生薬解説

【漢薬小冊子】桂枝・桂皮(けいし・けいひ)

東洋医学において桂枝(桂皮)は非常に重要な生薬であり、おそらく聖医・張仲景に、最も強烈なインスピレーションを与えた薬でもあります。その主成分たるシンナムアルデヒドは、東洋医学では陽気を補う(高める)薬だと言われており、体を温め、冷えを除く、さらに血行を上方向・外方向へと向かわせる効能があると認識されています。

【漢薬小冊子】半夏(はんげ)

主として嘔吐・咳嗽・腹張・咽痛に使われる半夏ですが、これらの薬能の柱は「水」ではない。むしろ「気」であるように私は感じます。咳を止めるのも、吐き気を止めるのも、水分代謝を改善して痰飲を除いているからではなく、身体の興奮状態を緩和させることで、咳や吐き気を沈静化しているという印象があります。

【漢薬小冊子】大黄(だいおう)

「将軍」、大黄。漢方の下剤として有名です。大黄は下剤というだけでは論じられない、奥深い薬能を備えた生薬です。便通を促すという他にも、重要な作用がたくさんあります。向精神作用や、血流を促す(駆瘀血)作用があります。したがって精神疾患や自律神経失調、さらに血流障害においても重要な生薬です。

【漢薬小冊子】石膏(せっこう)

天然の含水硫酸カルシウムで、組成はほぼCaSO₄・2H₂O。配合処方例として、越婢加朮湯、白虎湯加人参湯、麻杏甘石湯、防風通聖散などが挙げられます。漢方では大寒薬(体を冷ます薬)に分類され、さまざまな炎症を抑える薬として使われます。例えばアトピー性皮膚炎や蕁麻疹など、皮膚炎にはなくてはならない薬です。

【漢薬小冊子】附子(ぶし)

大熱薬に分類される附子。体を強く温め、生命力を鼓舞するための最終手段。その薬能は冷えをとり、新陳代謝を高め、痛みを止めると言われています。附子剤と聞くと、適応する病態は新陳代謝の衰えた、虚弱な状態をイメージします。基本はそれでも良い。しかし、附子の薬能を紐解くと、それだけでは論じられない奥深さがあるように思います。