■生薬ラテン名
PROCESSI ACONITI RADIX
■基原
ハナトリカブト Aconitum carmichaeli Debeaux 又はオクトリカブト Aconitum japonicum Thunberg(Ranunculaceae)の塊根を加工したもの
■配合処方例
桂枝加苓朮附湯
麻黄附子細辛湯
真武湯
八味地黄丸
など
※生薬の解説は本やネットにいくらでも載っています。基本は大変重要ですので、基礎的な内容を知りたい方はぜひそちらを参照してください。ここではあくまで私の経験からくる「想像・想定」をお話しします。生薬のことを今一歩深く知りたいという方にとってのご参考になれば幸いです。
附子(ぶし)
大熱薬に分類される附子。
体を強く温め、生命力を鼓舞するための最終手段。
その薬能は冷えをとり、新陳代謝を高め、痛みを止めると言われています。
普通、附子剤と聞くと、それに適応する病態は、
非常に新陳代謝の衰えた、虚弱な状態をイメージします。
例えば、寝たきりの老人や、闘病によってかなり衰弱したような方。
基本はそれでも良い。しかし、附子の薬能をよくよく紐解くと、それだけでは論じられない奥深さがあるように思います。
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例えば筋骨隆々で、普段は至極活発な若い方であったとしても、
一時的に附子剤適応の場に陥ることがあります。
また同じように元気な方であったとしても、附子を使わなければ取れない痛みもあります。
またアレルギー性鼻炎に用いる場合、体力の有無に関係なく効く時があるし、
寒冷蕁麻疹においても、新陳代謝の衰え云々抜きに使用して、効く時があります。
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古人は今まで、附子の薬能をさまざまな言葉で表現してきました。
曰く、回陽。曰く、益火。
また水を逐うと言ってみたり、止痛と言ってみたり。
どれも附子の一側面は言っています。
しかし、その元を表しているとは、どうしても言い難いという印象があります。
附子適応の病態は、しばしば「陰証」と表現されてきました。
陰証。
これはいったいどうゆう状態なのでしょうか。
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想うに、
附子は生命の根本的な活動を鼓舞するというよりも、
その動きの「きっかけ」をつくっているように感じられます。
極端に生命力が衰えれば、その動きのきっかけを作り、
元気な方でも一時的に動かなくなれば、その動きのきっかけを作る。
例えば人は、日中と夜間とでは当然ながら活動を変えます。
日中は動きが良い。きっかけなど無くても、スッと体が動きます。
しかし寝ていた時、起きたあとに直ぐ体を動かすことは難しいものです。
どんなに活発な子であったとしても、日中に比べれば、
深く寝た後は少しばかり、体を動かすまでに時間がかるはずです。
これは、元気とか虚弱だとか、そういうこととは関係がありません。
基本的に、誰しもがそうです。活動を沈静化させる瞬間は、誰にでもあります。
附子は、その沈静化した、動くまでに何らかのきかっけを必要とする状況において、
その動きの「きっかけ」を作っているように感じられるのです。
沈静から、活動へ。沈静の原因ではなく、あくまでその状況に効く。
そして体に響くと同時に、他の生薬の効き目を促すきっかけを作っているようにも感じます。
つまり附子は、他薬が働くきっかけも作る。
時に「走らせる、通らせる」と表現される附子の薬能は、そんな所から来ているのではないでしょうか。
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大塚敬節先生は、附子の薬能をこう表現しました。
揺り動かすと。
言い得手妙だと思います。
一点だけご注意を。
朝の寝起きが悪いからといって、起立性調節障害のような患者さまに附子剤を乱用することはおやめください。
そういう単純なことではありません。
悪化することがままあります。
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