参考症例

■症例:起立性調節障害(OD)

起立性調節障害と診断された女の子。近くの漢方薬局で補気の名方・補中益気湯をもとにした煎じ薬で一旦良くなったが、再発。その処方が間違いだとは言えないが、再発してしまう状況を鑑みると、正しいとも言えない。私が感じたのは「気」ではなく、むしろ「水」だった。水の失調。今回の病では、的確な「治水」が行えるかどうか、それが全てである。

■症例:頭痛・胃痛・下痢

主訴は、定期的に起こる頭痛、胃痛、腹痛と下痢。痛みに悩まされる方特有の、眉間にしわを寄せる表情が印象的だった。腸や子宮といった骨盤内臓器の活動・機能が乱れていることは明白だった。今回の治療では、痛みを止めることが絶対条件になる。如何に骨盤内の乱れを改善できるのか。治療方針としては、そこから外れることはないと感じた。

■症例:お子さまの発熱(周期性発熱症候群)

周期性発熱症候群。お子さまに起こる、原因不明の自己炎症性疾患である。発熱、頭痛と腹痛、そして吐き気を伴い実際に食べたものを嘔吐する。食欲が減り、咽に膿が出だして、体を横たえる。風ではらうべき熱というものが、漢方の世界にはあって、古人はそれを「熄風(そくふう)」と呼んだ。体にそよ風が吹けば、熱は自ずと消散する。

■症例:胆管炎・胆石症

原発性胆汁性胆管炎(PBC)と診断された70歳、女性。古人は消化管の病を診る際、底に巣食う、腹の「緊張」を診た。その中の一つに、腹に限局した緊張を見て取れる場合がある。これらの病を「積聚(せきじゅう)」と呼んだ。この「積聚」という病の中に、現代でも通用する、胆管炎や胆石症治療のヒントが隠されている。

■症例:片頭痛・耳鳴り・更年期障害(ホットフラッシュ)

54歳、女性。服用を始めて2か月経った頃、体調はだいぶ改善し、頭痛も耳鳴りもホットフラッシュも、ほぼ気にならない程度に回復していた。こうなると良くなった分、悪くなるきっかけが分かりやすくなる。低気圧と、睡眠不足、そして食べ過ぎて胃に負担がかかった時。的確な養生と、特に下半身の筋トレが重要だとお伝えした。

■症例:腕の痛み・手指のこわばり

仕事にて日常的に手指を使うという女性から、治療のご相談を受けた。腕の痛みと、手指の強張こわばり。以前から漢方を試してみようと思い、当薬局に来局された。腕・手指の痺証には、頚椎などの骨に異常があるもの、そうではなく内臓に異常があるもの、そしてどちらにも属さず疲労の蓄積によるものと、さまざまな病態が考えられる。

■症例:PMS(月経前緊張症)・発熱と悪寒

月経前に必ず伴う感冒様症状。西洋医学的な解釈では難しいのかも知れないが、実は原始的な視点で見れば、これらは同一の状態を体に形成するものであると着想することができる。漢方には、PMSに対して様々な薬が用意されている。その中の一つに、もともと感染症のような発熱性消耗性疾患に用いられていたものがある。

■症例:PMS(月経前緊張症)・産後の不調

PMSに常用される名方・加味逍遙散(かみしょうようさん)。体力中等度から虚弱な方に使う処方。さらに比較的胃腸が弱く、イライラなどの興奮性の強いPMSに使う代表方剤である。しかし、今回の患者さまには、これではない。漢方では体格や腹、脈や舌などからその方の充実度を明らかにし、それを「虚実」と見立てて処方を選用する。

■症例:脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)

原因不明とされる病、脂漏性皮膚炎。マラセチアという菌が関与するとはされているものの、誰の皮膚にでもいるこの菌が、なぜ人によって悪さを起こすのか、未だにその理由は分かっていない。ただし臨床を経験していると、発症している方は皮膚のみならず、身体に何らかの不調を抱えている方が多い。

■症例:無月経

無月経の治療は、基本的に時間がかかることが多い。また月経がきはじめると、体もそのタイミングで不調の波を打つようになる。患者さまの場合もそうだった。治療途中で、思いのほか強い月経前後の症状が出現してきたが、血流を良くすることで無月経も、ジストニアも、疲労倦怠感も、結局のところ一緒に改善していった。
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