漢方学習のススメ

漢方とアート 7

漢方の世界では、正解は一つではない。正しさは常に複数個ある。その中で、何を選択するかはその人の経験と感覚とに委ねられている。だから、感覚を磨くことがとても大切になる。今までの歴史上の名医には、必ず「型」があった。尾台榕堂(おだいようどう)には尾台の、浅田宗伯(あさだそうはく)には浅田の「型」があった。

義務教育と、漢方家が持つべき素質。

名医と呼ばれる漢方家であれば、皆一様に「古文・漢文」の大切さを、その意味を理解しているように思えます。臨床において最も必要な知識とは何か、ひいては人生において最も役に立つ知識とは何か、そういうことを理解しているかどうかの問題だと、私は感じるのです。人生で最も大切な能力とは。あなたはどんな能力だと思いますか?

桂枝湯(けいしとう)への思想 2

桂枝湯の深さ。それはそのまま東洋医学の深さと言っても過言ではありません。東洋医学史上、未だに解明し切れていない最大の謎。漢方の正道を進む上で、避けては通れない大きな関門です。ただ張仲景(ちょうちゅうけい)は、確実にヒントを残してくれています。すべては『傷寒論』に載っています。

漢方治療の心得 21

治療の考え方には二通りあります。一つは「現状に対して逆行する形を導く」という考え方。冷えているなら温める、熱があるなら冷ます。これが基本です。しかし考え方はそれだけではありません。「現状に対して同調する」という考え方があります。この考え方を持てるかどうかで、治療の幅は大きく変わります。

桂枝湯(けいしとう)への思想 1

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)の類。私が良く使う処方たちである。桂枝湯は「衆方の祖(あらゆる処方のおおもと)」と言われるくらいだから、その加減(改良したもの)となるとそれこそ沢山の処方を包括していることになる。

漢方とアート 6

融通無碍(ゆうずうむげ)。漢方の世界では、治療に長けた先生方の処方運用をしばしばこう表現します。一つの見方・考え方にとらわれるのではなく、自由自在にものを見、考え方を変える…。どんな病であっても個人差があり、その差を見決めるためには疾患というカテゴリーから時に思考を外さなければなりません。

漢方治療の心得 20

私が得てきた漢方治療の技とコツを、お伝えするべく始めた「漢方治療の心得シリーズ」。早いもので20回目を迎えました。たくさんの先生方から、そして、たくさんの患者さまたちから、本当にたくさんのことを教えてもらってきたのだと感じます。20回目を迎えた今回は、私が最初に感じた臨床のコツをお話します。

2種の学問

学問には2種あり、反復可能な事象を扱うものと、そうでないもの。前者は「科学」に代表され、後者は「芸術」に代表される。人はこの2つを常に内包したものである。一般化できない、其の人にしか通用しない正しさ、それを掴むために研鑽された学問が漢方であるとしたら。何となく私には辻褄が合うのです。

当たり前に引かれた線

昭和の名医・中島随証(なかじまずいしょう)先生。癌の患者さまを「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」で治癒せしめたという逸話があります。アレルギー性鼻炎や喘息の治療薬として有名な小青竜湯を癌に使った理由は「肺に水があったから」。当たり前に行われた時の理由は、いつだってシンプルです。

意地悪な先生

患者さまに合った処方をお出しすることが解答だとするならば、その解答へと至る道筋にこそ、症状を改善させるための薬能が宿っています。つまり解答を見つける能力よりもずっと、問題を見つけ、作り出す能力の方が臨床では求められています。修業時代にお会いしてきた「意地悪な」漢方の先生方は、私にそれを教えてくれました。
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