参考症例

■症例:冷え性・下痢

漢方治療では一つ一つの症状にこそ解答へのヒントがある。だからこそ、患者さまの訴えには何一つ疎かにできない大切さがある。しかし全ての症状を均等に扱っているわけでは決してなく、患者さまが治したい症状、それを改善するために、深く関連している別の症状も見極めなければならない。

■症例:パニック障害・自律神経失調症

「気を使う」「真面目」「内向的」自律神経を乱しやすい人が持つ、性格的特徴なのだという。このような性格だから、自律神経が乱れるのだろうか。性格は決して「病の原因」ではない。治すべきは、絶対に性格ではなかった。この患者さまにおいて治すべきは、あくまで体。このような性格を、スムーズに体現できる体へと導くことである。

■症例:変形性膝関節症(膝の痛み)

膝の痛みを抱える患者さまからのご相談である。痛みが発症したのが約2か月前。ライフワークにしているハイキングの最中、左膝に違和感を感じ、そこから徐々に痛みが強くなってきた。全身の体格、腫れの程度。これらの状態から鑑みると、この膝は比較的治しやすいと感じた。

■症例:便秘・顔のほてり

昨晩、排便しようとトイレに座り試みるも、いくら息んでもまったく出ない。まるで大きなカチコチの石が、肛門を塞いでいるようだった。お腹が張って苦しい。患者さまはそれを、「狂いそうになる便秘」だと表現された。漢方には、この症候に用いる名方がある。私は、『傷寒論(しょうかんろん)』の中に収載されている処方の適応を想起していた。

■症例:小児喘息(咳喘息)

2週間前から咳が止まらない。風邪をひくと咳をこじらせるようになった。ただし熱は無く、夜になるとゼロゼロと咽を鳴らして咳が止まらないのだという。診断は「咳喘息」。最初に出した薬は4日分だった。4日後、ぐたっとした気力の無さが消え、元気が出てきた。そして食欲も増えて、咳の発作が無くなっていた。

■症例:胃痛・胃もたれ

「胃が調子悪くて・・・」漢方にて不妊治療に成功した奥さまが、その旦那さまをつれてご来局された。三日前から、ずっと胃が痛むのだという。私は7日分の漢方薬を出した。求めたのは即効性だった。煎じるときの一工夫も伝えておいた。あとは漢方薬がどう効いてくれるのか、祈る気持ちで次の連絡をお待ちした。

■症例:起立性調節障害(OD)

成長期特有の華奢な体つき。薄っすらと粉を吹くような皮膚表面の乾燥。詳しく伺ったお体の状態は、望診(ぼうしん:見て把握すること)からおおよそ想定していた状態と、ほぼ重なる情報だった。身体を作り出す材料が枯渇している。今回の場合、それが体調不良の原因である。ならば身体の「陰陽」を観る。

■症例:メニエール病

メニエール病は内耳に溜まった水が原因である。したがってイソバイドで水を抜けば、確かにめまいの発作はおさまってくれる。しかし患者さまには、めまい以外にも無視のできない所見が備わっていた。夜間に手足が火照り、口の中が乾燥する。肢体が細く、皮膚が乾燥している。明らかに水(潤い)の不足である。

■症例:冷え症(冷え性)・不妊症

通常冷え性治療は、その程度によっては薬を必要としない時もある。しかし、そうかどうかは東洋医学的に見極めることが必要になってくる。患者さまがご来局されたのは、赤ちゃんを授かるためには、自分の冷えを放っておいてはいけないのではないか。そういう危機感の中で、医療知識に頼らず孤独に決断したからだった。

■症例:自律神経失調症

62歳、男性。五・六年前から血圧が高くなり、そこから急激なのぼせや火照りが顔面を襲うようになった。のぼせや火照り以外にも、動悸や耳鳴り・不眠。不定の陽火。漢方にはそんなカラダの極端な緊張状態を緩和させる薬がある。約五か月の服用で自信を取り戻した患者さまは、症状の消失とともに治療を完了した。