参考症例

■症例:メニエール病

70歳、女性。メニエール病。病院では水をたくさん飲みなさい、と指導され、患者さまは、とにかく水を飲んだ。そして、めまいは逆に悪化した。水を巡らす力の弱り。まずはその力をつけないと、いくら飲んでも巡ることができない状態である。私は、水の滞りを解除する薬を出した。そして同時に、水分摂取の量を減らすよう、説明した。3日後、今までにないほど、多量のお小水がでる。そしてその後、めまい発作の頻度が明らかに減っていった。

■症例:頭痛

40代前半の女性。主訴は疲労感と頭痛。これら一つ一つの症状は、お体の状態を知る上で大切な情報である。しかし様々な症状に気を取られると、体の声は聞こえなくなる。考えるべきことは、今患者さまの体がいったい何を欲しているのか。私は漢方の胃薬をお出しした。そして3日後、あきらかな熟睡感を感じる。同時に目覚めた時の胃もたれが消え、上半身のほてりを感じなくなった。その後、頭痛は急速に終息していった。

症例報告10回目を迎えて

漢方治療というものが、実際にどのようなものなのか、 治療者からの視点で紹介する症例シリーズも今回で10回目を迎えました。...

■症例:ニキビ(尋常性ざ瘡)

25歳、女性。漢方治療は皮膚の病であったとしても、体の状態を確認させてもらう必要がある。際立っていたのは手足の冷えと月経痛、そして胃の弱さ。ニキビを治そうとする力自体が弱っているタイプである。適応処方は明確だった。しかし、ニキビを撲滅していくとなるとそれだけでは絶対に不十分である。生活の悪化要因をどのように取り除いていけるのか。それが的確な処方決定と同等のウェイトで、必ず大切になってくる。

■症例:産後の不調・むずむず足

内容とは裏腹に、元気いっぱいで症状を教えてくれる患者さま。お体の様子を東洋医学的に把握しようとしていた私には、そのご様子から、ある病態が着想できた。頑張りすぎだよ、そろそろしっかり休もう、患者さまのお体に必要なのは、そういうシグナルだったのである。私は身体の興奮を解除する薬方を出した。先ず感じられたのは、お小水量の改善と、熟睡感。2か月後には足の冷えと浮腫みが取れるのと同時に、むずむず足は消失していた。

■症例:片頭痛

50歳代の女性。この方は病院で「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)エキス顆粒剤(粉薬)」を出され、服用していた。 片頭痛は良くならないが慢性頭痛はそれで取れたのだという。詳しくお体の状態をうかがった。それほど迷うことなく回答が出る。適応処方は、間違いなく「呉茱萸湯」である。つまり、すでに病院では回答を導き出していた。しかし片頭痛には効果がなかった。なぜか?その答えは明白。エキス顆粒剤では薬力が不足していたからである。

■症例:気管支喘息

71歳、男性。お話を伺った結果、恐らくこの方は、単純な気管支喘息を患っているわけではない。背景に軽い心臓性喘息(左心不全による肺のうっ血)を伴っている可能性がある、と考えた。定期的に心臓の検査はしていて、特に問題はないという。しかし私は、それでも心臓の不調を否定しきれなかった。その判断の結果は、良い方向に転んでくれた。順調に呼吸が楽になっていった。そして3か月後には、7割がた改善している状態になった。

■症例:帯状疱疹後神経痛

70代、女性。帯状疱疹を発症したのは、忙しい年始を過ぎたころの1月後半。疲れとともに発生した発疹は、1週間ほどで治まってきた。しかし痛みが残ってしまった。誇張せず控えめに語られてはいるが、痛みの程度は強いものと推測できた。この場合、まずしなければいけないのは、虚・実の判定である。それを色々な角度から診ていく。一般の方から見たら荒唐無稽なものに見える情報も、帯状疱疹後神経痛を改善する上で、重要な情報である。

■症例:酒さ様皮膚炎・ほてり

50代女性。酒さ様皮膚炎。強い顔面部のほてりが、ステロイドでも、プロトピックでも、ツムラの漢方薬でも、治る気配をまったく見せない。私は、これ以上皮膚の治療に縛られていても改善しないと断言した。皮膚を含め、からだ全体の症状がそれを示唆していたからである。まず緊張を取る。そして、そのために内蔵を温める。たとえ時間がかかったとしても、それが最も着実に皮膚を改善していく手段だと説明した。

■症例:通年性鼻炎

15歳、男子。会って話を聞き、この男子の鼻炎は、単に鼻だけの問題ではないことが確信できた。間違いなく、食事、である。この子は普段から食欲にムラがあった。そして発熱とともに鼻炎し体調が悪くなる際、必ず食欲が下がり、しかもひどく体がだるくなった。これは胃腸の弱りによる、材料の供給不足である。私は断じてお腹に力をつける薬を出した。飲んで5日で鼻水は止まった。そして14日後には発熱・頭痛・咽痛もおさまった。