◇養生の実際・冬 ~風邪予防の実際・風邪にはひくタイミングがある~

◇養生の実際・冬
~風邪予防の実際・風邪はひくタイミングがある~

<目次>

・絶対に風邪をひきたくないという方へ
・風邪予防の基本は「タイミング」を知ること
・風邪をひく「タイミング」とは?

絶対に風邪をひきたくないという方へ

「何としても風邪をひきたくない。」

今年は特に、そう思われている方が多いと思います。

今や社会現象となった新型コロナ感染症。生活に大きな変化を余儀なくされるこの病に感染したくないというのは勿論のこと、それを疑われてしまうような風邪でさえひきたくないと、誰もが感じておられると思います。

風邪の予防方法には様々なものがあります。うがい・手洗いは馬鹿にできませんし、充分な睡眠・食事の節制にも当然のごとく気を付けるべきです。

しかし、このような養生を心がけたとしてもひく時はひく、それが風邪でもあります。

そこで今回は、これからの忙しい時期に先駆けて、さらに一歩踏み込んだ養生をご紹介いたします。

風邪予防の基本は「タイミング」を知ること

あまり知られてはいませんが、風邪にはひくタイミングがあります

風邪のみならず、発熱や寒気を呈する感染症には、それが発症しやすいタイミングというものがあるのです。

東洋医学的な考え方というだけなく、実際に患者さまを観させていただいている中での私の経験則としてそれを感じます。風邪を引いた患者さまにその発症のタイミングを尋ねると、多くの患者さまが同じようなタイミングで風邪を発症させているのです。

そしてここで言うところのタイミングとは、外が寒いとか、季節の変わり目とか、そういう外的要素に起因したタイミングではありません。あくまで内的なもの、つまり「生活の中であることを行った時に、体が感染症を発症しやすくなる」というタイミングがあるのです。

すなわちこの状況は自分自身で避けることの出来るものです。天気やストレスは自分でコントロールすることは出来ませんが、今からご紹介するものは生活習慣に起因したもの。自分自身で気を付け、避けることが可能です。

したがってこの発症しやすいタイミングを知っておくと、風邪をかなり予防しやすくなります。「この状態はマズいぞ」・「このままでは危ないぞ」と、発症を先回りして避けることが出来るようになるからです。

今年、絶対にひきたくない風邪。それを未然に予防するために、今回の内容を是非覚えておいてください。頭の片隅にでも構いません。自分自身でその危険信号を少しでも察知して頂けたらと思います。

風邪をひく「タイミング」とは?

風邪にはひきやすいタイミングがある。このタイミングには、大きく分けて2つあります。

ある2つの状況において、感染症は特に発症しやすくなります。そしてその状況とは、誰しもが経験することの多い、日常生活の中でとてもありふれたタイミングでもあります。

実は年末・年始こそが、そのタイミングを最も発生しやすい時期です。結論から申し上げると、以下の2つのタイミングで風邪は発症しやすくなります。

1.休暇に入り、肩の力が抜けた時。
2.食後、お腹いっぱいまで食べたあと。

ここまで引っ張っておいて、え?そんなこと?と思われた方もいらっしゃるかと思います。でも要注意です。風邪は本気でこの2つの状況で発症します。

あくまで私自身の経験則ですので、科学的な研究に裏付けられたものではありません。しかし年末に風邪をひいてしまったという方は、多くのケースで明らかにこれらのタイミングで発症しているのです。その考え得る理由も含めて、解説していきたいと思います。

1.休暇に入り、肩の力が抜けた時。

忙しい年末、何とか仕事や学業をこなし、やっと待ちに待った休暇に入る。そして風邪発症、というパターンです。

休暇に入ってさぁ休むぞ、たくさん遊んでやるぞと思っていたら風邪をひいちゃったというケース。何となく経験あるなぁという方も多いと思います。このタイミングは、体が感染を発症しやすくなる典型例です。

気が緩んだから。そう言ってしまえば説明は終わりですが、もう少し詳しく解説してみたいと思います。

人は何かを頑張っていたり、集中してりしていると(特に体を動かしていると)、身体の外側に血液が広がっていきます。

臓器の中でも上部に位置する心臓や肺の機能が盛んに働き、その結果皮膚表面へと血流が促されていきます。

免疫機能を司る白血球は血液に乗って運ばれています。したがってこのとき人体の免疫力は外側に対して働きやすくなります。つまり外からの菌やウィルスに対して、その侵入を未然に防ぎやすい状態を形成しているわけです。交感神経によって導かれるこれらの働きこそが、いわゆる「気を張っている状態」です。

そしてこの状態が急速に解除される時、人体の免疫力は一気にスキを見せます。

外側に集まっていた血液が人体内部に収束する。すると体の外側の血流が急速に停滞していきます。そして外からの刺激に対して一時的に無防備な状態へと陥ってしまいます。集中して頑張っていた期間が長ければ長いほど、その後解除されたときの外部血流停滞の程度は大きく・深くなります。

つまり忙しく頑張り続けていた方が急激に体を休めた瞬間ほど、免疫力は大きなスキを見せてしまうことになるのです。いわゆる「気が緩む状態」。これが、急に肩の力が抜けた時に風邪を引いてしまう原因だと考えられます。張り詰めていた風船がしぼむ時に、菌やウィルスは人体に深く侵襲しやすくなる。自律神経とそれに伴う血流状態の変化によって、この現象を捉えることが可能です。

このような状況が一般的に生じやすい時期こそが年末・年始です。これからの年末に向けてどんどん忙しくなっていくこの時期、仕事中は体のことを顧みなくても比較的元気という方も多いと思います。

しかしだからこそ、その後急激にとる休息がとても危険なのです。休息を取る際は、是非以下のことに気をつけながら風邪予防を図ってください。

◯休みに入ったら・・・
・休みに入っても一日中ゴロゴロしない。朝起きて活動を始め、夜は早めに寝る。
・デスクワークの方などは、休みに入ったら運動を始めてみる。決して無理はせず、散歩や軽めのランニングを行って血流を促すことを意識してみる。

要するにリズムです。免疫力は生活のリズムを激変させた瞬間にスキを生みます。ホッと一息つく、その瞬間にこそ、自律神経と血流と免疫力は相関して崩れてしまうのです。

心はホッと一息、でも体のリズムを崩さない。簡単なようでいて難しいことですが、意識しているかいないかで、相当違うと思います。

2.食後、お腹いっぱいまで食べたあと。

気が緩む時に起こる急激な免疫力の低下、それと同時に意識していただきたいことは何といっても食事です。

普段そうでもないのに、突然急にお腹が空くことはありませんか?

特に仕事や学業を何日か続けて頑張ったあと。急に食欲が出てガツガツと美味しいものを食べる、そしてなんだか沢山食べすぎてしまったなぁと。誰でも経験のあることだと思います。

この突然湧き出てくる食欲。実はこれこそが免疫力を極端に下げてしまう危険信号です。

ゆっくり良く噛んで、そして腹八分目に控えることができれば問題はありません。しかしお腹いっぱいまで食べてしまった瞬間、人体外部の免疫力は極端に減弱していきます。

これは、ある漢方の先生に教えていただいたことです。

急激にお腹が空いたときは危ないよ。腹一杯まで食べた次の日、人は風邪をひくものさと。

かなり昔に聞いたものでした。そして私はこの教えをすっかり忘れていました。ある時、確か年末だったと思います。やっと休みが取れてなんだかすごく食欲が湧いて、夜遅くに大食した次の日に、私は風邪を引きました。

そして思い出しました。そう言えば昔、教えたもらったことがあったなと。さらに今までにも、確かにそんな経験をしていたなと思い出しました。それ以来、風邪を引いた患者さまにその発症時の生活を詳しく伺うと、前夜もしくは近日中に大食をしているというケースが確かに多いことがわかりました。

体は動いている所に血液が集まります。

手をグーパーグーパーしていれば手に血液があつまり、胃を働かせていれば胃に血液があつまります。

急激に腹が減るケースは、多くの場合比較的長い時間、胃腸に物が入っていなかった時です。その状態から突然胃腸に物を入れると、胃腸は急激かつ激しく動くことになります。

すると急激に活動を始めた胃に、身体の血液がどんどん集約されていきます。大食すればするほど、その活動は長く・深く続くことになります。胃腸は体の中心に位置しています。つまり人体外部の血流が中心に引っ張られていくわけです。それによって外部の血流は急速に減弱していきます。先程の気が緩む状態と同じです。大食することによって、人為的に気が緩む状態を形成しているわけです。

最も危険なのは、休暇に入って気が緩むのと、食欲が急に湧き出て大食してしまうこととが同時に起こった時です。

一時的に免疫力がガタ落ちします。そして多くの場合、風邪を引くきっかけを作り出してしまいます。

何かを頑張ってやり続けた後、休みに入ったと同時に夜遅くまで飲み食いする。そしてお腹いっぱいになって爆睡し、次の日昼まで寝てましたという状況。この状況こそがまさに最悪です。私は、大学の卒業試験後にコレで風邪を引きました。そして最悪のコンディションでそのまま国家試験に望みました。今では笑い話ですが、非常にキツい経験でした。皆さまには、是非気をつけていただきたいと思います。

年末・年始は食生活が変化しやすい時期です。外食や夜遅くまで食べる機会が自然に増えてくるとも思います。頭の片隅にでも、是非覚えておいてください。大事な時期に自ら免疫力を落としにかかるようなお馬鹿さんは私一人で十分かと。生活の中での下のような気づきが、風邪予防においてはとても大切です。

◯急に食欲が湧いたら・・・
・「危ない」と感じてください。
・そしてお腹いっぱいまで食べない。早食いを止めて、かつ夜遅くの食事は控えましょう。

急に食欲が出てきた時に、「危ない」と思うことが大切です。

そしてあえて満足するまで食べない。かつ、できるだけ良く噛んで食べるように気をつけてください。

胃の声を聞く。私はそれを重視するようになってからあまり風邪をひかなくなりました。自分自身はそれほど胃が弱い方ではありませんが、強い弱いに関わらず、自律神経と免疫力とを自らの采配で調節できるものこそが食事だと覚えておいてください。