以前、漢方の本の話をちょこっとした時に、
私のお勧めの本はありませんか?というご質問を頂いたことがあったので、
今回はそれを少し紹介してみようかなと。
この本、面白いですよという話。
ばっちり解説してしまうと、
逆に手が遠のいてしまうと思うので、
すごくゆる~く紹介してみたい。
そんな紹介の仕方があってもいいのかなと。
シリーズ化するかどうかは分からないけど、
まずは第一回目。
私の大好きな漢方家、「荒木性次(あらきしょうじ)」先生の「新古方藥嚢(しんこほうやくのう)」をご紹介いたします。
荒木性次先生は、昭和を代表する漢方家で私と同じ薬剤師。
湯本求真の弟子、その四羽ガラスの一人としても有名です。
四羽ガラスの一人はかの有名な「大塚敬節先生」。
大塚先生曰く、「僕のやっていることはポピュラーミュージックだけど、彼のやっていることはクラシックだよね。」と。
そう言わしめたという逸話があります。誰もが認める真正の漢方家です。
湯本の弟子の中でも、やや独特な漢方理論を構築された方なんじゃないかな。
書いてあることが、ちょっと天才です。
良い意味で、理解が難しい。何度読んでも、天才だなこの人は、と思います。
荒木先生はその名を「朴庵(ぼくあん)」と号し、(※終戦後には「卜菴」と改められた)
そして朴庵塾を作られた。今でも残る(?)有名な漢方の私塾です。
この「新古方藥嚢(しんこほうやくのう)」、
まずは、文章の前に見て頂きたいものがある。
本の中にあるカラー写真、
この写真を、まずは見て欲しい。
確か、私がまだ学生の頃だったと思う。
父の「新古方藥嚢(しんこほうやくのう)」をパラパラとめくっていた時に、
このカラー写真が目に飛び込んできた。
朴庵先生のお姿です。
ドドンと載っています。一面です。
衝撃を受けました。
うわー・・・これが漢方家かぁ・・・と。
有無を言わさぬ説得力がありました。
和装に正座、一筋通った姿勢。
真一文字に口を結び、深い目で正面を見据えておられる。
滲み出る「人生をかけてます」感。
漢方家とは何たるかを、この一枚の写真から教えられた気がします。
それ以来、こうやって自然と漢方の道を歩んできたわけですが、
多分、あの時のイメージが私をこの世界に導いたのかも知れません。
そして、未だにこの書を読みますが、
やはり熟読の甲斐がある。
人が人生をかけると、どのような文書を書くのか。
まだお読みでない方は是非。