信玄公祭りと浮かれた心

2023年10月27日

漢方坂本コラム

コロナの影響でずっとお休みしていた甲府・信玄公祭り。

明日、満を持して開催されます。

今回の信玄公役は、冨永愛さん。

「大奥」で演じられた女将軍吉宗、

あの凛とした美しさをそのまま、信玄公に昇華して練り歩いていただける。

楽しみで仕方がない。

ただ、ものすごく混むと思います。

だから心配です。

明日の土曜日、お越しの患者さまは、くれぐれも交通渋滞にお気をつけください。

当薬局は駅の近くとあって、信玄公がすぐそこで行軍します。

ただ目の前の道と、駐車場に続く道は、交通規制は敷かれません。

お車で来ることも可能です。

しかし近くの道は交通規制が敷かれていますので、添付した交通規制図を何卒ご参照ください。

第50回信玄公祭り交通規制図(PDF:1,800KB)

また電車を使ってお越しになられる患者さま。

多分、駅は激混みです。ご迷惑とご足労とをおかけいたします。

ともあれ、明日の信玄公祭り、非常に楽しみです。

私は患者さまとのご相談がありますので見に行きませんが、

きっと馬に乗る信玄公は、凛々しく、美しいでしょう。

祭の空気というのは良いものです。

なんだかソワソワします。自然と楽しくなります。

「期待」という感情は不思議なもので、

おそらく交感神経の高まりと伴に、良くも悪くも心と体を浮かせるのだと思います。

実はこのソワソワという感情、

東洋医学で古くから着目されてきた人体のシグナルでもあります。

病を扱う医学ですから、ポジティブな期待からくるソワソワではありません。

ネガティブなソワソワ感。不安とともにくる、居ても立っても居られないというソワソワ感です。

古人は経験的に、この時にある生薬を使うことを編み出しました。

竜骨・牡蛎。

桂枝加竜骨牡蛎湯とか、柴胡加竜骨牡蠣湯で有名な竜骨牡蛎です。

不安からくる「落ち着かなさ」に、確かに効くことが多いのです。

しかし何故効くのかはまったく分からない。

竜骨は化石。牡蛎はかきの貝殻ですから、

成分を解析しても、何故効くのか全く分かりません。

では、なぜ古人は竜骨牡蛎を使うことに気が付いたのでしょうか。

多分、

浮き上がる感覚を、石と貝(鉱物)の重さで、落ち着けようとしたのだと思います。

不安な時、焦った時、

人は、落ちて、地に着くことが肝要です。

上に向かって跳ねる心身を落ち着かせる。

そして落ちつくためには「重さ」が必要です。

日々、重さを感じていますか?

人は重いものです。腕だけでも女性なら片腕3㎏はありますから。

人には誰もが持つエネルギーがある。質量。地球の重力に引っ張られる力です。

重力は偉大です。この力のために人は生まれ、生き、活動することが出来ています。

そして人体で一番重い部分はどこでしょうか。

私はそこがしっかりと重い、充実しているというのが、人体の正常活動にとても大切なことだと思っています。

そう考えると、漢方のさまざまな解釈に辻褄がつくからです。

人体と重力。

私は、漢方は突き詰めれば、物理学になるのではないかと感じる時があります。

焦った時、不安になった時、

是非、体にかかる重力を感じてみてください。

力を抜いて、地面に引っ張られてみる。

それで不安が消えるわけではありませんが、ちょっとだけ一息、つけるのではないでしょうか。

重さを感じること。重さを感じるために必要なこと。

地球上にいる限り、人は重力と時間から逃れることはできません。

だからこそ敢えて、それに抗おうとしない。

人はどうしようもない力の中で、

それでも浮いたり、沈んだり、考えたり、楽しい時間を過ごしたりして、

ただ素直に、生きているんだと思います。

素直に生きる方が、良いと思います。



【この記事の著者】店主:坂本壮一郎のプロフィールはこちら