店主の日常・あれこれ

自分の体を知りたい

漢方治療において、最も治療の難しい人間は「自分」です。漢方家は大抵、自分で漢方薬を服用していますが、人のことは分かっても、自分のことは分かりにくいというのは漢方家のあるあるです。自分への客観的視点を持つことを、かなりシビアにやらなければ、「自分」とはいったいどんな人間なのかを、東洋医学的に把握することが出来ません。

休日の朝

食事・運動・睡眠の養生を患者さまにお願いし、みなさん実際にこれを変えようと努力してくれています。本当に凄いことだなと尊敬します。簡単なことではありません。一日の限られた時間の中で、努力を積み重ねることの難しさを今自分自身がしみじみと実感しています。

悟りの実験

新しい知識を入れる一方で、本当に大切な知識を見失うことがあります。患者さまから多くの情報を得れば得るほど、情報の波にのまれてしまうことがあります。本当に大切な「当たり前のこと」を、患者さまと共にで見つけていくことが、上手な漢方治療を導く最大のコツだと、私は感じます。

花火散るが如く

誰にでも『傷寒論』は読める。しかし『傷寒論』を完全に読み解いた人は、今までの歴史上、一人もいない。なぜ少陰病に、大承気湯が書かれているのか。例えばなぜ陽明病に、麻黄湯が書かれているのか。『傷寒論』の骨格、六経病とは一体何なのか。『傷寒論』の著者、張仲景(ちょうちゅうけい)。燃え尽きる命を、多く目にしてきた聖医。

新年のご挨拶

有限の資源を扱う漢方治療では、患者さまにお薬をお渡しするまでに、たくさんの方々のお力添えがどうしても必要になります。良質な生薬を作り、育て、流通させ、それらを安定させる努力。農家の方々やメーカーの方々の尽力こそが、日本の東洋医学を支えています。そのおかげで、私たち臨床家や患者さまたちが漢方の恩恵を受けられるのです。

2022・甲府より感謝を込めて

自分にこそふさわしい養生、情報に流されない知恵を実感する。そういう価値が、もし体調を崩したからこそ得られるのだとしたら、今、続けて頂いている努力は、きっと価値あるものだと私は思うのです。人と病。病と治療。漢方の道は深く、険しい。その中でも一歩ずつ、治療のコツのようなものが見えてきたような気がします。

そこのけそこのけお馬が通る

東洋医学は生命全体を捉えようとした医学です。聖典『黄帝内経(こうていだいけい)』では、人が病を得るのは、地球の規律に同調していないからだと説いています。自然に生かされている。そういう前提が、東洋医学にはあります。だから、人を治すにも自然を使います。すなわち生薬です。また自然を知るように促します。すなわち季節です。

漢方処方の本音

最近、漢方薬のCMがほんと多いなと思います。「ナイシトール」は防風通聖散、「ラックル顆粒」は牛車腎気丸です。漢方薬には市販薬に向くものと、そうでないものがあります。その辺りをちゃんと見極めて市販し、さらに要点を説明すること。それが出来れば、漢方薬は効かないと、言われることはないのではないかなと思うのです。

ライフスタイルと漢方

ここ近年、ライフスタイルの中に「漢方」を取り入れる方が、増えてきているように感じます。お化粧品や整髪料の中にも、生薬配合というものはたくさん見受けられます。しかし、それらを単に利用することと、ライフスタイルに漢方を取り入れることとは、違うもののように、私は感じます。漢方には、もっと人の生活を豊かにする可能性がある。

霜月に想う

風邪がちらほらと流行り出しています。うがい・手洗いを含めた風邪の養生を、この時期ぜひとも徹底していきましょう。私達は、天候や外気、気圧や重力といった、巨大な虚空に包まれて生きています。そしてみんなが同じようにそれを感じ、それに支配されて生きている。私たちはみんな、地球とつながっています。