすい。類似処方として茯苓甘草湯や茯苓沢瀉湯がある。これらの方剤も頭痛に著効することがある。生薬1つ2つの違いしかないこれらの処方は、その運用に大きな違いがある。
苓桂朮甘湯:「構成」
茯苓(ぶくりょう):桂枝(けいし):白朮(びゃくじゅつ):甘草(かんぞう):

⑤川芎茶調散(太平恵民和剤局方)

 もともと鼻汁・鼻閉などの風邪様症状に伴う頭痛を改善する処方であるが、頭痛治療薬としても有名。頭痛治療に用いられる処方の中には、もともと風邪薬として使用する目的で作られたものが多くある。葛根湯や五積散などがそうで、これらは感冒薬であると同時に頭痛治療薬でもある。拍動性の痛みというよりは、こめかみが締め付けられるように痛いという場合に良い。
川芎茶調散:「構成」
川芎(せんきゅう):香附子(こうぶし):白芷(びゃくし):羌活(きょうかつ):荊芥(けいがい):防風(ぼうふう):薄荷(はっか):甘草(かんぞう):細茶(さいちゃ):

⑥当帰芍薬散(金匱要略)

 婦人科系疾患治療薬として有名な本方は、頭痛に対しても著効することが多い。痛みに重さを伴いやすい。頭に重い帽子をかぶっているような感覚と表現されることもある。またこめかみの辺りの締め付けられるような痛みにも良い。色白で、めまいを伴ったり、冷え性で浮腫みやすい者。本方は使用される機会の多い処方ではあるが、のぼせる傾向の者に用いると、のぼせを強め頭痛を悪化させることがある。処方を変更するか、薬能を調節しなければならない。
当帰芍薬散:「構成」
当帰(とうき):川芎(せんきゅう):芍薬(しゃくやく):茯苓(ぶくりょう):蒼朮(そうじゅつ):沢瀉(たくしゃ):

⑦柴胡疎肝湯(医学統旨)

 筋肉の緊張を和らげて血流を促し、自律神経の乱れを是正する薬能を持つ。本来「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼ばれる自律神経の緊張状態に適応する方剤で、肝気鬱結を解する四逆散という基本方剤の変方。四逆散に川芎・香附子などの血行を促す薬物を加えている。肩こり・締め付けられるような頭痛・ストレスで悪化する頭痛などに良く用いられる。類似処方に抑肝散がある。
柴胡疎肝湯:「構成」
柴胡(さいこ):芍薬(しゃくやく):川芎(せんきゅう):香附子(こうぶし):青皮(せいひ):枳殻(きこく):甘草(かんぞう):

⑧抑肝散(保嬰撮要)

 本方は自律神経失調や脳神経疾患(脳血管障害後遺症やパーキンソン病、アルツハイマー)などへの適応で有名であるが、柴胡疎肝湯と同様、頭痛に対しても非常に優れた効果を発揮する。本方の運用については和田東郭の口訣が有名で、「多怒・不眠・性急」とその適応を端的に示している。緊張して手足が冷え震える傾向があり、寝つきが悪くイライラしやすい者。青筋を立てて怒るというような者によい。内風をしずめる釣藤鈎を含むところが本方の特徴。怒気は風にて巻き上がると頭でこじれる。頭部でうず巻く風をひも解く薬能がある。したがって頭痛とともに耳鳴りや卒倒するようなめまい感を伴う者。黄連を加える時もある。東郭は本方にかならず芍薬を加えて用いていた。
抑肝散:「構成」
当帰(とうき):川芎(せんきゅう):茯苓(ぶくりょう):白朮(びゃくじゅつ):甘草(かんぞう):柴胡(さいこ):釣藤鈎(ちょうとうこう):

⑨清上蠲痛湯(寿世保元)

 『寿世保元』という書物に一切の頭痛に効果があると記載されている処方。それだけでは非常に曖昧であり、現代における使用例もそれほど多くはない。生薬構成から判断すると、アレルギー性の炎症を介在させる頭痛に効果を及ぼすと推測できる。臨床例では三叉神経痛や顔面痛に著効したものがある。また群発性頭痛にも用いられる。浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣』には麻黄附子細辛湯加川芎・防風や大三五七散など、細辛剤や附子剤を用いて頭痛・神経痛を治す手法が述べれている。
清上蠲痛湯:「構成」
当帰(とうき):川芎(せんきゅう):防風(ぼうふう):白芷(びゃくし):羌活(きょうかつ):独活(どっかつ):蒼朮(そうじゅつ):菊花(きくか):蔓荊子(まんけいし):細辛(さいしん):黄芩(おうごん):麦門冬(ばくもんどう):甘草(かんぞう):生姜(しょうきょう):

⑩桂枝去桂加茯苓白朮湯(傷寒論)

 片頭痛や緊張型頭痛など、うまく使うと即効性をもって頭痛に著効する方剤である。この処方の運用については古来より議論されているが、その使用方法を明確に定める文献は少ない。しかし実際には多くの処方の原型といってもよい基本処方であり、本来は「心下満微痛」という胃部の不快感を目標にする胃腸の薬である。臨床の上手い先生ほどこのような処方の運用に長けている印象がある。
桂枝去桂加茯苓白朮湯:「構成」
芍薬(しゃくやく):甘草(かんぞう):生姜(しょうきょう):大棗(たいそう):茯苓(ぶくりょう):白朮(びゃくじゅつ):

⑪釣藤散(普済本事方)

 頭痛治療薬としての運用は大塚敬節先生の『症候による漢方治療の実際』に詳しい。近年の研究によりその効果のエビデンスが明らかになってきている。ただしこの処方が適応となる頭痛はやや特殊である。早朝目が覚めた時に頭痛し、動いているうちに忘れる。早朝の頭痛でなくても、のぼせて肩がこり、フワフワしためまい感を訴え、耳鳴りや目の充血があり、瞬きが多く眼がくしゃくしゃするという方。大塚先生は脳動脈の硬化に基づくものと示唆しているが、臨床的にも確かにと感じる部分がある。高脂血症や高血圧があり、動脈硬化を指摘されている方。原型は温胆湯という処方。温胆湯適応者のように胃がつまりやすい方は、興奮して身体上部に熱を蓄し、脈中の陰分を損ないやすく、血管が詰まりやすい。温胆湯もまた、頭痛治療に用いられる方剤である。
釣藤散:「構成」
半夏(はんげ):生姜(しょうきょう):陳皮(ちんぴ):茯苓(ぶくりょう):人参(にんじん):麦門冬(ばくもんどう):甘草(かんぞう):菊花(きくか):石膏(せっこう):防風(ぼうふう):釣藤鈎(ちょうとうこう):

⑫半夏白朮天麻湯(脾胃論)

 身体虚弱にて胃腸弱く、体力がなく頭痛を訴えるもの。胃腸虚弱者の頭痛やめまいの治療薬として有名である。頭痛に頻用される傾向があるが、胃腸虚弱者であっても片頭痛や群発性頭痛のように、急激かつ強力に生じる痛みに対してはあまり効果がない。あくまで頭痛の本治薬(頭痛が起こりにくい体質へと向かわせていく薬)である。中等度から重度の頭痛には他薬を以て頭痛を抑えた後に、本方にて本治を図る。
半夏白朮天麻湯:「構成」
半夏(はんげ):白朮(びゃくじゅつ):蒼朮(そうじゅつ):陳皮(ちんぴ):茯苓(ぶくりょう):天麻(てんま):麦芽(ばくが):神麹(しんぎく):黄耆(おうぎ):人参(にんじん):沢瀉(たくしゃ):黄柏(おうばく):生姜(しょうきょう):乾姜(かんきょう):

臨床の実際

「片頭痛・群発性頭痛」の漢方治療

●治療のポイント
片頭痛や群発性頭痛の漢方治療では、即効性の高い漢方薬を選択できるかどうかがポイントになります。片頭痛・群発性頭痛の発作は突然起こります。そのため西洋薬の服用回数を減らし、頭痛を起こらない状態へと導いていくためには、どうしても即効性の高い漢方薬を選択する必要があります。

例えば西洋薬は発作時に頓服で、漢方薬は頭痛が起こりにくい体質にしていくために長期に服用する、という治療の仕方もあります。これは頭痛以外の治療でも確かに良く行われることではあります。しかし片頭痛・群発性頭痛に関しては、少なくとも痛い時に飲んで痛みが和らぐというぐらいの処方を服用していなければ、頭痛の程度・頻度ともに改善へとは向かいません。私の経験では頭痛を起こしにくい体質へと向かわせるためには、発作的な痛みを緩和させることのできる即効性のある方剤を選択し、さらにそれをある程度の期間服用していくというのが、最短の治療方法です。

●「呉茱萸湯」と「五苓散」の実際
呉茱萸湯と五苓散は、昭和の大家である大塚敬節先生の『症候による漢方治療の実際』で紹介されて以来、頭痛治療に多く用いられるようになった方剤です。この本ではその運用のコツも詳しく紹介していて、その後他の先生方の追試もあって片頭痛治療に頻用されるようになりました。呉茱萸湯は確かに片頭痛に有効で、しばしば著効します。呉茱萸湯のエキス顆粒剤でも、片頭痛発作をある程度緩和する薬能を持っています。ただしエキス剤を一律的に服用するだけでは、呉茱萸湯が本来持っている効能を充分に引き出し切れているとは言えません。分量・生薬の質・ひね生姜の有無および量、こういったものの違いによって呉茱萸湯はその効能を大きく変化させます。したがってエキス顆粒剤を通常量用いて効果がなかったとしても、それで呉茱萸湯では効かないと断定することはできません。事実、呉茱萸湯のエキス顆粒剤を服用してまったく効果を感じなかった方でも、以上のことを説明した上で呉茱萸湯の煎じ薬を服用してもらうと、テキメンに効果を発揮する方がおられます。一番変化するのはやはり即効性です。即効性を感じる薬方を継続していくことで、はじめて頭痛が起こらない状態へと変化しはじめます。

五苓散も頭痛に頻用される処方の一つです。ただし五苓散に関しては、やや特殊な状態でないと著効はしません。口渇・小便不利という症状が2大目標となる方剤ですが、これは血管内水分の一時的な脱水に近いような状態を指しています。脳内浮腫による脳圧の亢進を予防するというような薬理が説明されていますが、誰に使ってもこれが予防できるというわけではありません。その目的に用いるなら沢瀉湯(白朮・沢瀉の2味で構成された処方)の方がまだ良いかもしれません。すなわち五苓散は片頭痛治療・群発性頭痛治療に頻用される処方ではありますが、五苓散が著効する頭痛ではないと、いくら継続服用しても頭痛を起こさない体質へは変化していかないと思います。例えば私の経験を一つ上げれば、お酒飲みの方の片頭痛には著効しました。毎日アルコールを飲み、深酒すると次の日に片頭痛が発症するという方です。二日酔いに近い状態で、朝起きるとからっからに喉が渇き、小便があまり出ない。五苓散料をお出しした後、一服で著効し、その後約3か月継続服用してもらった時点で片頭痛の消失を確認し、排薬しました。五苓散を服用し、1か月たっても痛みが変わらない。そういう方に五苓散を継続服用してもらい、そのうち五苓散が効き始めたという経験が私にはありません。

片頭痛や群発性頭痛のように突発的な激しい痛みが生じる頭痛では、頭痛が確かに良くなっていると実感できる薬を服用し続けることが重要です。そのためには適応の正確さと分量的・質的問題が深く関わってきます。特に桂枝・生姜・ひね生姜・乾姜・川芎・呉茱萸・蒼朮・沢瀉・細辛といった生薬の一つ一つの適応と運用方法がポイントになります。

「緊張型頭痛・その他の慢性頭痛」の漢方治療

片頭痛や群発性頭痛に比べて、より日常にあふれている頭痛なだけに放っておいている方が多いと思います。疲れた時や気候の変化、温度変化やストレスなどといった様々な要因に関連して起こります。頭が痛いものの日常生活に差し障りがあるわけでもなく、またずっと痛いわけでもない、そのために痛い時は痛み止めを飲んでなんとかしのいでいるという方がほとんどです。

しかしこういった軽度から中等度の痛みを生じる頭痛は、放っておいて改善するものでもありませんし、放っておくと徐々に強まっていく傾向があります。かなり悪くしてから初めて来局され、そこから治療して頭痛のない生活を送れるようになると、口をそろえてもっと早く治療しとけば良かったと言われます。頭痛は身体の不調のサインだと思ってください。頭痛を起こしている方の多くが、頭痛以外にも何らかの不調を体に抱えています。緊張型頭痛では特にそういう傾向があり、頭痛が改善するとともに、同時にこんな症状も良くなるのかと驚かれる方もいます。

●緊張型頭痛の具体的治療方法
東洋医学的には、頭痛は様々な要因によって起こる症状で、適応する方剤も多種に及びます。緊張型頭痛では特にその傾向が強いと思います。そしてその要因は、ほとんどの場合が身体の体質的傾向からきています。したがって治療においては「標治(ひょうち)」つまり頭痛だけを止める治療を行うというよりは、「本治(ほんち)」つまり頭痛の本(もと)を治療して頭痛を起こらい体質にしていくという治療を主とします。本を治す治療だとしても、頭痛に即効性がないわけではありません。的確に本治を行なえば、比較的早い段階で頭痛が起こらない状態へと向かいます。

〇桂枝・甘草剤
桂枝甘草剤は頭痛に頻用される処方群です。桂枝湯をはじめ、桂枝加桂湯・桂枝去芍薬湯・小建中湯などが用いられます。これらの処方は生薬一つ・二つの微妙な差をもつ処方群ですが、その薬能には確かな違いがあります。習熟した治療家であるほどに、これらの微妙な差を理解し、使い分けることができます。そしてそれが明らかに治療効果にも反映してきます。

また桂枝甘草湯に茯苓という利水剤を加えた処方群を苓桂剤といい、やはり頭痛治療に頻用されます。苓桂朮甘湯・茯苓桂枝五味甘草湯・茯苓甘草湯・茯苓沢瀉湯などがこれに当たります。色白で顔がほてりやすく、めまいや動悸を感じやすい。また浮腫みやすく、朝に顔が腫れて、夜は足が張りやすい。朝弱く起きにくいが、夜になると元気になり、むしろ深夜くらいになると調子が良い。こんな体質的傾向を持つ方に適応しやすい処方群です。

〇芎帰剤
一方で、当帰・川芎を含む処方群を芎帰剤といいます。当帰・川芎には血行を促す効能があり、特に婦人科系の病に頻用されますが、頭痛治療においても無くてはならない組み合わせです。特に背景に生理不順や月経前緊張症・月経困難症などがあり、月経と関連して頭痛が起こるという方に適応しやすい処方群です。当帰芍薬散はその代表です。芎帰に浮腫みを取る利水剤と、興奮を去る芍薬を入れた処方で、頭部・手足・下腹部などの血行を促すことで痛みと冷え・浮腫みを去る薬能を持っています。抑肝散も芎帰剤に属し、頭痛治療に用いられます。この処方はむしろ自律神経の過緊張状態に適応する方剤で、イライラして攻撃的になる、寝つきが悪く途中で覚醒しやすいといった方に適応します。当帰・川芎は単独でもそれぞれに痛みを去る薬能を持っています。例えば当帰剤としては逍遥散や加味逍遥散など、川芎剤としては柴胡疎肝湯や川芎茶調散などが頭痛治療に頻用されます。

●最も重要なこと
頭痛は以上にあげたものの他にも多くの処方が用意されています。ただし沢山の処方があったとしても、実際に自分に合う薬はそう多くはありません。したがって最も重要なことは、自分に合った処方を選択できるかどうかであり、頭痛を起こす本となる病態を的確に見極めなければ、それは出来ません。多くの処方が用意されているということは、それだけ頭痛には多くの病態があるということです。そして逆に言えばどのような緊張性頭痛の方であっても、対応する手段が必ずあるということでもあります。

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