今日のコラムで述べることは、
本来であればしっかりとまとめた形の文章で紹介したいと思っていた事なのです。
しかし、昨今の流れを鑑みて、
早急に伝えたいなと、思いました。
故に、簡略化された内容ではありますが少しだけ、書きます。
漢方(日本における生薬を使用した東洋医学)の諸問題について。
その中でも特に重要だと思われること。
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ある病気があると、それを治す薬を求める。
この考え方は至極真当です。誰もが想起する、当たり前のことだと思います。
例えば西洋医学は、この考え方で論が進められている。
ある病があれば、その病を解析し、その病を改善するポイントを見極め、そこに対応し得る薬を開発する。
特定の病気に対して、その特効薬を求めるという姿勢です。
この真当な姿勢のおかげで、歴史的に見て医療は飛躍的な発展を遂げました。
そのことには何の疑いもなく、
したがってこの理論は正しいものです。
しかし、ただ一点、
「漢方は違う」という点を除いて。
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漢方に特効薬はありません。
ある病気に対して、それを改善し得る特効薬というものは無いのです。
例えば、ある病気の方が10人いたら、
その病気を改善し得る漢方薬は10個、必要になる。
極端に言うと、それが漢方です。
それが漢方治療の特徴であり、治し方なのです。
ある病があれば、その病の特徴を解析する、これは漢方でも当然行います。
しかし同時に、そのひと個人を観ます。
個人の体質的状況を観て、病と個人との因果関係を探ります。
人はそもそも、病に対して何らかの働きかけを行っています。
そしてその働きかけは、各個人によって全く異なります。
したがってこの関係性を見極めなければ、漢方治療は行なえません。
いや正確に言えば、
行っても、決して改善へとは向かわないのです。
つまり漢方は、病と個人との因果関係に対して、薬を適応させます。
治すべきものは病気ではなく、
病と個人との関係性だという解釈に基づいているのです。
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ある病に対して、それを改善し得る薬を求める。
なるべく誰にでも適応する形で。
なるべく一律的に有効である形で。
その考え方自体に問題はありません。しかし、漢方治療は違います。
今まで日本において行われている漢方治療を鑑みると、
残念ながら、この大前提に即して漢方治療は行われてはいません。
インフルエンザに麻黄湯が効く。
そういう論文が出ると、誰でも彼でも麻黄湯を出すことが正確になってしまう。
それが今の漢方です。
小柴胡湯の乱用による間質性肺炎。
青黛(せいたい)の乱用による肺動脈高血圧症。
間違えた使用方法により発生した、これらの事件。
昭和からずっと続く、漢方治療の問題点なのです。
・
新しい病が発生し、
それに対して未だ西洋医学的治療薬がない、とういう状況が起こったとするならば、
その時は漢方治療にも多くの期待が寄せられるはず。
漢方薬で、どうにか対応することができないのかと。
そしてその状況でもし、
この問題点が解決されないまま漢方薬が使用されたとしたら。
新しい病に対して、一律的に同じ漢方薬が使用されるという状況になったら。
私は怖いです。
また同じ問題が、繰り返されるのではないか。
・
このような状況の時に、求められるもの。
それは、新しい病に対応できる漢方薬ではありません。
一人でも多くの、東洋医学的な見極めを行える人材です。
そしてそういう人材が、感染症治療の最前線に用意されていること。
そしてこれは、本来であれば、
このような状況になる前に、求められているべきことでした。
感染者が急増している新型コロナウイルス(COVID-19)感染症。
どうか正確な情報の発信が、
どうか患者さまにとって不利益にならない医療が、
行われることを願います。
切に、切に願います。