店主の日常・あれこれ

融通無碍のカラクリ

脾胃気虚を補う基本処方「四君子湯(しくんしとう)」と、湿痰という胃腸の水分代謝からくる吐き気などを止める「二陳湯(にちんとう)」。両者を合わせた構成を持つのが「六君子湯(りっくんしとう)」。効果と名称とが、非常に分かりやすくつながっています。しかし私は、最近この「六君子湯」をほとんど使わなくなりました。

ストーリーを診る

漢方の臨床を始めて十数年が経ちます。患者さまにはお一人お一人全く異なる、壮大なストーリーがあります。現状はただの一部でしかなく、その物語にこそ治療のヒントがあります。そして、これからもその物語は続きます。治療はその物語を、より良い方向へと導くためのもの。西洋医学も東洋医学も、到達しようとしている場所は同じだと思います。

年始のご挨拶

確実に変わっていく地球。それを私たちは、すでに天候の波として感じることができます。人は天に生かされている、そういう着想が根本にある東洋医学ですが、今後の東洋医学は、今までとは違う、新たな局面を迎えているように思います。時代時代で変化を続けてきた漢方、その正道をこれからも継承するべく、今年も精進してまいります。

今年一年の感謝を込めて

お一人お一人の患者さまに起こる、さまざまな体調変化。そこにご対応しながら、いかに症状を安定させていくか。やはり天候の影響が強い気がします。年を重ねるごとに荒れる空。来年はできるだけ安定してくれることを願うばかりです。今年、当薬局を頼っていただいた患者さまたちに、深く、深く、感謝いたします。

暮れとピカソとカルテ整理

身になる・腑に落ちる。漢方治療においてはこの感覚が、私はとても大切だと思っています。見て、聞いて、話して、試し、理解する。そういう「経験」を積み重ねる中で、なるほどなと、自身が深く、理解することが「実感」です。実感の無い理解は、ただ知っているだけに過ぎず、その知識は往々として、あまり臨床の役にはたちません。

信玄公祭りと浮かれた心

不安と共にくる、居ても立っても居られないというソワソワ感。古人は経験的に、この時にある生薬を使うことを編み出しました。桂枝加竜骨牡蛎湯とか、柴胡加竜骨牡蠣湯で有名な竜骨牡蛎です。不安からくる「落ち着かなさ」に、確かに効くことが多いのです。多分、浮き上がる感覚を、石と貝(鉱物)の重さで、落ち着けようとしたのだと思います。

すでに知っていること

患者さまは、治療が進んでいくと、皆、口をそろえてこうおっしゃいます。何で悪化するのかが分かりやすくなってきた、と。例えば睡眠不足であったり、例えば食事の不摂生であったり。天候であったり、月経であったり、悪化のきっかけを自覚できるようになる。知識ではなく、実感として理解できる。この気付きこそが、病が治るということです。

口癖

漢方治療には、残念ながら、決められた「答え」というものが用意されていません。どうしてもその都度都度で、解答の導き方を考えなければなりません。凡そのフォーマットがあることは確かですが、教科書通りには決していきません。だから漢方治療は、一つ一つ、たくさんの問題を解決し続けなければ、成功へと到達することができません。

現代に生きている私たち

神秘的というイメージ、不思議というイメージ、少なからず東洋医学にはそういう印象がある一方で、今でも残っているものに関しては、どこかで薬として認められている印象もあります。今私たちが目にしているのは、淘汰という何重ものフィルターによって、濾過されてきた薬たちです。

後から気が付く

なぜ自律神経は、自律して働いてくれているのでしょうか。人間は自分の意志で生きているように見えて、実はそれだけでは生きてはいけません。全自動であらゆる刺激を感知し、そこから然るべき動きを導く自律神経の働き。そういう神秘を宿しているのが人間です。意識の向こう側にこそ、それがあるということです。