養生の基本 4 ~睡眠~

2024年04月09日

漢方坂本コラム

 

【はじめに】

いかに安定した血流を維持し続けるか

先のコラムでも説明しました。これが養生の根幹になります。

人が病を得ないために、最も大切にするべきポイントであり、

個々に与えられたポテンシャル、その生命活動を十全に発揮するための条件になります。

これは年齢・性別にかかわりません。

またすでに病を得ている方では、特に重要であると考えます。

人体は血が流れているから生き、その流れが止まれば死ぬ。

安定した血流こそが命であり、そうできることこそが、

万人に共通した養生であると考えます。

そして、それを発揮するために必要になるのが、

「運動」と「食事」と「睡眠」。

養生の基本の三本柱です。

今回のコラムでは、何故これらが大切であり、基本になるのか、

その要点だけを端的に、ご説明していきます。

養生の基本「睡眠」

身体の血流を促す最大の動力は「筋肉」です。

そして筋肉を維持するためには、適度な「運動」を行うことが重要です。

さらに消化管も巨大な筋肉で出来ています。

したがって食事の「食べ方」も大変重要であるというお話を前回までしてきました。

そして今回、「睡眠」の重要性をお伝えしていくわけですが、

睡眠が大切なことは、誰しもが理解されている当然のことだと思います。

お考えの通り、さまざまな理由で睡眠は大切ですが、

今回は特に血流を維持するためにどうして睡眠が大切なのかを、お話ししていきたいと思います。

まず基本的に筋肉は、活動による疲労と、睡眠にる回復により、健やかな状態を保っています。

睡眠が不足すると当然のこととして、筋肉の回復が不足しがちになります。

したがって睡眠不足は筋肉の活動性、つまり血液を流すポンプを弱めます。

この機序で人は睡眠が不足すると、まずは血流が弱まっていきます。

睡眠の大きな目的の一つは疲労の回復です。

骨格筋は疲労しやすい筋肉であり、そのため毎日の睡眠がなければ同じ状態を保つことができません。

つまり睡眠は、回復という力を発動する生命活動の基礎です。

睡眠は生命力であり、睡眠不足はその力を損なう行為だと理解してください。

さらに睡眠不足は他の理由からも血流を乱します。

人は夜間、睡眠をとることで体の興奮を落ち着け、リラックス状態へと入ります。

すなわち睡眠が不足するとこの時間が削がれるため、いつまでも興奮状態が続いてしまいます。

つまり必ず交感神経の優位を生み、自律神経を乱すことで安定した血流を失わせてしまいます

睡眠不足をすることで、現象として最も簡単に確認できる症状があります。

まず、食欲が増えます。何か食べたいという欲求が強まり、コントロールできなくなります。

さらにイライラしやすくなります。我慢ができなくなる。

人によっては不安感が強くなったり、うつ抑感を生じることもあります。

これらは恐らく、睡眠という交感神経を落ち着ける行為が不足していることで起こる自律神経症状です。

患者さまを診ていると、このような形で過食やイライラを起こしてしまっている方を多く拝見します。

この場合、いくら漢方薬で改善しようとしても、睡眠をしっかり取って頂かなくては症状が治まりません。

睡眠はそもそも人が所有している大切な薬であり、これを失うと体は一気に回復力を失い、自律神経を大きく乱します。

人が行う拷問の中で、最もきついのが「眠らせないこと」だという話を聞いたことがあります。

私には頷けます。確かに、睡眠は食事や運動と並ぶ、生命活動の根本的習慣だと思います。

なぜならば睡眠不足は、人を簡単に不健康へと導くからです。

迅速に人を病へと変化させます。人がもつ許容力はあるにしても、それが続けば必ず体調を乱します。

また眠る最適時間が度々問題になりますが、

私の考えではかなり個人差があって当然だと思います。

4時間で調子よいという方がもいれば、私のように8時間が最適という人もいます。

それは個人差や年齢によってかなりバラツキがあるように感じます。

ただし、共通して言えることもあります。

夜12時から2時の間は、必ず睡眠をとる、深く眠っていた方が良いということです。

夜12時に熟睡しているためには、夜の11時には布団に入るべきです。

いくら睡眠時間が十分であったとしても、朝方寝て昼に起きるというのでは、十分な睡眠とは言えません。

この理由は、人は太陽の動きに依存して、生命維持がなされているからです。

地球上でもっとも安定した活動の一つが自転であり、地球上で行われる生命活動は、例外なくこの自転の中で生命活動が行えるように設計されていると考えます。

したがって太陽の上り下りに依存して人体は設計されている、

故に太陽から最も離れた12時から2時の間が、回復能力は発揮するピークだと考えられます。

さらに夕食の時間も大切です。

先のコラムで述べたように、夕食と睡眠との間は少なくとも3.4時間は開けるべきです。

すなわち、夕食は夜7時、もしくは8時には食べ終わっていることが理想(腹八分目)です。

この点は、仕事でどうしても食事が遅くなってしまうという方もいらっしゃいますので、

その場合は、夕食を軽めにして、朝ちゃんと食べるようにしましょうと、指導しています。

【まとめ】

運動と、睡眠と、食事。

これらが大切だということは、誰しもが疑わないと思います。

しかし当たり前のことほど、忘れやすいものです。

基本中の基本であることを理解しつつ、

もう一度生活の見直しを図ってみてください。

養生と聞くと、何か裏技があるように感じます。

体に良い食べ物、科学的にも根拠があるよと。

生活は乱れているが、それを補うことの出来る何か裏技が欲しいと。

はっきり申し上げれば、そんな裏技は存在しません。

そう考えてみませんか。

そしてもう一度生活を見直してみましょう。

最も現実的で、

最もお金がかからず、

そして確実に人体を健康へと導くもの。

それが、運動と、食事と、睡眠です。



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